-Kathmandu to Kuala Lumpur-
本日、ついにネパールの地を去る。
まだ実感なんてなくて、本当に飛行機に乗れるかも100%の保証なんてないけれど。
とりあえず、ホテルで朝食を食べて、そして最後になるであろうチャイを飲む。
▼前回のお話し▼
さようならポカラ!チャータータクシーで首都カトマンズへ移動するよ
もくじ
カトマンズ空港(トリブバン国際空港)、まさかの入場拒否
宿は、空港の近くにあるSpot on 443 Mountain Wall Hotel。
宿を出て道路に出れば、空港はすぐ目の前。
だけど、ここからの入場はできないみたい。
空港を右手に見ながら少し進んだところが、一般人用のゲート。
約5ヶ月と数週間ぶりにオープンしたカトマンズ空港(トリブバン国際空港)は、コロナの影響で厳戒態勢だった。
防護服に身を包んだ人たちがいる。
え!?
世間って、そんな感じなの!?
ポカラがいかに平和な町だったのか、、、今更実感。
そして、入場をしようと入り口でパスポートを提示。
すると、、、
係員 「PCR検査の書類は?」
わたし「は????」
係員 「PCR検査の書類!」
(なんですとっ!????)
わたし「それは必要ないと、マレーシア航空の職員に事前に確認済です!」
係員 「PCR検査を受けていない人は、入場できません」
ガラガラぴしゃんっ!
っと、激しく音を立ててシャッターを下ろされてしまった様な。
そんな感じで、交渉の余地は全くありません!という雰囲気でシャットアウトされてしまった。
こんなのって、初めてかも。
今までも、搭乗拒否にはお約束の様に毎回遭ってきた。
だけど話をする余地はあったし、そして話した結果、いつも何だかんだ何とかなってきた。
今回は、そんな雰囲気ではない。
ダメなものはダメ。
というか、航空会社による搭乗拒否ですらない。
空港の建物内にすら入れてもらえない、入場拒否だ。
私の中では、完全に試合終了のゴングが鳴ったかの様に感じた。
だけどワタルさんが、入り口の係員に再度話しかける。
「マレーシア航空には、PCR検査は不要と事前に確認済です。マレーシア航空の職員を呼んでください。」
さすがワタルさん…私は感情的に食って掛かってしまったけれど、冷静かつ的確な対応を取っていらっしゃる。。
だってさ、本当に無理そうな雰囲気だったんだもん。
これは焦るよねっ!?
そしてワタルさんの的確な判断のおかげで、中からマレーシア航空の職員が出てきて「交渉の余地」を獲得。
ここまで来れば、バックパッカーならば切り抜けられる(はず)。
そのマレーシア航空の職員は私たちの話を聞いてくれて、そして「確認するので30分待ってほしい」と言い残し、どこかに電話をかけながら去っていった。
すると、同じく入場を拒否されたネパール人らしき初老の男性が、私たちの傍に来た。
そして「日本人ですか?」と声をかけられる。
日本語が流暢なネパール人かな…?
この年頃のネパール人に多い、日焼けした顔に深い皺、そして彼等がよくかぶっている宗教的な意味を持つ特徴的な帽子。
身体は着古した麻の布に包まれている。
だけど、彼は日本人だった。
麻の布は、手作りの麻の着物で、よく見ると足元には下駄を履いている。
彼はロックダウン中はカトマンズに滞在していて、(カトマンズは外出は制限されているので、)食事も全て宿で済ませていたらしい。
そして、宿代や食事代の数十万円をツケにしているというツワモノだ。
ネパール人も収入には困っているであろう状況で、ツケが通用するとは驚きだ。
その宿は、大丈夫なのだろうか??
30分待てと言われて、たぶん30分以上経った頃、さきほどのネパール航空の職員が戻って来た。
そして、中に入っていいよと。
とりあえず、最初の難関はクリアか。
マレーシア航空のカウンターで、搭乗拒否
PCR検査が必要かどうかは、空港の規定ではなく航空会社それぞれの規定によるらしい。
だったら何で、入り口で止められたんだろう…。
何にせよ、マレーシア航空は今のところは事前のPCR検査は不要の様だ。
あくまでも、搭乗の際に事前に検査を受けなくてもよいという事。
マレーシアに入国する場合は、現地マレーシアの空港にてPCR検査を受ける必要がある。
24時間以内の、入国を伴わないトランジット(乗り継ぎ)の場合は、現地での検査も不要。
(2020年9月時点)
マレーシア航空のカウンターに並ぶ。
国際線の運航がが再開されて9日目のネパール。
カウンターの列は、そこそこに混んでいる。
数十分ほど並んで、私の前に並んでいたネパール人風日本人男性の番が来た。
何やら揉めている。
カウンターの女性が、目配せで私を呼ぶ。
「あなたは英語が話せますか?」
「す…少しだけ。。」
カウンターの女性は、PCR検査の証明書が必要だと私に伝える。
またか。
ここでも、「事前にマレーシア航空のオフィスに連絡して不要と確認済だ」と説明する。
そこで、そういえばメールでも問い合わせていたのだという事を思い出し、英語で返信が来ているメール画面を提示。
そしてその直後、カウンターの後ろを先ほど対応してくれた男性が通りかかる。
「あ!あの彼にPCR検査は不要と確認済です!」
そして、あっさりと搭乗券が発券される。
メール画面で「事前のPCR検査不要」の正式な回答を見せたからなのか、恐らく偉い立場であろう、このネパール人男性に確認済と伝えたからなのか、とにかく問題なく搭乗券を受け取る事ができた。
ここまで来れば、もう出国に問題はないだろう。
本来、このあと受ける「出国審査」が一番厳しそうなイメージだけれど、実際は「航空会社のカウンター」が一番厳しい。
空路出国での出国審査は、大抵は事務的にスタンプを押されて終わりだ。
それにしても、「事前のPCR検査は不要」という情報は、職員たちに周知されていないのだろうか。
商用便が再開されたばかりだから、混乱しているのか?
今まで、他の日本人がマレーシア航空に搭乗したケースはなかったのだろうか。
国際線の運航再開を待っていた日本人って、もしかして私たちだけなのかな…。
航空券を購入できずにネパール残留を決めた知人が、9月末にマレーシア航空で帰国。
やはり、空港で揉めたらしい。
彼は、その場で日本大使館に連絡を取って何とかなったのだとか。
空港で知らない人から荷物を預かる初のシチュエーション
何とか搭乗券を入手した私たち。
だけど一緒にいたネパール人風日本人男性が、職員に呼び止められる。
彼が機内に持ち込もうとしている手荷物は、なんと合計4つもあった。
機内に持ち込んでいいのは、1人2つまで。
私とワタルさんは、自分の荷物をそれぞれ1つづつ持っている。
空港職員が、「あなたたちは知り合いですか?あなたたちが彼の荷物を1つづつ代わりに持てば問題ありません」
私は、ワタルさんが返事をしようとするのを遮り、間髪入れずに答える。
「いいえ!ただここ(空港)で出会っただけです!」
ちょっと、冷たかったかな…。
だけど、しっかりしている様で何故か油断してトラブルにも遭いやすいワタルさん。
私が先に断らないと、彼を助けてあげようなんていう優しさを発揮しかねない。
(…と思ったのは取り越し苦労で、流石にそんなつもりはなかったと後で知った)
というのも、「空港で知らない人から荷物を預かってはいけない」というのは、旅行者であれば誰もが認知しているはずの事。
預かった荷物に、違法なものが混ざっていて、知らない間に運び屋になってしまう例があるのだ。
そして例えばそれが見つかった場合、「知らなかった」では済まされない。
到着した国に入国する際、「他人から預かった荷物はないですか?」という項目に「いいえ」とチェックしたカードを税関に提出する必要があるからだ。
だけど、実際にそんな「他人から荷物を預かる」だなんていうシチュエーションに遭遇する事なんてないだろうと、どこか他人事の様に思っていたけれど。
あるんだね…そして、これは優しさからうっかり預かってしまっても仕方がないと思う。
いや、彼が実際に違法なものを運ぼうとしているとは限らないし、そんな可能性は低いとは思うけれど。
だけど「麻」を扱う人だし(←偏見!)…ネパールでは大麻の流通度も高いし、故意ではなくてもウッカリ荷物に混ざっている可能性だってある。
荷物を代わりに持ってあげることはできないので、彼は4つの荷物を2つにまとめなければならない。
彼が持っている荷物は、4つとも既にパンパンの状態。
ワタルさんが、「これにまとまりませんか?」と、大きめの袋をわたす。
彼は、「まとまらん!」と試しもせずに拒否。
荷物を持ってほしいと何度か言われるのだけれど、「それはちょっと難しいですね…」と、日本人らしくやんわりと拒否。
私は、「追加料金を払えば預け手荷物にできるかもしれませんよ?」と提案するものの、納得がいかない様子で、とりあえず出国審査に向かう事になった。
出国審査|ビザの有効期限は切れているよ
PCR検査云々の件で、予定よりも随分と時間がかかってしまったから、急がなければならない。
私はネパール人風日本人男性より先に出国審査を受けられるよう、さりげなく彼より前の列に並ぶ。
彼は、結局4つの荷物を持ったまま出国審査を受ける事にしたらしい。
揉める可能性が大きい。
そして、彼が私たちより先に並んで揉めた場合…助けざるを得ないよね。
込み入ったシチュエーションでは英語のコミュニケーションが取れないみたいで、私たちは先程から通訳じみた事をしているのだ。
ゴメンナサイ…もう搭乗開始まで20~30分くらいしかないのです。
これから出国審査を受けて手荷物検査を受けなければいけないから、トラブルに巻き込まれるわけにはいかないのです。。
自分本位で身勝手な私は、この不憫な日本人男性を見捨ててさっさと出国審査に向かう。
ビザの有効期限がとっくの5ヶ月前に切れているから、もしかしたら揉める可能性があるかなと思ったけれど、問題なく出国スタンプが押された。
それにしても、「マスクをしたまま出国審査」だなんて、不思議な感覚。
普通は、顔がよく見える様に「マスクは外す」のが必須なのに。
少し前までの規律や常識なんて、一瞬でひっくり返るのだ。
最後のチェック、荷物検査
出国審査を無事に終えて、次は荷物検査。
国際線は液体物の持ち込みが禁止なので、検査前に鞄から出して捨てようとしたら、「持っていっていいよ~」と言われる。
そうなの??笑
荷物検査場は、特に混んでいるという事もなく、スムーズに通過。
うん、間に合ってよかった。
機内へ案内されるまでの間、先程見捨ててきてしまったネパール人風日本人男性が来ないか気にして見ていたものの、彼はギリギリまで来なかった。
どうしたんだろう。
出国審査で、やはりトラブルになったのだろうか。
だとしても、荷物を2つにまとめるか、追加料金を払って受託手荷物に追加すればいいだけだと思うんだけど。
そんな理由で、「乗らない」という選択肢を選ぶものかな??
ホテル代をツケにするほどお金がないという男性。
この飛行機に乗らなければ、追加のホテル代、飲食代がかかるし、あと数日以内に出国しなければ延滞していた数ヶ月分のビザ代が通常通り請求される事になる。
いやいや、まだこれから滑り込みで搭乗してくる可能性もあるよね。
ロックダウンの途中から、「国際線の運航再開から14日以内に出国すればビザ代免除」という規定になった。(私の場合だと、延滞分は50,000円弱くらい)
この規定になる前にチャーター便などで出国した人は、空港で延長料金を支払っていた。(かわいそう)
ついに、ネパールの大地を飛び立つ
機内への搭乗は、後ろと前の両方から行われた。
私たちは、「咳は前に飛ぶから、後ろに人がいない方がコロナ的に安全じゃないだろうか」という素人判断で、1番後ろの席を予約していた。
(だけどこの席、リクライニングを倒せないから、快適度的には完全に失敗。。)
あの男性は後ろからは乗り込んで来なかったけれど、もしかしたらギリギリで前から乗ったかもしれない。
機内の乗車率は、50~60%くらいと言ったところだろうか。
3人席のうち、0~2席しか使用されていない。
このフライト、私の知り合いは「満席」という事で予約できなかった。
つまり、意図的にこの人数で締め切っているという事だよね。
コロナ的に、全席を使用するのは避けているのだろうか。
出発予定時刻は13:05だったのだけれど、実際には14:00に出発となる。
まさか、あの男性が原因ではないよね…?
飛行機が、ゆっくりと動き出す。
あぁ、ようやくネパールの大地を離れる時が来た。
ネパールでの帰国難民生活、長かったな~。
長かったけれど、とても楽しかった。
昨日まではいつもの「日常」の中にいたというのに、私はいま久しぶりに「非日常」の中にいる。
さみしいな。
うん、「先が見えない」状態は不安でいっぱいだったけれど、やはり「終わりが見える」状態はさみしい。
なんて我儘なんだろうね。
飛行機が、離陸する。
ついに、ネパールの大地を飛び立った。
6ヵ月間過ごしたネパールの大地を、上から眺める。
カトマンズは、こんな感じだったんだね。
ポカラは、もちろんここからは見えない。
ネパール。
今後の人生で、また訪れる日は来るだろうか。
クアラルンプール国際空港での乗り継ぎ
すっかり夜になった頃、マレーシアの大地が見えて来た。
マレーシアの首都クアラルンプール、ネパールとは比べ物にならないくらいの大都会だ。
ついに、全く別の国に来てしまった。
だけどあの綺麗な光の下で、人々はコロナ禍で大変な思いをしているんだろうな。
そして、定刻の20:05より少し遅延した20:40。
マレーシアの大地に着陸。
私たちは、明日の朝にまたマレーシア航空に乗って成田へ向かう。
乗り継ぎって、どうなるんだろう。
以前インドからマレーシア経由で帰国したときは、乗り継ぎ用のゲートを通って荷物検査を受けた。
今回も同様だろうかとカウンターで尋ねたところ、出発時刻の3時間前にまたこの「乗り継ぎカウンター」に来ればよいと言われる。
今回の旅の始まりに、フィリピンからエジプトへ向かった時と同じシステムだ。
翌日この乗り継ぎカウンターを再度訪ねると、既に搭乗券を持っているので手続き不要と言われる。
乗り継ぎ先のフライトの搭乗券を持っていない場合のみ、手続きが必要みたい。
クアラルンプール国際空港で空港泊
クアラルンプール空港は、とても綺麗で先進的。
ひと気が少ないのは、コロナの影響なのか、それとも時間の問題なのか。
空港でも、皆マスクをしている。
そして、ネパールのポカラではほとんど感じる機会がなかった「ソーシャルディスタンス」が、至る所で意識されていることに違和感を感じる。
空港だから、厳格なのかな?
それともマレーシアの方針??
この後、日本でも同様にソーシャルディスタンスが意識されている事を知るのだけれど、この時はこれが不思議な光景に感じられたのだ。
このロンリープラネットの看板が、なんか好きだ。
そして、ついついアフリカに目が行ってしまう。
(ネパールじゃなくて…!??笑)
さて、次のフライトは明日の朝9:15。
それまで、どこかで眠る必要がある。
空港内にホテルがあるみたいなので、行ってみる。
サマ・サマ(sama sama)というホテル。
料金は、6時間で320リンギット。
12時間で600リンギット。
なにその、どこぞのホテルみたいな「時間制」は…笑
っていうか、リンギットっていくらだっけ!?
慌てて調べて、1リンギットはだいたい25円くらいという計算のし難いレートと判明。
つまり、6時間で約8,000円。
12時間で約15,000円。
う~ん、バックパッカー的目線だとお高いな。
だけど、バックパッカーの自覚がほぼ失われている状態&もうすぐ帰国なので節約精神も薄いという事で、あろうことか「検討」などという事をしてしまう。
カウンターで尋ねると、なんと満室だった。
検討の余地なし。
ここにはラウンジ席もあり、「シャワー+席利用」で58リンギット(約1,450円)。
ふかふかの席は無くて、完全に「座って少し休む」仕様だ。
1晩を過ごすのは厳しいな…。
という事で、人生初の「空港泊」に決める。
私は空港泊はもちろん、駅やバス停など、公共の場所での睡眠は未経験。
ツアーに参加して、砂漠などで「野宿」をした事なら何度かあるけど。
そういった場合を除き、なんだかんだ宿泊か車内泊だけで旅をしてきた。
という事で、この旅の最後の宿泊は「空港泊」。
ベンチに横になる。
意外と快適だ。
パーカーを来て、ダウンジャケットを羽織る。
少し寒いけれど、きっと大丈夫。
それにしても、長い1日だったな。
ネパールの空港で揉めた時は、どうなる事かと思ったけれど。
無事に出国できて良かった。
そして明日はついに、日本の大地を踏む事になる。
とりあえず…おやすみなさい。