旅は、もちろん「観光」だけが全てではない。
旅には「移動」も含まれる。
いやむしろ、「移動している時間」の方が長いのではないだろうか。
陸路旅を好む人にとっては特に、この「移動」も旅の醍醐味なのである。
そんな「移動メイン」とも言える私の旅で通過したルートの中で、特に印象深かったルートを5つご紹介。
もくじ
10ヵ国の旅のルート
私が訪ねた10ヵ国
エジプト・スーダン・エチオピア・ケニア・タンザニア・ザンビア・ボツワナ・ナミビア・南アフリカ共和国・レソト
アフリカ大陸縦断旅|3ヵ月間で10ヵ国を陸路で訪ねるルート(観光情報&滞在都市)
第5位|ゴンダールからアディスアベバ行きのVIPバス(エチオピア)
まさかの、前回の記事で散々悪口を言った「アフリカで最も嫌いな町ベスト1」(←そんなタイトルじゃない…笑)のゴンダールから出るVIPバスがランクイン。
アフリカ大陸縦断旅|3ヵ月間の旅で体験した「プチ・トラブル」ベスト5
このバスは、ゴンダールが嫌い過ぎて逃げる様に次の町アディスアベバへと向かう為に乗ったバス。
何故このバスへの乗車体験がランクインしたかと言うと、入国して僅か3日間の滞在で大嫌いになってしまったエチオピアで、親切な人に出会えたから。
まさに、「世界一うざい国エチオピア」での心のオアシス的な体験。
バスの集合時間は、深夜の3時。
真っ暗な中で、バスの集合場所がわからずに迷っていたら、親切な人がバス乗り場まで案内してくれた。
集合場所で、少し先に見える公園の入り口の階段に腰を掛けようと歩き出したところ、若者グループの1人が「どこへ行くの!?そっちは危ないから行ってはいけないよ!」と忠告してくれた。
バスを待っていると、1人の男性が「どこのバス会社?」と声をかけてくれて、私が乗るべきバスが来た時に教えてくれた。
そして先ほどの若者グループも同じバスだった様で、私がバックパックを預けるところから、席に座るまでをエスコートしてくれた。
バスに乗ったら、隣の席のおじいちゃんが、よくわからない「実」をくれた。
「美味しい!ありがとう!」とお礼を言ったら、食べ終わった頃にまたお替りをくれた。
ひと眠りして目覚めた頃に、またくれた。
乗務員も、度々車内を点検して、ゴミ回収などをしている。
(これはエチオピアの他のVIPバスでも同じなのだけれど、)乗務員が水やお菓子などを配ってくれる。
このバスに関わる過程で、1度も嫌な思いをしなかった。
エチオピア嫌いが、少し癒えた体験。
ゴンダールからアディスアベバへVIPバスでゆく|エチオピア嫌いが治りそう
第4位|サニ・パス(レソト~南アフリカ共和国)
ドランケンスバーグ山脈の崖の上にあるレソト側から、南アフリカ共和国に向かって下っていくルート。
車窓から見るドランケンスバーグ山脈は、崖の上から見た時とはまた違ったダイナミックさ。
レソトを出国してから南アフリカ共和国に至るまでは1時間30分もかかる。
道中は大変な悪路で大きく揺れ、そして歩いた方が早いような速さでゆっくりと進む。
途中で、何故か乗客のほとんどが車を降りて、歩いて下る事になったり。
壮大な絶景もさることながら、そんな悪路の移動も面白い。
【陸路国境越え】大絶景のドランケンスバーグ山脈!サニ・パスを越えて(レソト→南アフリカ)
第3位|カイロから西方砂漠のバフレイヤ・オアシスへ(エジプト)
エジプトの首都「カイロ」から、西方砂漠のオアシスの町「バフレイヤ・オアシス」への移動。
アフリカ旅が始まって初めての長距離移動という新鮮さも影響していると思うけれど、この移動が「旅情感」を掻き立てる素敵な移動だった。
ビルが立ち並ぶ雑多な大都会カイロを少し離れるだけで、とたんに何もない広大な荒野に出る。
都会だったのは、ほんの一部のエリアだったのだと、「井の中の蛙大海を知る」みたいな気持ちになる。(←たぶん使い方違う…笑)
休憩所で降りた時、地平線の向こう側まで歩いて行けそうな…そんな広大な大地に息を飲む。
そんな大地でも、途中で乗客がぽつりぽつりと降りていくのだ。
ここで生活をしている人たちもいる…地球って凄い。
大都会カイロから、砂漠の街バフレイヤ・オアシスへ|ようやく旅らしくなってきた
第2位|モヤレ国境~ナイロビへの移動(ケニア)
前回の記事では、「プチ・トラブルランキング」で第3位にランクインしていたモヤレ国境~ナイロビに至るルートと深夜のダウンタウン。
アフリカ大陸縦断旅|3ヵ月間の旅で体験した「プチ・トラブル」ベスト5
確かに「恐怖体験」ではあったのだけれど、同時に「素敵体験」でもあったのだ。
恐怖体験については前回綴ったので、今回は素敵体験について。
エチオピアで限界まで打ちのめされて疲弊しきっていた私がたどり着いた「モヤレ国境」。
ここで両替をしようと両替商を探していた時に、カフェでくつろいでいたケニア人の客が、両替商を紹介してくれた。
だけど、その両替商の言うレートは公式レートと比べると遥かに悪い。
その事を伝えると、そのカフェ客が私よりも熱心に交渉をしてくれたのだ。
交渉は決裂。
「問題ないさ、また次の両替商を呼んでいるから、座ってのんびり待ちなよ」
そして次の両替商も、レートは良くない。
どうやらこの国境ではこれが普通なのだと諦めて両替したところ、受け取った中にボロボロの紙幣が混ざっていた。
それを交換する交渉も、このカフェ客が手伝ってくれた。
ケニア入国後、わずか数十分後の出来事だった。
そして、ナイロビまでのバスに荷物を積んでもらう時、複数あるトランクの1つを指して「このトランクのこの場所に入れるからね!」と、わざわざ確認させてくれた。
深夜にナイロビに到着して、ケニアのお金を持っていない事に気づく。
どうしようかと思っていたら、青年が声をかけてくれた。
私が持っている米ドルとケニアの通貨シリングとを交換してくれて、更にタクシーより安全に移動できるようにとウーバーを呼んでくれた。
ウーバー運転手に行先を説明してくれて、そして料金交渉もしてくれた。
「僕は4ヵ月前にも、同じシチュエーションで日本人の男の子を助けたんだよ。こうするのが好きなんだ!」って。
ウーバーが無事にダウンタウンにある宿の前に到着した時。
タクシー運転手のスマートフォンに、青年から電話が入る。
「無事についた様だね、何の問題もなかったかい?」
ウーバーには、目的地までの移動をGPSで追跡する機能が付いている。
つまり、私が無事に到着するかを、青年はずっと見守ってくれていたのだ。
そして着いたのを確認して、すかさず状況確認の電話をくれた。
何ていい人なんだろう…無事に着いた旨と、お礼を述べる。
「気にしないで!いつか僕が日本に行ったら、その時は助けてね!」
危険と言われているモヤレ国境から、凶悪都市ナイロビへの移動。
深夜のナイロビ到着、そして更に危険なダウンタウンへの移動。
その事は恐ろしくもあったのだけれど、出会った人たちは皆親切で…むしろ「素敵な移動」だった。
エチオピアで限りなく0に近い所まで下がった私のメンタルHPは、この移動中だけで完全復活を果たした程なのだ。
【陸路国境越え】エチオピアからケニアへ|モヤレ国境を越えて、深夜のナイロビへ
第1位|エジプト~スーダンの国境越えバス
エジプトからスーダンへの国境越えバスだけれど、乗っていたのはほぼ「スーダン人」。
「観光資源はなにもないけれど、人が素晴らしい国」と評判の国スーダンの旅は、もうこのバスに乗った時点で始まっていた様な気がする。
スーダン人は穏やかでフレンドリー。
初対面でグイグイくる様なこともなく、かといって無関心でクールなこともなく。
とても丁度いい距離間で、心地のよいコミュニケーションを取ってくれる。
そんなスーダン人たちとのバス旅が、楽しくないはずがない。
スーダンへの入国の少し手前で船に乗るのだけれど、そこでたくさんのスーダン人が笑顔で話しかけて来た。
Welcome to Sudan !(スーダンへようこそ!)
こんなに歓迎してもらえるなんて…大げさではなく、本気で涙が出そうになった。
まだ入国すらしていない移動中の段階で、スーダンが大好きになった。
ある人が、これがスーダンのお金だよと、10スーダンポンドを見せてくれた。
このお金で1ℓの水が買えるよと、私にくれた。
返しても受け取ってくれないので、ありがたく頂くことにしたのだけど、使わずに「思い出」として日本に持ち帰る事にした。
船を降りて上陸したら、またもや「スーダンへようこそ♪」と歓迎を受ける。
スーダンの入国審査では、他の国境よりも長めの質疑応答を受ける。
審査官からの最後の質問。
「スーダンのいい写真をたくさん撮って、スーダンはいい所だったと皆に伝える事はできますか?」
勢いよく「はいっ!」と答えて無事に入国スタンプをもらった。
「スーダンはいい所だった」と皆に伝えているし、ブログにもたくさん書いてるからね!…と、伝えたいな。
国境で手続きを終えると、「呼びに行くからカフェで待っていていいよ」と言われる。
私の為に、わざわざ呼びに来てくれるの?忘れないでね??…でも優しい♡
カフェで待っていると、同じカフェにいた人にコーヒーをご馳走になる。
バスの車内では、隣の席の女性がよくわからない「実」をくれる。
食べ終わったら、また別の「実」をくれた。
この日の宿泊地「ワジハルファ」に着いた時、たくさんの人に声をかけられる。
普段なら相手にせずに自分で対処するのだけれど、「ただの親切心なんだろうな」と感じるので、素直にされるがままに着いて行く。
案内されたトゥクトゥクに何も疑わずに乗り込むと、「運賃は支払い済みだから、払わなくていいからね!」と。
この後行ったカフェでの夕食がとても美味しくて、この日受けた「スーダン人の優しさ」というスパイスがMIXされて、涙が出そうになった。
「素敵なディナーをありがとう」とお礼を言ったら、「私たちのカフェに来てくれてありがとう」と逆にお礼を言われてしまう。
ただの移動で、泣きそうになる程その国の事が大好きになる事って、中々ないよね。
【陸路国境越え】エジプトからスーダンへ!いよいよ、本格的なアフリカ旅が始まる
アフリカで通って良かったルート|まとめ
アフリカで通って良かったなと思う「印象に残っているルート」を振り返ってみたら、前回の記事の「プチ・トラブル」の内の2つと重なっている事に気づいた。
アフリカ大陸縦断旅|3ヵ月間の旅で体験した「プチ・トラブル」ベスト5
第3位だった「凶悪都市ナイロビに深夜に到着」の恐怖体験は、今回は第2位の素敵体験に変わった。
堂々たる第1位だった「ゴンダールでの敗北」でエチオピアが大嫌いになった話も、今回は第5位で、優しい人に出会って少しだけ救われる。
なんなら、第4位だった「宿を追い出されて警察を呼ばれた」ダフラ・オアシスも、今回第3位だったバフレイヤ・オアシスへのルートと、広い意味では同じ「西方砂漠」になる。
つまり、「ネガティブな体験」と「ポジティブな体験」は、紙一重なんだろうな。
同じ場所でも、「出会った人」「遭遇した体験」によって、その場所のイメージは大きく変わるだろうと思うし。
なんなら「経験した人間」の受け取り方次第でも、全く違う話になるのだと思う。