-Aswan to Wadi Halfa-
あさ2時。
3時に出発だから2時に来きてねと言われていたのに、2時に行くとバスはまだ来ていなかった。
たぶん3時半だねと言われたので、「ホテルで待ってていい?」って聞いたら、何故か一緒にホテルまで来てくれた。
私の滞在先のヌル・ハン(Noor Han Hotel)は、バス会社のすぐ斜め前。
バス会社のスタッフが、ホテルのスタッフとアラビア語で会話を交わす。
ホテルのスタッフは私に、「起こしてあげるから、部屋で寝てていいよ」と言ってくれた。
ロビーまで運んだバックパックは、フロントの奥で預かってくれた。
3時半と言われたので、4時に自分で起きて様子を見に行くものの、バスはまだ来ていなかった。
ホテルのスタッフが迎えに来てくれたのは、4時半頃。
早起きした意味~。涙
到着していたバスは、小さなミニバス。
え!これで国境を越えるの!?
と驚きつつ写真を撮っていたら、「このバスはスーダンまでは行かないよ。途中で大きいバスに乗り換えるんだよ。」と教えてくれた。
私は、助手席をあてがってもらえた。
▼前回のお話し▼
世界遺産第1号!アブ・シンベル神殿を見に行こう(アスワンからのツアー)
スーダンという国
今日は、約2週間滞在したエジプトを離れてスーダンへ向かう。
エジプトは、アフリカ大陸内にあるとはいえ「アラブ人の国」。
文化的にも人種的にも、彼らはアラブ人。
エジプト人たちも、自分たちを「アフリカ人」とは思っていない。
アフリカ旅行といえども、どちらかというと私はアラビア旅行をしていた事になる。
ここから、本格的な「アフリカ旅行」が始まるのだ。
スーダンは、今年の6月に一度暴動が起きて、外務省からレベル3(渡航は辞めて下さい/渡航中止勧告)が発令されている。
アフリカ縦断は諦めなければならないのかな…って、しばらく様子を見ていたのだけど。
一応両者が和解したとの事で、数か月後にレベル2(不要不急の渡航はやめてください)に引き下げになったのだ。
スーダン旅行というのは、とてもマイナーな様で。
ほぼ全世界を網羅しているガイドブック「地球の歩き方」でさえ、スーダン版は刊行されていない。
私が持っているガイドブックは、約23年前に刊行された「旅行人ノート アフリカ」。
スーダンの項は、わずか3ページだけれど。
あとは、数少ないスーダン旅行者のブログ記事に頼るしかない状況。
スーダンを訪れたことがある人は、「特別な観光地はないけれど、人がとてもよかった」と絶賛する。
スーダンを飛ばして空路でエチオピアやケニアに入った旅人も、その評判を聞いて「スーダン飛ばさなければよかった」と後悔するほど、評判のいい国。
だから私も、とても楽しみにしていた。
だけど、語学学校で友達になった人に「スーダンに行く」と言ったら、とても心配された。
彼は、自衛隊として南スーダンに半年間滞在した事があって。
とても危険な場所だった、本当に気を付けて…と。
いやいや、南スーダンは外務省からレベル4(退避勧告)が発令されている真っ赤な国。
私が行くのはスーダン(北)だから大丈夫だよと言ったのだけど。
だけど、南スーダンと揉めているのは、スーダン(北)の人たちなんだよ、そういう国なんだよと。
確かに、それも一理あるけれど。
彼は、私にお守りとしてコンドームをくれた。
ふざけているとかではなくて、大真面目にね。
いざとなったら、これを差し出すくらいの覚悟で行きなさい、と。
それくらいの覚悟がないのなら、アフリカには行かないで、と。
いざとなった時に、これを差し出したところで使ってくれるかはわからないし、生きて返してくれる可能性も低そうだけど。
だけどこれはお守りとして、すぐに取り出せる場所にしまっている。
そして、彼はこう続けた。
自分でアフリカに行くと決めたのだから、例え何があっても、アフリカのせいにしてはいけないよ
って。
うん、それでも行くんだ私は。
アフリカは、そんなに怖いところじゃなかったよ。
とても素晴らしいところだったよ。
って、みんなに伝えたいから。
エジプトのアスワンから、スーダンのワジ・ハルファへ|ローカルバス
ミニバスは、走り出して30分程でガソリンスタンドに停車。
何のための停車だろうかー。
と思っていたら、30分程で大きなバスが来た。
乗り換え先の、バス待ちだったみたい。
それから4時間後の9:30頃。
バスが、あるゲートの前で停車する。
たぶんここから船に乗って川を渡るんだ。
今は、船待ちなのかな。
1時間ほど経った頃、船が到着した。
バスも船に乗り込み、私たち乗客は徒歩で乗る。
船を撮っていたら、「僕たちも撮って」とスーダン人。
そう、このバスはエジプト発だけれど、乗客のほとんどはスーダン人なのだ。
たぶん、スーダンからエジプトへ買い物に来たスーダン人たちだ。
引っ越しか!?と思うくらいの、大量の荷物がバスに積みこまれている。
船に乗る。
あぁ、エジプトの陸地が遠ざかっていくよ…。
いや、だけど川を渡った先も、まだエジプトの領地なんだけどね。
川を渡ってから少しバスを走らせたあとに、国境があるのだ。
だけど気分的には、ここでエジプト旅が終ってスーダンに渡るような気分だ。
だって船上でたくさんの人に、「Welcome to Sudan!(スーダンへようこそ!)」って言われるんだもん。
もう、この川の先はスーダンなのだと、思わせられる。
スーダンへようこそって、柔らかい口調で言われる度に、なぜだか泣きそうになる。
それ以上に、強い口調で詰め寄ってきたり、あれこれ質問攻めをしてきたりしない。
ただただ、歓迎してくれる。
そんな優しさと距離感が、私には丁度よくて。
エジプトのルクソールとアスワンの人々に辟易して心底疲れ切っている私には、尚更その穏やかさが心に染みる。
だけどここで私が感極まって泣いたりしたら、みんなびっくりしてしまうから。
頑張って、感情を抑えよう。
あぁ、大好きだよスーダン。
まだ入国もしていないんだけど。
船の中には、大型の乗り物がところ狭しと並んでいる。
絶対に動き出すはずがないと思いつつ、こういう場所は危険だと習ってきた日本人の私としては、この場所を歩くことに直感的に恐怖を感じる。
川を眺めていたら、乗務員が謎のお金を徴収しに来た。
エジプトポンドだと、115ポンド(約805円)。
何のお金?って聞いても、よくわからない。
乗務員は、一生懸命に説明をしようとするのだけど。
彼の英語力では上手く説明ができないらしくて、なんだかもどかしそう。
あぁ、その感覚は私にもよくわかるよ。笑
よくわからないお金は払いたくないのだけど、彼が不憫すぎるので、素直に言い値通りの金額を払う。
彼が手に持っている札束を見るに、他の乗客もみんな払っているんだろうなと想像できるし。
スーダン人は、控えめながらも写真撮影を求めてくる人が多い。
そして見せてあげると、とても喜んでくれる。
これがスーダンのお金だよと、10スーダンポンドを見せてくれた。
見てから返そうとしたら、「あげるよ」と言って受け取ってくれない。
えー、さすがに「お金」は受け取れないよ!
このお金で、1ℓの水が買えるよと教えてくれた。
1ℓの水は、エジプトでは5エジプトポンド(約35円)だから、物価が同じであれば1エジプトポンドは2スーダンポンドという事だろうか。
スーダンのレートを調べ忘れてしまっていたので、スーダンポンドの価値がまだわからない。
なんか流れで、この紙幣を受け取る事になってしまったよ。
水が買えるという事だけれど…このお金は使いたくないな。
お土産として、日本に持って帰ろう。
岩がたくさん浮いているエリアを抜けると、対岸に着く。
乗船時間、約1時間。
降りたところは、なんだか不思議な場所だった。
みんな普通に歩いているけどね…私からしたら、絶景ポイントなんですけど?
また多くの人が、「スーダンへようこそ!」と歓迎してくれる。
あぁ、スーダンに来たよ。
まだエジプトの領土だけど。
だけど私の気分的には、もうスーダンに来たような気分だ。
周りのほとんどはスーダン人だし。
バスで30分~1時間ほど移動して、国境に着く。
まずは荷物検査室に入るのだけど、誰も入らないから、私もみんなと一緒に待ってみる。
そうしたら、入っていいよと私だけ招かれる。
普通に通過。
次はエジプトの出国審査かな?
皆と一緒に流れで移動したかったのに、何故かまだ誰も来ない。
仕方がないので、人に尋ねながらオフィスを探す。
普通に出国スタンプをもらって、終了。
簡単だ。
バスの乗務員に会ったから、「出国スタンプをもらったけど、次は何をしたらいい?」と聞いたら、「カフェで待ってて」と言われる。
カフェに入ると、店員に両替を勧められる。
1エジプトポンド=5スーダンポンド
これが高いのか安いのか、よくわからない。
国境で両替した方がお得な感じがするんだけど、今日の目的地のワジ・ハルファでも両替はできるみたいだし。
ソファーに座って、考えてみる。
さっきもらった10スーダンポンドは、エジプトポンドだと2ポンドになるって事だよね?
2エジプトポンドは14円だから、14円で水が買えるって事?
え?それって安くない?
ここで替えた方がいいのかな??
悩んでいたら、「何か手伝いましょうか?」と英語の堪能なスーダン人が声を掛けてくれた。
「両替を、ここでするかワジ・ハルファでするか考えている」と伝えたら、「ワジ・ハルファの方がいいよ」と教えてくれた。
そうなのか!じゃあそうしよう。
そして、何故かコーヒーをご馳走してくれた。
そのコーヒーは、粉が溶けずに残っているドロッとした飲み物で、とても飲みにくい。
だけどせっかくご馳走してもらったしと、少しづつ、最後まで飲み干す。
男性は、コーヒーをきっかけに私と会話をする…という目的でもないらしく、元居た自分の席に座っている。
そして、「他に何か手伝う事はある?」と聞きに来て、「大丈夫です」と答えたら、笑顔で店を出ていった。
なんだったんだろう…何の目的もない、無償の優しさを受けると戸惑う。
バスの乗客の一人が迎えに来てくれたので、バスに戻る。
2時間くらい、ここにいたのかな。
バスに戻ると、隣の席の女性が何かの実をくれた。
これは、塩気が効いていて美味しい。
すごく固いけど。
食べ終わったら、また別の実をくれた。
これも、塩気が効いていて美味しい。
すごく固いけど。(再)
顎の筋肉のトレーニングになるね。
次は、スーダンの入国審査。
出国より入国の方が厳しいだろうから、少し緊張。
男性達はずらりと列を作っているのだけど、女性は優先してもらえた。
バスの隣の席の女性は、さらっと1~2分で終了。
次は私の番!…と思ったら、別室に呼ばれてしまう。
そこで、何故か「外国人登録」をする事になった。
スーダンでは、入国後に必要な手続きが2つある。
1つ目は、入国後3日以内に「外国人登録(旅行許可証)」の手続きをする事。
これは、国境の町ワジ・ハルファか、首都のハルツームでできるという。
2つ目は、宿泊登録をする事。
これは、滞在する全ての町の警察で、その都度やらなければならないという。
これをしないと、宿に行っても泊めてもらえないのだとか。
え?それを、この国境で手続きするの?
そんなの、聞いたことないんだけども。
よくわからないまま、手続きをする。
写真も提出。
予備で持っていてよかった。
持っていなかったら、どうなっていたんだろう。
そして念のため「これ以外にスーダンで必要な手続きはあるか」と聞いてみる。
「これで全てだよ」と言われる。
「3日以内の登録も、各町での登録も不要か」と聞いてみるも、やはり「不要だ」と。
本当かな。
私の英語力で、きちんと意図が伝わっているかも疑わしい。
まぁ、問題になったら、またその時に考えればいいか。(←おい)
とりあえず、入国後に手続きの事を考えなくて済むなら、それはありがたい。
無事に登録が終ったあとは、入国審査。
審査官「スーダンには、どれくらい滞在予定ですか?」
わたし「2週間くらいです」
(本当は1週間くらいの予定だけど)
審査官「2週間ですか?短すぎます。1ヵ月から、3ヵ月は滞在しないと」
(申告より短めにされることはあっても、長めを求められるなんて珍しい。笑)
審査官「ひとりなのですか?怖くは、ないでのですか?」
わたし「怖くないです」
審査官「なぜ?」
(え、なぜって…)
わたし「スーダンの人々は、とても親切だと聞いているからです」
審査官「ありがとうございます」
(あ、嬉しそうだ)
審査官「スーダンのいい写真をたくさん撮って、スーダンはいい所だったと皆に伝える事はできますか?」
わたし「はいっ!」
そんな感じで、無事に入国スタンプをもらう。
なんか、1時間くらいかかってしまったよ。
オフィスを出ると、バスは既にゲートの手前まで行っていた。
慌てて追いかける。
すると、「荷物持ってきて!」と言われる。
バスから降ろされた私の荷物が、地面に転がっていた。
あ、自分で運ぶのか。
荷物を荷物検査室に持っていくと、シールを貼られて書き込みをされた。
ちょっとー!はみ出してるんだけど!?
ショックだ。
バスはゲートを通過して、先に進んだところで停まっていた。
慌てて追いかける。
途中、両替をしないか?と2~3人に声をかけられるのだけど、それどころではない。
バスに追いつくと、そこではまだ荷物の積み込みが行われていた。
なんだ、ギリギリだけど余裕だったよ。
そして17:30頃に、国境の町ワジ・ハルファに到着。
ワジ・ハルファ|宿と両替とスーダンごはん
宿の目途は、全く付けていない。
色々な人が声をかけてくれて、私を連れていこうとする。
他の国だったら、「自分で探すので大丈夫です!」と突っぱねるところだけど。
なんか、たぶん大丈夫なんだろうな、ただの親切なんだろうなと思うから、もうされるがままに着いて行く。
トゥクトゥク(インドで言うところのリクシャー)に乗るように促される。
「お金は払わなくていいからね!」と。
え!払ってくれたの!?なぜ!?
「じゃあね、また明日♪」と、見送ってくれた。
トゥクトゥクは、絶対に歩いてすぐの距離にあるホテルの前で停まる。
(後で歩いてみたら、2~分だった)
Elharm Hotel
宿で値段を聞いたら、バストイレ付きの個室で600ポンドだという。
バス乗り場の彼等は500ポンドと言っていたから、それを伝えてみるも、600ポンドという事だ。
600ポンドは…国境のレートで言えば900円くらいか。
Wi-Fiはないけど、ホットシャワーはあると言うし、もうここにしようか。
部屋はとても綺麗で、ブランケットも出してくれた。
私、この町では噂の「野戦病院」に泊まるものだと思っていたのだけど。
スーダンに着いたばかりの旅人は皆、屋外にベッドを並べただけの「野戦病院」の様な場所で夜を明かすのだ。
そんな半分野宿の様な夜を想像していたから、こんな普通の個室に泊まれるなんて拍子抜け。
だけど、屋外で寝ている理由って、暑すぎてとても室内では眠れないからと言うし。
今は冬だから、そんな必要はないのかな。
とりあえず、バス乗り場に戻って両替をしよう。
両替商にレートを聞くと、1エジプトポンドは5.3スーダンポンドだった。
(つまり、1スーダンポンドは1.3円。)
国境より、0.3ポンドもお得だった。
そして、この闇両替は、公式レートよりも遥かにお得と言う事だ。
公式レート調べてないけど。
あとから調べたら、1スーダンポンドは2.4円だった。こんなに違うとは!
4776エジプトポンドを、25,300スーダンポンドに両替。
約33,000円。
なんと、大変な量の札束になってしまった。
こんな量だけど、きちんと1枚1枚自分で確認をする。
スーダン人は大丈夫だと思うけど…両替商って、結構ここで誤魔化してきたりするみたいだから。
両替商は、ゆっくり数える私に苛立つどころか、椅子を用意してくれた。
優しい!
そして1枚の誤魔化しもなく、受け取る事ができた。
スーダン…初日からこんな感じだったら、気が緩んでしまうよ。
大量の札束を持ち歩くのは怖いので、一旦宿に戻って分散する。
そしてまた出ようとしたら、宿のオーナーが「お腹すいてる?」と聞いてきた。
「すいてる!」と答えたら、宿の裏のカフェに連れていってくれた。
カフェの人に何があるか聞いたら、「ピザ」と言われる。
ピザか~、なんかスーダンっぽくなくない?笑
他には何があるか聞いたら、「シャウルマ」なるものを勧められる。
「パスタにチキンを入れたやつ」だそうだ。
じゃあそれで!と言って出てきたものは、どう見てもパスタには見えなかった。
だけど、美味しい!
中には、お肉がたくさん詰まっている。
もう、スーダン人の優しさというスパイスがMIXされてさ、幸せ過ぎて泣きそうになる。
「素敵なディナーをありがとう」と言ったら、「私たちのカフェに来てくれてありがとう」と逆にお礼を言われてしまう。
なんでだー。
バス乗り場に戻って、明日のバスを予約。
カリーマ(Karima)という場所に行きたいのだけど、途中のドンゴラ(Dongola)で乗り換える必要があるらしいので、ドンゴラ行きのみ購入。
運賃は、400ポンド(約520円)。
スーダン、まだ移動してきただけだけど。
わたし、スーダン大好きだ。
▼次回のお話し▼
スーダン旅の始まり|ワジ・ハルファからカリーマへ!