ー世界はきっと、美しいー
インド -India-

インドの砂漠で終える2017年

【インド周遊記】2017/12/31

ジャイサルメール -Jaisalmer-

砂漠の夜は凍える様な寒さで、早く陽の光が届けばいいのにと願いながら夜を越える。

だけど今は冬だから、太陽が辺りを照らすのは7時過ぎ。遅すぎる~。

北国出身の私でさえ寒いのだから、いつも「寒い寒い」と嘆いているデニスはもっと辛かっただろうね。

ラクダたちは、寒くなかったのだろうか。
砂漠の生き物だから、暑さにも寒さにも、どちらにも耐えられる身体の構造なのかな。

少年たちが、朝から朝食を作ってくれる。
フルーツとトーストと、ダルのおかず。

デニスは「お腹いっぱい」と言って、ダルのおかずを一口も食べなかった。

お腹いっぱいなわけない…きっと嫌いなんだな。
「旅行中はその国の食べ物しか食べない」というストイックさを持ち合わせているくせに。

仕方がないので、私が頑張って半分くらい食べる。

私もあんまり口に合うものではないのだけど。
だけどフルーツならともかく、わざわざ調理してくれたものを残し過ぎるのは申し訳ない。

すると、砂漠の向こうから新たな少年3人組が現れる。
昨日帰ったドイツ人カップルが乗っていたラクダを、回収しにきた様だ。

少年の一人が、私が首に巻いていたストールでターバンを作ってくれた。
なんだか砂漠の民にまた一歩近づいたみたいな気持ちになる。

わずか2頭になってしまったラクダと共に、今日もまた荒野を歩く。

途中の井戸で、調理用の水の補給をする。

あぁ、これが旅の序盤だったなら、私は料理が食べられなくなるんじゃないかな。

ヒマラヤでもらったカットフルーツでさえ、かじった後にミネラルウォーターで口を濯ぐという徹底ぶりだったのだ。

インドに来てもお腹を壊す気配が全く感じられない私は、これを見ても何も思わないまでに成長した。

モリヤは私の恋人。

「そんなに言うならキスをしてみせろ」と周りがはやし立てるので、彼に近づいてみる。
あぁ、だけど近づいてみると怖いんだよね、モリヤの口って。

お昼休憩。

周りには、たくさんのプー。
う〇こって、英語でプーって言うんだって。
今日覚えたニュー単語。

こんな場所でお昼休憩。

「くそっ、何でこんなにプーだらけの場所を選んだんだよっ!」

…っていうデニスの英語が聞き取れちゃったもんだから、私は大爆笑。

そんなプーだらけの場所に敷いたマットの上が、唯一の安全地帯。

昼食が出来上がるのを待つ間、デニスが読書を始める。
私はガイドブックを眺める。
あぁ、いいなぁデニス。私も普通に読書がしたい。

デニスが1冊の本を読破した。

「私も英語の本読んでるんだよ!簡単なやつだけど」と言う。

すると

「ハロー!」
「グッドモーニング!」
「ハウアーユー?」

とかそんな感じ?と馬鹿にされる。

いや、そこまで簡単じゃないよ。美女と野獣だよ。

ケニー先生が「ストーリーを知っている話で尚且つ簡単な本を探して読みなさい」と言ったから。

「難しい本や、知らない話は退屈で飽きてしまうから」と。

だけどグルガオンを去る日に遊んだインド人は、「難しい本を読むべきだ」と言った。

「そうでなければ、成長できない。難しいものに挑戦するからこそ、自分のレベルもそれに合わせて上がる」というような趣旨の事を言われた。

どっちも正しい様な気がする。そしてどちらの人間も語学に長けているから、説得力がある。

だけど私はケニー先生の教えに沿って簡単な本を読むけどね。
いつか、今デニスが読んでいたような分厚い本を楽しく読める様になるといいな。

デニスが私のガイドブックをのぞき込んで、ジョードプルのお勧めの宿を教えてくれという。
お勧めなんてないけど…良さげな宿をピックアップして、概要を伝えてみる。

その中の一つに、「ホットシャワー24時間OK」という表記があったので、そのまま伝えてみる。

そうしたら、本を指さして笑いだすデニス。
「OK」だけ読める!と。

私としては、全部日本語だから全く違和感がないのだけど。

デニスからすれば、意味不明な異国の文字の中に「OK」という文字だげ浮かんでいれば面白いんだろうね。

そう考えれば、日本語って不思議だ。

漢字、ひらがな、カタカナという異なる3つの表現方法があるのに加えて、アルファベットまで文中に差し込んでも良いのだから。

デニスは、「日本は旅がしにくい」とも言う。
「日本人は、英語が話せない人が多すぎる」と。

街ゆく人の英語レベルを私は知らないけれど…地方に行けば「英語表記」が全くないところが多すぎるなとは感じていた。

自分が日本を旅する外国人と仮定して町を眺めた時に、こんな環境ではとても旅ができないなと何度思った事か。

デニスは「日本人はガイジンが嫌いでしょ?」とも言う。
ガイジンが良くない単語だという事も知っているよ」と。

何でガイジンだなんていう日本語を知っているのか…。

いや、嫌いだなんて事はないと思うんだけどね。
むしろ、異文化交流がしたい人ってたくさんいるんじゃないのかな?

「東京の人は、冷たいかもしれないね…。だけど首都ってどこもそうじゃないの?」と聞く。
「そんな事はない」と断言される。
渡航経験豊富なデニスがそう言うのだから、「そんな事ない」んだろうね。

つい最近ある人に、「街で外国人を見かけても、つい目を合わせない様にしてしまう」と言われたのを思い出す。
「だって道を尋ねられても、答えられないから」と。

他の日本人も同じ思いなのかどうかは知らないけれど。

逆にここインドでは、こちらが困っていようが困っていなかろうが関係なく、多くの人が声を掛けてくれる。

一人がわからなくても、皆で考えたり、他の人を巻き込んだりしながら答えを導きだしてくれる。

それを鬱陶しいと思うときもあるし、色々な情報に翻弄されて逆に困るときもある。

だけど、「困っても誰かに聞けば何とかなる」という安心感がこの国にはある。

「インドは世界一旅が難しい」とか「インドで旅ができれば他のどの国でだって旅ができる」などと言う人もいるけど。

私としては、凄く旅しやすいけどな、インド。

両極端な日本人とインド人。
どっちも、違った形の「優しさ」なんだと思う。
決して「嫌い」ではないはずだ。

デニスは度々「僕はガイジンだ」とふざけて言ってくる。

そんな風に青い瞳で言われちゃうとね…だんだん「ガイジン」に見えてくるから不思議だ。

第一印象は、誰に対しても「外国人」に見える。
特に西洋人は…姿形が私たちとは違い過ぎる。

そんな風に「私たちとは違う世界で生きる住人」として一線を置いてしまう。

だけど、ひとたび交流を持ってしまえば、全く外国人に見えなくなるから不思議だ。
髪や瞳の色も、文化も、言語も、何もかもが違うというのに。

そんな違い、全く見えなくなってしまう。
盲目的になってしまう。

だから改めて「僕はガイジンだ」なんて言われるとね…あぁ、そういえば彼は外国人だったんだなと、ふっと思い出すのだ。

なんだか不思議な事なんだけど。

昼食は、昨日と同じく野菜カレーとチャパティ。

そして14:00頃、本日のキャンプ地に到着。

え!もう終わり?14:00って早くない??
と驚いたのだけど、今日は本当にこれで終わりのようだ。

時間がたっぷりあるので砂漠を探索。
今日の砂漠は、昨日の砂漠よりも大きい。

小さい小動物が歩いたような足跡があったり。

象でも歩いたのかと思うような大きな足跡があったり。

時折、別のラクダ隊が通りかかったり。

砂漠の過酷さを思い知ったり。

今年最後の夕日を眺めながら、一年間を振り返ってみたり。

あぁ2017年。思い起こせば色々な事があった。

8月に会社を辞めた。
「円満退社」って初めての経験だったから、最後は名残惜しくて仕方がなかった。

同じく8月に東京から大阪へ引っ越しをした。
「大阪」という町は、噂で聞いていたのとはまるで違った。
とても人々が温かい、住みやすい町だと知った。

9月に人生初の海外長期一人旅に出る。
初めは、空港から市内へメトロで行くだけでも「大冒険」だった。
ATMから現地通貨を引き出すだけのことで、右往左往をしていた。

10月にヒマラヤトレッキングに挑戦をした。
人生観に影響を与えるような24日間だった。

その影響もあって、11月にはインドで語学留学を始めた。
旅の寿命が縮むことになっても構わなかった。

そして今、ひとりインドの西の果ての砂漠で、今年最後の夕日を眺めている。

あぁ、私は2018年最後の夕日を、「どこで」「誰と」「どんな気持ちで」見ているのだろうと思う。

まるで想像がつかない。今日の日の想像を、2016年末の私にできなかった様に。

ベースキャンプに戻る。

ここで新たな仲間が加わる。
オランダ人女性と、アメリカ人男性のカップル。
あぁ、カップルだらけだなこの町は。
一人旅の人って、少ないのかな?

今日も少年たちが歌やダンスを披露してくれるのだけど、このカップルはあまり興味がなさそうにしている。
昨日のドイツ人カップルは、ちゃんとリアクションをしてあげていたのだけど。

そして早々に、就寝をする事になった。
日本はそろそろ紅白歌合戦が始まる頃だろうか。
いや、さすがにもう始まっているのかな。

どちらにせよ日本のこの時間は、毎年とてもせわしないよなと思いだす。
そろそろ一つの年が終るのだという事を、嫌でも実感させられる。

それに比べて今ここは、「あぁ、今年がもう終わるんだな~」とのんびり感じるだけ。

毎年とのギャップに驚く。
そういえば、今年はクリスマスの実感も湧かずに終わったんだっけ。

まぁ、とにかくこのキャンプのメンバーは、もう早々に眠りたい様だ。

先ほど砂漠を散策した時には、遠くから陽気な音楽やまばゆいライトの光が零れてきていた。
この砂漠には、私たちの他にも別のチームが潜んでいるようだ。
そして彼らは、ニューイヤーの到来を派手に迎えようとしている人たち。

今年はカウントダウンもなしだ。
いつの間にか夜が明けているのかな。
それはそれで、別にありだよね。

おやすみなさい。
そしてさようなら、2017年。

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