-Jodhpur to Jaisalmer-
今日は、西の果ての砂漠の国「ジャイサルメール」へ向かう。
朝10時のローカルバスを予約してあったのだけど、1時間前にバスパークに着く。
ローカルバスでジャイサルメールへ
ベンチで昨夜買ったお菓子を食べていたら、親切な人に声を掛けられる。
「どこへ行くの?」
「ジャイサルメール行きのバスはあっちだよ!」
えー?でもまだ出発まで40分もあるんですけど…?
半信半疑で向かってみると、既にバスが来ていた。
うーむ。
物凄くローカル感が強い。
バックパックを預けて、近くのチャイ屋さんで朝一のチャイを飲む。
すると、物乞いの女性が近寄ってきて手を差し出してくる。
無視をしてみると、これが欲しいとスナック菓子を指さす。
う~ん、仕方ないか。お腹空いてるのかな。
そうしたら、今度は「チャイが飲みたい」とせがんでくる。
チャイ代くらい払ってもよいのだけど、この調子であれこれ要求がエスカレートしそうな雰囲気だったのでお断りをした。
バスに戻って、私の席はどこかと尋ねてみる。
すると、どこでも好きなところに座っていいよと言われる。
そうなのかー。わざざ2日も前に予約する必要なかったかな??
一番前の窓側に席を取る。
インド人だらけのオンボロバスだけど…こんな風景を横目に旅ができるなんて楽しすぎる。
あぁ、私はローカルバスが好きみたい。
ネパールのカトマンズからジリへのローカルバスも、めちゃくちゃ悪路だったけど楽しかった。
カトマンズからポカラ行きの「ツーリストバス」は、めちゃくちゃ退屈でつまらなかった。
インド鉄道も…悪くはないけど楽しくはない。
(既にトラウマが何個かあるし…)
これからも、出来る限りバス旅を続けようかな。
この広大なインド大陸を。
ジャイサルメールは、西の果ての国。
パキスタンとの国境まで、わずか150kmという辺境の土地。
キャメルサファリが売りの町。
先週末まではニューデリーの近くのグルガオンに滞在していたのだけど…遥々こんな果てまで来たのか。
①バラナシ → ②ブッダ・ガヤー → ③デリー/グルガオン → ④ジョードプル → ⑤ ジャイサルメール
所要時間5時間30分と言われていた道のりは、わずか1時間遅れの6時間30分で終わった。
いやーでもさ、絶対遅れるんだから、所要時間長めに見積もって伝えようとか思わないのかな。笑
ジャイサルメールの宿探し
バスを降りると、リクシャーワーラーが待機をしていた。
歩いて行ける距離だけれど、入り組んだ路地の中の宿だし面倒なのでリクシャーに乗る事にした。
私が伝えた宿まで、120ルピー(216円)だったのが70ルピー(126円)になった。
だけどジョードプルの時と同じく、ここから先へは行けないから歩けと途中で降ろされる。
いやー、だからさ。それは事前に言うべきだ。
「この宿まで」って伝えた上で交渉が成立しているんだから。
その事を訴えて、50ルピー(90円)に値下げしてもらった
ジャイサルメール城。
なんとこの町では、この城壁の向こう側に泊まることができるのだ。
しかも、ここから先はリクシャーや車が入れないから、とても静かで空気が綺麗。
素晴らしい環境だ。
歩き出して間もなく、「〇〇ホテルでしょ?」と怪しい男に声を掛けられる。
さっきのリクシャーワーラーが、「そこのホテルのオーナーは友達なんだ!」とか言って電話してたからな…それでかな。
本物か疑わしかったし、リクシャーワーラーにマージンが入っても癪なので無視をしてみる。
すると間もなく、めげずにもう一度声を掛けてくる。
私、別にその宿に決めていたわけではない。
3件ほど目星を付けていた中の1つの名前を言っただけ。
ジャイサルメールには少し長く滞在したいと思っているから、いつもの様に即決はせずに複数件見て回る予定でいたのだ。
だけど、入り組んだ路地を彷徨うのも面倒だ。
この男に1件目まで連れていってもらって、それからあと2件見に行けばいいか。
歩きしな、名前を聞かれる。
少し警戒している私は、「泊まることになったら教えるよ」と失礼な態度を取る。
辿り着いたところは、とても快適そうな吹き抜けのオープンスペースがある宿だった。
そしてスタッフに女性がいて、欧米人客もくつろいでいた。
見せてもらった部屋は500ルピー(900円)で、部屋にトイレはあるけどシャワーはバケツ。
バケツかー。
同じ値段でバケツじゃない宿があればそっちにしたいな。
という事で、「他の宿も見てきます」と正直に伝える。
男は嫌な顔一つせず、「もちろんだよ!」と送り出してくれた。
あぁこれはね…ポイント高いよね。
もう1件は、満室だった。
2件目も満室で、ドミトリーならあるよと言われる。
だけど感じの悪い男だったので、私は「〇〇ホテル」に戻る事にした。
戻って来た私を、オーナーのBさんは歓迎してくれた。
多分この人は…悪い人ではない。
距離間がいきなり近すぎるから、警戒されやすいだけだ。
ウェルカムチャイをもらう。
いくらか聞いてみたら、「あなたは私のトモダチだからいらないよ!」と言われる。
私は、そんなに簡単に人を「トモダチ」だなんて思わない人間なんだけどな。
あぁ、ある人に「チセはトモダチのハードルが高すぎる」と言われたのを思い出す。
「チセが言うトモダチの条件はね…それはトモダチじゃなくて親友だよ」と。
だけど私にとって「トモダチ」は、凄く尊くて大切な存在だ。
そんなに簡単な事じゃないよ。
キャメルサファリの勧誘
チャイを飲みながら、早速キャメルサファリの勧誘を受ける。
この町に来たなら、キャメルサファリだよね。
ここでキャメルサファリをしないなんて…スキー場に行ったのにスキーしないのと一緒だよね。
いや…それは言い過ぎだけど。
語学学校の人たちも、週末を利用してジャイサルメールを訪れる人が結構いるみたいだった。
町には1泊もせずに、キャメルサファリ目当てで訪れているほどだ。
そして町の魅力を聞いても…あまり印象を持っていない感じだった。
そんなジャイサルメールだったけど、私はサファリには参加しない予定だった。
「スキー場の雰囲気だけ味わって、雪遊びだけして帰る人」の様になるつもりだった。
だってガイドブックには、「女性の一人参加は絶対にやめましょう」と警告文が乗っている。
砂漠でガイドと2人きり…事件の報告が多いみたいだ。
「他のツーリストもいるから大丈夫だよ」と言われていたのに、当日になったら自分一人だったというパターンまであるらしい。
だから、自分で確実に仲間を募って参加しなければいけないとの事だ。
そんなねー、現地で速攻で仲間を作るスキルは私にはないよー。
だからキャメルサファリは諦めていたのだけど、なんとなくBさんからは悪人の匂いがしない。
彼の所有しているラクダに乗って、彼の村から出発する。
付き添いは、彼のファミリー。
「他のツアーだと、人々がたくさんいてツーリスティックだよ」と言われる。
彼のプライベートラクダに乗れば、とても静かなサファリを楽しめると。
「元旦の初日の出を砂漠で見たい」と言ってみた。
そんな気、全くなかったんだけど。
キャメルサファリに参加する気もなければ、元旦をどの町で過ごすかさえ決めていなかった。
まだ1週間も先だもん…次の町「ブージ」で過ごす可能性が高いかなと思っていた。
だけど何となく…「そんな気」になってしまった。
「砂漠」という響きだけでも、旅人のロマンを掻き立てる素敵な言葉なのに。
1年の始まりをその場所で迎えられたなら…最高じゃないですか。
それに、火傷した足を少し休めたい私は、どこか気に入った町で少し長く滞在したいと思っていた。
この町は…まだ少ししか知らないけれど、気に入りそうな気配がするのだ。
半日ツアーか1泊2日ツアーの2択が主流なのだけど、Bさんは1泊2日か2泊3日かの選択を迫る。
「2泊だったら、よりディープな砂漠に行けるよ」
「砂漠の村々を巡る事もできるよ」
せっかくなら…2泊3日か。
価格は、ニューイヤープライスで4800ルピー(8640円)だと言われる。
交渉して、3800ルピー(6840円)まで下がった。
ニューイヤープライスじゃなければもう少し安いんだけど。
あぁ、だけどネパールで体験した30分のパラグライディングと同じくらいだ。
だけど「即決」はしたくないので、明日返答すると言って話を終える。
宿のフレンドリーなオーナー
Bさんはとてもフレンドリーで、私とたくさんコミュニケーションを取りたがる。
英語のよい訓練になりそうだ。
彼の隣でガイドブックを読んでいたら、「なんて書いてあるか教えて」と言われる。
まさかの翻訳ですか!
ハードル高すぎます!
私、まだ幼稚園児レベルです!
言えそうなところだけピックアップして伝えてみる。
私「ここはパキスタンとの国境までわずか100kmです」
B 「違うよ!150kmだよ」
(え!そうなの…?)
私「ラージプート族の王が築いた都市国家です」
B 「僕もラージプート族だよ!」
私「本当に!?」
B 「この町の多くの人がそうだよ」
(そうなのかー!)
私「パキスタンとの分離独立の前までは、ヨーロッパやエジプトまで続く中継地でした。だけど、今はその道は断たれています」
B 「うん、そうだね」
私「ここは、とても静かで美しい場所です。なぜなら、城内へは車は入ってこれないからです。ジャイサルメールはオアシスです」
B 「もちろんだよー!」
(ふぅ…)
Bさんが、夜景が綺麗に見えるところに連れていってくれると言う。
え?夜道を出会ったばかりの男と2人で歩くの?
私、まだそこまで信用しているわけではないんだけど??
あぁ、しかし多分大丈夫なんだろうな。
辿り着いたところは…それはそれは美しいところだった。
朝日も綺麗に見える所らしいので、明日の朝にでも行ってみよう。
一旦宿に戻る。
Bさんが夕食を無料でふるまってくれた。
作ったのはボランティアで来ているマレーシア人女性。
ビールも出てきた。
私は飲まないと言っているのが何故か伝わらず。
(歴史の説明は通じたのになぜ…?)
いや、だからさ。
私まだそこまで心開いてないんだってば!
しかし振舞われてしまったら、飲むしかないよね。
慎重に…ゆっくりと半分だけ飲んだ。
あぁ、「お酒は一滴も飲まない!」と決意して出国したのにな。
実はこれで6度目の飲酒だ。(いつの間にっ!)
食後、再びBさんと一緒に外出をする。
寺院が見える所に連れていってくれた。
ジャイナ教の寺院だそうだ。
この町はヒンドゥ教徒の町なのかと、うかつにも聞いてしまった。
そうしたら、「そうだ」と頷いた後に「ヒンドゥとイスラムどっちが好きか」と問い詰められる。
どっちが好きとか…考えた事ないよ。
「どっちも」という答えは受け付けてもらえなかった。
仕方なく、(私の平和の為に)「ヒンドゥだ」と答えた。
あぁ、イスラム教徒のみなさんごめんなさい。
イスラム教については紙の上でしか知らないけれど…きっと温かくて優しい宗教なんだろうと思っている。
一部の過激な人たちが目立っちゃっているのが残念なだけで。
うかつに宗教の話なんてするんじゃないね…。
宿に戻る。
屋上で、星空を眺めながらグリーンティーを飲む。
少し肌寒いから、2人で1枚の同じ毛布を掛けて。
静かな西の果ての夜、出会ったばかりの男女が語り合う…。
彼は、私の手を握りしめてこう呟く。
“出会ってくれてありがとう”
“今日あなたに会えて、僕はとても幸せな気持ちになったよ”
……。
いや!なにこれ!なにこのシチュエーション!
だからっ!私まだ心開いてないのっ!
距離詰めてくるの早すぎっ!!!
下心のあるなしは関係なくね。
出会ったばかりでグイグイこないで、お願いだから。
話を聞いていると、彼はどうやら「日本人」の来訪がとても嬉しいようだ。
日本人が大好きなのに、ここ2年間は一度も日本人が来ないから、とても寂しいのだという。
あぁ、それはね。
多分日本人は、ほぼ全員もれなく城外の日本人宿に行っているんだと思う。
そこはゴージャスで清潔な素晴らしい宿なのに、とても安価に泊まれるんだとか。
そしてオーナーは毎年数か月間、東京のインド料理屋で働いている。
奥さんは日本人で、日本人向けのホスピタリティ溢れた素晴らしい宿なのだとか。
Webでジャイサルメールの宿について調べたら、もうほぼ100%と言っていいほどこの宿の情報しか出てこない。
私はそんなに日本人ばかりいる宿は気おくれしてしまうのと、城内の静かな環境を求めていたので候補にしなかったのだけど。
だけどBさんに聞いたら、街で日本人を見かける機会もほとんどないという。
日本人の旅人自体が、減っているのかな…?
いやでもね、嬉しいのは凄くよく伝わっているよ。
だけど、どうか私に警戒させないで欲しい。
どうか、私のペースも理解して欲しい。
そんなに日本人が好きならば、尚更に。
「もう部屋で休むね」と言って場を終わらせる。
部屋の前まで付いてきてくれて、お休みのハグをする。
最初は拒否してみたんだけどね…強引というか、しつこいというか。
ハグくらい…今まで何度もしてきたけど。
だけど出会って間もない人とは、私的にはナシだ。
ハグは挨拶のスキンシップだけどさ…それって「親しい」が前提だよね?
インドでは、男性同士が手を繋いで歩くほど人々の距離間が近い。
この人口と密度だもんね…。
悪い人ではないと思うのだけど。
この調子でこられたら…一向に心は開けない。