ブージ -Bhuj-
朝からインド料理は重たいので、カフェでトーストでも食べたいと思いメインロードへ行く。
あぁ、だけどこの町には、そんなメニューがありそうなお店はなさそうだ。
とりあえず、チャイを一杯。
もくじ
ブージ|のんびり観光の1日
街を彷徨っていると、たくさんの人が挨拶をしてくれる。
子どもたちは元気よく何度も、女性は少し照れてはにかみながら。
あぁ、平和なブージの朝。
ハミルサール湖 -Hamirsar Lake-
湖に着いた。
1819年に造られた人工湖。
ジャイサルメールのガディサール湖も人工湖だった。
西インドは砂漠の国。
やっぱり水はとても貴重で、貯水の為に人工で造るのが主流なのかな。
もうここまで来たら、朝食は諦めて先に観光をしてしまおう。
という事で、この湖を越えた先にある宮殿を目指す。
シャラド・バウグ宮殿 -Sharad Baug Palace-
宮殿のゲートに向かう途中の小道で、インド人カップルに声を掛けられる。
女性が、私と一緒に写真を撮りたい様だ。
男性の方がカメラマンとなって、2ショット写真をパシャリ。
こういう事って、実は今までも何回かあって。
成人男性からの申し出は断っているけれど、女性や子供からの申し出はお受けする様にしている。
なんで私なんぞと写真を撮りたいのか、全く気持ちは理解できないのだけどね。
欧米人やアフリカ人ならともかく…同じアジアン同士なのにな。そんなに違うかな?
だけど、一緒に写真を撮るだけでとっても喜んでくれるのだから、こちらまで嬉しい気持ちになる。
最初の頃は、慣れなくて少し戸惑ったりもした。
だけど逡巡している私に、「お願い…!」って歎願する彼女の瞳を見たら…断れないよね。
ジョードプルで、成人男性と写真を撮る欧米人女性を見かけた。
彼女は彼に愛想を向ける事はせず、クールにさらっと撮らせてあげていた。
私とはまるで真逆の対応。
私は、愛想は向けても写真は撮らない。
写真くらい撮ってあげてもいいのかな、どうなのかなと、最近迷い中。
カップルと別れたあと、道端に座っている男性にチケット代を請求される。
えー?チケットオフィスにもカウンターにもまるで見えない。
最初は物乞いかと思ったくらいだよ。
道端に座って手を差し出してくるこの男が、正規のチケットを売っているって??
「ここがチケットカウンターなの?」と一応聞いてみる。
しかし男は、値段の説明らしきものをするばかり。
この国ではないけれど…たしかタイ王国に行った時に、こんなシチュエーションの注意書きがあったのを思い出す。
こうやって、正規のチケットカウンターの手前で料金を請求する「偽物」に注意しましょうと。
ゲートまで行ってみて聞いてみようと思い素通りしようとするも、彼は穏やかにお金の請求を続ける。
私はもう一度聞く。
「ここがチケットカウンターなの?」
「ゲートで確認してきたいんだけど」
すると、「ノー、イングリッシュ」と言われる。
私も、「ノー、ヒンディー」と言い返す。
別に言い合いをしているわけではなく、穏やかな雰囲気。
きっと彼は悪人ではないんだろうなと思ったし、騙されても少額の事だ。
諦めて、100ルピー(180円)札を渡してみると、30ルピーのお釣りを返された。
どうやら金額は、カメラ持ち込み料と合わせて70ルピー(126円)だった様だ。
チケットらしき紙切れを2枚渡された。
可愛いアーチをくぐる。
チケットカウンターらしきものもなく、普通に庭園に入ってしまった。
目の前の建物に近づいてみる。
私は、さきほど受け取った紙切れを提示する。
どうやら先ほどの男は、正規のチケット売りだった様だ。
いや~せめてシートくらい敷いて座ろうよ~。苦笑
シャラド・バウグ宮殿
1991年にイギリスで亡くなったブージ最後のマハーラーオ、マンダシンの館。
マハーラーオとは、マハラジャの事。
つまりブージの王だった人。
イギリスからの独立前、イギリス領インド帝国には600以上の藩王国があって、それぞれに統治者がいたのだとか。
この中は、写真撮影禁止。
マハーラーオが生前に使用していたものが展示されている。
シルバーの食器や置物がとても多い。
そして壁のいたるところにタイガーの首が飾られていたり、タイガーそのものが部屋の中央に置かれていたりする。
タイガーを仕留めた時の写真や、なんと象を仕留めた時の写真まで展示されていた。
なんというか…彼の「自己顕示欲」の強さを感じさせられる宮殿だ。
「王」って、そういうものなのかな?
この建物の近くには、こっちの方が立派なんじゃないのかなと思える建物があった。
中には入れなくて外観だけ。
そしてこの建物が何なのかは、私にはわからない。
チケット売りは「ノー、イングリッシュ」だし、ここは外国人観光客が頻繁に訪れる場所ではないんだろうな。
うん、楽しかった。
素朴で穏やかな宮殿見学。
スワーミナーラーヤン寺院 -Shree Swaminarayan Temple-
次に向かったのは、スワーミナーラーヤン寺院。
白大理石の、巨大で立派な寺院。
先ほどのシャラド・バウグ宮殿とは打って変わって、多くのインド人観光客で賑わっている。
靴を脱いで、寺院内を見学する。
時間的な問題なのか、何かが展示されているらしい小窓が次々に閉められていく。
お祈りしていた人がいたから、何かの偶像が置かれているんだと思う。
建物だけでも、とても立派なのだけど。
ベンチに座って、次はどこに行こうかと考える。
すると、おばあさんが私の隣に座って話しかけてくる。
「ネパリ??」
え??笑
ネパリですって??笑
久々に聞いたネパリとう言葉に懐かしさを感じつつ、彼女の意図がわからず対応に困る。
おばあさんは、娘さんに「イングリッシュがうんたらかんたら」と、何やら通訳を依頼する。
娘さんは私に出身を聞いて、おばあさんに伝えた。
「彼女はジャパニだよ!」
あぁ、私がどこの国の人間かが気になったのか。
それにしても、ネパリだなんて…笑
そうそう、これはケニー先生に教えてもらった事。
「ネパリ」はヒンディー語。
英語では「ネパリーズ」と言うらしい。
ヒマラヤ日記の添削をお願いしていた時に、私が書いた「ネパリ」の表記を直そうとしたケニー。
私は「でもネパール人が”ネパリ”と言っていたよ。ネパリウェイ、ネパリティー、ネパリミュージックって」と伝えた。
そうしたら、ネパリはヒンディー語だよと教えてくれた。
ちなみに、ジャパニーズはヒンディー語で「ジャパニ」だとも教えてくれた。
そういえば、私の事を皆「ジャパニ」と呼んでいたっけ。
彼女たちに別れを告げて、街の方へ戻る。
この街には、映画館もあるみたいだ。
インド映画って、凄く長いらしい。休憩を挟みながら3時間くらい?
興味はあるけど…一人だと入りにくいね。
インド料理屋で、白昼堂々と「手」を使ってみる
朝ご飯を食べ損ねたので、ランチを食べよう。
ローカルで賑わう食堂の店員が、ハローと挨拶をしてきたので近寄ってみる。
だけどメニュー表記がヒンディー語。
しかも店員もあまり英語が話せない。
本当にこの町の人って…営利目的で声をかけたのではなく、純粋にただの挨拶だったんだ。
裏のレストランに連れていかれる。
こんな対応って、予想外。
例えばバラナシの人だったら、言葉が通じなくてもジェスチャーや単語だけで何かしら提供してくれる。
だけどこの町の人は、「何か食べたいのに言葉が通じない可哀そうな外国人」を、親切にレストランまで導いてくれるんだね。
正直、私はこの食堂でローカルに混ざって、「よくわからず適当に注文した謎の食べ物」を食べてみるという事をしたかったのだけど。
あぁ、だけどなんて優しいんだブージの住民。
店員に相談をして、「パニールティッカマサラ」を注文。
カレー、ライス、ナン、ラッシー、コーラで290ルピー(522円)。
ここには、ローカルしかいない。
これは…あれに挑戦するチャンスじゃないか。
そう、ジャイサルメールの砂漠で体験した「カレーとライスを手で食べる」という食べ方。
絶妙な混ざり具合と、手にむしゃぶりついて食べるワイルドな食べ方に、とても美味しさを感じたのだ。
だけど、恥ずかしいな。
外国人が手で食べてたら変じゃないかな。
勇気が出ない私は、最初の一口目をスプーンで食べる。
だけど…期待と違う。
いや、きっとカレー自体はおいしいのだけど。
だけど何で恥ずかしいのかが不思議に思えてきた。
それって、日本に来た外国人が、
「箸でラーメン食べるの恥ずかしいから、スプーンとフォークでパスタの様にして食べたい」
なんて思うようなものじゃないのかな。
…いや、ちょっと違うか。
勇気を出して、右手を出す。
そうそう。
カレーの器とライスの器の他に、インドでは空の平皿が提供される。
これって使い道なくない?と、今までは邪魔そうに端に寄せていたのだけど。
一緒に砂漠に行ったドイツ人デニスと食事をした時に、彼がカレーとライスを適量ずつお皿に乗せて食べているのを見て、使い道を知った。
そうやって、お皿の上で少しずつ混ぜ合わせて食べるのだ。
旅再開の序盤で、それが知れてよかった。
という事で、プレートの上に乗せたカレーとライスを右手で食べる。
周りの客が私に注目している様な気がして…
店員も「なにこの外国人」という視線を向けている様な気がして…。
いや、そんなのは自意識過剰なのだけど。
でもそれくらい恥ずかしく、だけど美味しすぎて手を止める事ができなかった。
そもそもインド人、カレーはチャパティで食べる人が多いから、ライスとの食べ方がこれで正しいのかはよくわからない。
何か変じゃないかな…この食べ方でいいのかな…。
だけど、結局最後まで手で食べた。
食べ終わった頃に、器に入ったお湯が提供される。
そのお湯で、ベトベトの手を清める。
凄く有難いシステムだ。
そして観光再開。
プラグ・マハル -Prag Mahal-
入場料80ルピー(144円)
「マハル」はペルシャ語で宮殿の意味。
(え?インドでペルシャ語…?)
そういえば、かの有名な「タージ・マハル」も「マハル」と名乗っているね。
入り口で、たくさんの子供たちが列を成していたので少し待つ。
近隣の学校の生徒が遠足で来ているのか、それとも遠方の生徒が修学旅行で来ているのか。
ここで、またインド人カップルに声を掛けられる。
男性に「プラグマハルについてどれだけ知っているか」と聞かれ、正直に「あまり知らない(苦笑)」と答える。
すると、あれこれと説明をしてくれた。
彼がこのカッチ地方の王だという。
そして彼の趣味は狩猟。
狩猟の様子の写真も飾られているし、壁にその首が飾られていたりする。
あぁ、王という者はみな狩猟好きなのかしら。
部屋を出て戻ろうとすると、親切な警備員が「上に行きなさい」と促す。
そっか、上に行けるんだね。
上に行ってみると、さらに時計台の上まで登れる様になっていた。
登り切ると、そこからはブージの街並みが一望できた。
「チセ!」と声を掛けられて振り返ると、先ほどのカップルがいた。
街並みを背景に、彼女と2ショット写真を何枚か撮る。
そういえば、インドでカップルに声を掛けられて写真を撮るとき、絶対に彼女としか撮らない。
彼氏に写真を求められた事って、一度もない。
それって、やっぱり彼女に気を使っているからなのだろうか。
めちゃくちゃ優しいね、インド人彼氏って。
だけどインドの結婚システムって、色々と問題を抱えているんだ。
グルガオンの学校で、インド文化についてのエッセイを読んだから、少しだけ知っている。
長くなるし話が反れるから、ここでは省略するけれど。
景色を堪能して、すぐ隣のマハルに行く。
アーイナー・マハル -Aina Mahal-
入場料70ルピー(126円)
ここでは、インドの学生の行列に混ざって一緒に見物をする。
何やら煌びやかな世界だ。
男の子たちが、無邪気な笑顔でこちらを見てくる。
女の子たちが、はにかみながらこちらを見てくる。
難しい展示物なんかよりも、珍しい異色のアジアンの方が興味深い様だ。
エキゾチックで妖艶な彼女たちに上目遣いで見つめられると、こちらが照れてしまうよ。
私より十数年分も幼い子たちなのに。
・・・
ブージの市内観光、楽しかったな。
特別に素晴らしいものを見たわけではないのだけど、雰囲気が穏やかでとても歩きやすい。
だけど目ぼしいものは見尽くしてしまった。
明日からの自由時間は、何をしようかな。