-Qadarif to Gonder-
今日は、スーダンからエチオピアへ国境越えの日。
昨日まで滞在していたカッサラ(Kassala)から1日で行く場合が多いみたいなんだけど、到着時間が遅くなるし、慌ただしい旅路になりそう。
だから昨日のうちに、中継地点のガダーレフ(Qadarif)まで来ているのだ。
だって、今日は「大晦日」だもん。
ゆっくり過ごしたいじゃない。
2019年末日までスーダンで、2020年はエチオピアで迎えるのだ。
「大晦日に国境越えをする」なんて、今後の人生で二度とないだろうな。
▼前回のお話し▼
ハネムーナーに人気の「タカ山」へ&エチオピア越境へ向けてガダーレフへ
ガダーレフから国境の町ガラバットへ|ミニバス
まずはガダーレフ(Qadarif)から、スーダン側の国境の町ガラバット(Gallabat)へバスで向かう。
バス乗り場は、滞在していた宿ALMOTWAKIL HOTELから離れているため、トゥクトゥクに乗りたい。
何台かのトゥクトゥクに声をかけるも、全員「ノーイングリッシュ」。
話も聞いてくれない。
トゥクトゥクが溜まっている場所に行くも、誰も取り合ってくれない。
困った…ここまで英語が通じないなんて。
困り果ててトゥクトゥクのエリアから去ろうとしたら、誰かに呼び止められる。
「どうしたの?」と聞いてくれたので、「ガラバットに行くために、バス乗り場に行きたい」と言うも、伝わらない。
そうしたら、近くに女子学生の集団が現れる。
誰かが彼女たちに向かって、「英語喋れる人いる!?」みたいな事をアラビア語で言う。
すると、一人の女の子が指名されるのだけど、彼女は「え~??わたし~???」みたいな感じで照れている。
ダメ元で、彼女に「バスでガラバットに行きたいのだけど…」と言うと、何故か彼女達は大盛り上がり。
「ガラバット~♪ガラバット~♪ガラバット~♪」
え??なになに??どうした急に!
彼女は結局、私に何も言わなかったので、伝わったのか否かは不明なのだけど。
騒ぎを聞きつけて、英語を流暢に話す神様の様な男性が現れた!
もう、ここまで英語が伝わらないとね…「英語が伝わる人」というのは、大変大変ありがたい存在。
神様に、「バスでガラバットに行きたい」旨を伝えると、すぐにトゥクトゥク運転手に伝えてくれた。
トゥクトゥク料金も、神様に教えてもらう。
50ポンド(約66円)という事だ。
昨日ここまで来たのと同じ距離なのに、昨日の半額だ。
神様のおかげかしら。
神様にお礼を言って、トゥクトゥクに乗る。
無事にトゥクトゥクに乗れるまで、30分もかかった。
スーダンでは、日本では絶対に違法になるであろう、古い車がよく走っているのだけど。
ここまでの車は、初めて見たかも。
トゥクトゥクは、ガタガタの路地を行く。
近道なのかな?
走りやすい大通りを行った方が、絶対早いと思うのに。
と思ったら、彼の私用のために寄り道をしていただけだった。
2回もトゥクトゥクを停めて、待たされる。
お~い!
私は、なるべく早く行きたいんだけど!?
バス乗り場まで、15分ほどかかった。
ガラバット行きのバスはすぐに見つける事ができた。
運賃は150ポンド(約198円)。
だけど、只今の乗客は私1人。
これは、満席になるまで待たなければいけないやつだ。
もう少し早く着いていれば、前の便に乗れたのにな。
という事で、付近を散策。
車内食にお菓子でも買えればと思ったのだけど、見つけられなかったので水だけ購入。
一番後ろの窓側の席に、バックパックごと座る。
背中にバックパック、前にサブバッグ。
狭い…。
窓をトントンとノックされたので見てみると、物売りのおじちゃんがいた。
おじちゃんがクッキーを持っていたので、「これは是非欲しい!」と思って窓に手をかけるも、固くて全く開かない。
そうこうしている内に、バスは発車してしまった。
お互い、「あらまぁ!」みたいな表情になって、笑顔で「バイバイ♪」と手を振り合う。
お互いの目的は達成できなかったのに、なんだかホッコリな体験。
バスが発車したのは、8時少し過ぎ。
国境には、12時頃に着いた。
約4時間。順調だ。
スーダンとエチオピアの国境|ガラバット
バスを降りる。
煩い人が、「チャイナ!イミグレーションオフィス(出入国審査場)はこっちだ!」と付きまとってくるのを無視して、スーダン側の出国審査を受けに行く。
彼の態度があまりにも横暴だったので、「私はチャイニーズじゃないから」と彼を睨みつける。
そうしたら、「あ、ジャパンだったの?ごめんね」と、しおらしく少し控えめになりながらも付いてくる。
間違えた事に怒ったんじゃないよ。
出会い頭に、いきなり人を国名で呼びつける輩に、私は腹が立つのだよ。
中国!中国!ってさ。
せめて「チャイニーズ(中国人)」だろうに。
それにさ、チャイナって呼ばれて、私はチャイナではないのだから、返事をする必要なんてないじゃない。
私の名前は「チセ」なのに、日本の代表名だからって「ハナコ!!!」っていきなり呼ばれても、「私の事かしら?なぁに?」なんて一々振り向かないのと一緒だよ。
スーダン側の出国審査官も、横暴な男だった。
私の顔を見るなり、
「チャイナ!!!パスポートを出せ!!!!」だって。
なんだその態度は。
国の代表のはずの政府関係者なのに、正しい態度と言葉使いができないなんて。
だんだんと機嫌が悪くなってきている私は、「チャイナじゃないから」とぶっきらぼうに答える。
パスポートを見ながら、「じゃあどこから来たんだ!」と怒鳴るもんだから、「ここに書いてあるでしょう!?」とパスポートを指さす。
「名前を言え!」と怒鳴るから、またまた「ここに書いてあるでしょう!?」とパスポートを指さす。
何で、出国審査官なのに、英語表記のパスポートが読めないの?
名前や国名なんて、大した英語じゃないでしょう??
読めないなら、パスポート確認する必要なくない???
私の態度が悪かったせいもあって、パスポートを「バンッ!!!」っと乱暴に机に置いて返される。
腹立つなー。
イミグレーションオフィスを出ると、先ほどの男が待ち構えていた。
げ、まだいるよ。
「次はあっちだよ!」と誘導してくる。
「おっけ~ありがとう。自分で行くから大丈夫だよ~バイバ~イ」と伝えるも、ずっと付いてくる。
「あなたは、政府関係者なの!?」と聞いてみたら、ぼそっと「両替しないか…?」とつぶやく。
両替商だったのね。
「必要ありません」と言うと、男は諦めて去っていった。
両替は必要なのだけど、この男と取引はしたくない。
次は、何やら旅行者用の手続きがあるみたい。
また、オフィスを訪れる。
ここでの対応は、普通だった。
いや、普通より少し悪めだけど、相対評価で普通に見えてしまった。
両替は、スーダン側の方がいいとの事前情報があったので、両替商を探す。
「鬱陶しい度」が中くらいの男性を見つけたので、彼が紹介してくれた両替商と取引。
エジプトポンドからスーダンポンドに替えた時は、闇両替で1スーダンポンドが1.32円の価値になった。
1スーダンポンドが 1.32円以上の価値のエチオピアブルになったらな~というのが目標。
公式レートだと、1スーダンポンドは2.4円なのだけど、「スーダンの通貨の価値は低いんだよ!それはあり得ない!」と言われてしまった。
交渉の結果、1スーダンポンドが 0.4エチオピアブルになった。
1エチオピアブルを、3.3円で買ったという事。
公式レートだと、1エチオピアブルは、3.4円だから、少し安いか。
計算難しい…。
私の15,555スーダンポンド(約20,532円)は、6,200ブル(約20,460円)になった。
たぶん。
今後は、こんなに大金を両替する事はないと思うから…こんなに考える必要もない。
…と信じたい。
次は、エチオピア側の出国審査を受ける。
エチオピア側の出国審査官は、穏やかな人だった。
そして、荷物チェックを受けてゲートの警備員?のチェックを受けて終了。
ゲートの警備員?に、「Welcome to Sudan(スーダンへようこそ!)は、ここで終わりだよ。この先は、エチオピアだ!気を付けてね!」と言われる。
ん??それは、どういう意味だろうか。
ただ、ここでスーダンは終わりで、ここからはエチオピアの領土だと教えてくれただけなのか。
それとも、「ウェルカム!」なホスピタリティ溢れるスーダンと、この先のエチオピアはまるで違う国だからねという、注意喚起なのか。
スーダン人は、とても穏やかでおもてなし精神の溢れる人たちだった。
対するエチオピア人は、世界三大うざい国(インド、エジプト、モロッコ)を越える、世界一うざい国と言っている人もいる。
だけど、この国境の政府関係者の対応は、まるで逆だったな。
エチオピアの政府の方が、きちんと対応してくれた。
だけど、カイロでビザを取ったときもそうだった。
スーダン大使館はカオスで、手続きも煩雑だったのに対して、エチオピア大使館の人は、真摯に対応してくれたんだっけ。
国民と政府は、別物なんだね。
そうだよね、スーダン政府って、未だに南スーダンと揉めているような人たちなんだもんね。
こんな態度だったら、和解なんて永久にできないんじゃないのかな。
ガラバットからゴンダールへ|ミニバス
「Welcome to Sudan」にさようならをして、「エチオピア」の地に足を踏み入れる。
すると間もなく、1台のトゥクトゥクが目の前に停まる。
どこに行くのかと聞かれたので、ゴンダール(Gonder)と答えたら、乗れよと言われる。
歩ける距離なら歩きたいと思って聞いてみたら、2キロくらいだと。
歩ける距離だけど、なるべく早くゴンダールに着きたい気持ちが勝ったので、素直にトゥクトゥクに乗り込む。
運賃は50ブル(約165円)。
確かに、歩くには少し遠いと思う場所に、ミニバス乗り場があった。
時刻は、スーダン時間の13時、エチオピア時間の14時だ。
そう、エジプトとスーダンは同じ時間だったけれど、スーダンとエチオピアの間には1時間の時差がある。
1時間分、日本に近づいた。
国境に到着してからここまで、約1時間といったところか。
ミニバスの料金は、300ブル(約990円)。
助手席に乗せてもらった。
スーダンや、その前にいたエジプトは、イスラム教徒の国。
ここエチオピアは、キリスト教徒の国。
人々の服装が、まるで違う。
エジプト、スーダンの人は、信仰度によって程度の差こそあれ、宗教的な身なりだった。
女性は全員、頭にスカーフを巻いているか、目以外の全ての部分を覆っているか。
服装も、身体のラインが見えない、ゆったりとした布をまとっていた。
男性も、宗教的な真っ白のゆったりとした服に、人によっては宗教的な帽子もかぶっていた。
ここエチオピアでは、全員Tシャツやタンクトップにジーパンというラフな格好。
しかも体のラインが強調されるような、ぴちぴちの服を着ているのだ。
お胸の豊満さに、私でも目を奪われてしまうくらいだよ。
さすがキリスト教徒の国という事もあって、十字架のネックレスや、十字架のプリントTシャツを身に着けている人も多い。
国境をまたいだだけで、こんなに違うなんて。
砂漠気候だったスーダンに対して、エチオピアは緑あふれる場所だ。
エジプトも砂漠気候や半砂漠気候だったから、緑なんて久しぶりだ。
美しい、壮大な渓谷を通るのだけど、猛スピードで走る車内からは、うまく写真には撮れなくて残念。
バスは度々、検問にひっかかる。
この検問、7~8回はあったんじゃないかな?数えてないけど。
エジプトやスーダンでは、外国人である私だけパスポートの提出を求められたり荷物チェックをされたりしたのだけど。
この道の兵士は、私には興味がない様で。
念入りに、車内のチェックなどを行う。
座席を確認したり、ダッシュボードの中まで確認。
私のパスポートチェックは、7~8回の内2回だけだった。
検問に加えて、謎の停車時間もあったりして、結局着いたのは19:30頃。
せっかく、早く着く為に経由地のガダーレフで1泊したのにな。
検問が多すぎて、ここまで5時間もかかってしまった。
いつもそうなのか、今日は大晦日だから特別警戒しているのか。
それとも、最近、首都のアディスアベバで抗議デモの呼びかけがあったからかな。
ゴンダールの宿|ミケル(Hotel Michael)
目星を付けている宿のミケル(Hotel Michael)を目指して歩く。
なんか凄く色々な人が声をかけてくるけれど…とりあえず、全部ムシ。
ミケルの近くに着くも、どの建物なのかがわからない。
「何探してるの?手伝うよ!」と声をかけられるのだけど、自分から声をかけた人しか信用したくない私は、別の住民に聞いてみる。
すると、声をかけてきた男が「ミケルならここだよ!僕はここの従業員さ!」と言う。
本当かなー。
「でも、ホテル名の記載がないじゃない!」と言うと、「レセプションは、あっちの建物にあるからさ!中に入れば、ホテル名の記載があるよ!」と言うので、半信半疑で付いて行ってみる。
すると確かに、中の事務所の入り口にホテル名の記載があった。
疑って、ちょっと申し訳なかったかな…と思ったら、「色々な悪い人に声をかけられて、疑い深くなってしまうのは仕方がないよ!」とフォローされた。
このホテルは、スタッフが親切だという記事を読んで来たので、前評判通りか。
事務所にいた別の男に、部屋を案内してもらう。
今夜は4人部屋しかないらしく、今日はこの4人部屋に泊まって、明日は部屋を移るのだと。
4人部屋も1人部屋の料金と同額の400ブル(約1320円)でいいよ、と。
スーダンの物価感覚が抜けていない私は、せめて明日以降の1人部屋の料金だけでも下げてもらえないかと交渉したのだけど、これがミニマムだと言う。
こんな時間に他に候補もないので、ここにしようか。
部屋は清潔で、Wi-Fiも使えるし、ホットシャワーも出るという。
ホットシャワーはありがたい!!!
「今日は大晦日だから、スペシャルディナーをプレゼントするよ!」と言われる。
「このホテルで食べるの?」と聞いたら、「別のホテルだ」と。
う~ん、エチオピアの大晦日のディナーは気になるけど。
だけど、このホテル内ならまだしも、出会って数分の男と深夜に別のホテルに行くのは…ちょっと賭けだよね。
しかもどうやら、皆でパーティーをしている会に混ぜてもらうなどではなく、2人きりみたいだ。
親切心はありがたいし、疑って申し訳ないのだけど、「やりたい事があるから」とお断りさせて頂く。
小さな売店で水とクッキーを買いたいなと思い外に出る。
すると、先ほどのホテルの男に「どこに行くの!?」と呼び止められる。
ディナーを断ってしまった手前、クッキーを買うとは言えず「水を買いに行く」とだけ答える。
すると、「水ならホテルで買えるよ!」と、鍵の閉まっているバーフロア?の様な部屋に案内される。
冷蔵庫にコーラもあったから、コーラも購入。
すると、ビールを出してきて栓を抜こうとするので、慌てて止める。
「私は、アルコールは飲みません!」
「え??1度も飲んだことないの!?」
「いや、飲んだことはあるけど、嫌いなんです」
でも今日は大晦日だよとゴリ押しされるのだけど、何とか阻止をする。
私は、女一人旅中のマイルールとして、お酒は一滴も飲まないと決めているのだ。
異国の地で、一瞬でも正常な判断力を失うのが怖いから。
だけど「嫌い」で付き通す。
彼は、不満そうだ。
これは、彼が下心で私にアルコールを飲ませたがっているのか、それとも純粋なる親切心なのか。
エジプト、スーダンというイスラム教徒の国を越えて来た旅人は、キリスト教徒の国であるエチオピアでようやくビールが飲める事に感動するのだ。
そういう旅心を汲んでの親切心だったら、申し訳ないんだけどさ。
お酒を断ると、「エチオピアの伝統的な家々を見せてあげるよ!」と誘われる。
いや~、こんな時間に2人で観光は、「近所のホテルでディナー」よりもナシだわー。
「エチオピアでは普通の事だよ!なんたって、今日は大晦日なんだよ!」とゴリ押しされる。
ないない。
小さいゲストハウスのオーナーと、少し話して打ち解けてから出かけることはあったけど。
こんなホテルタイプの宿の、いちスタッフをすぐに信用するのはあり得ない。
ただの親切心の可能性は、もちろんあるけれど。
だけど「エチオピアの大晦日について知りたい!」という欲を満たすために、賭けに出るわけにはいかない。
少ししつこいので、ちょっとぞんざいに断って、逃げる様に部屋に戻る。
はぁ、クッキー買えなかったな。
今日は朝から移動移動で、水しか身体に入れていないのに。
大晦日だというのにさ、今日の唯一の食事は、この500mlのコーラだけだ。
空腹に炭酸飲料はよくないなとは思いつつ、貴重な糖分の接種のために、ゆっくりと慎重に飲み干す。
エチオピア1日目。
この先の旅は、まだまだこんなもんじゃない。
…と、すぐに思い知る事になるのだけれど。
この日の私は、まだ何も知らないのだ。
▼次回のお話し▼
世界一うざい国エチオピア|2日目にして、嫌いになる