ゴンダール(エチオピア)-Gonder-
まるでイスラム教のアザーンかの様に、もしくはヒンドゥー教のプジャーの儀式かの様に。
外では一晩中、馴染みのない宗教的な音楽が鳴り響いていた。
いつもそうなのか、それとも年越しの特別なものなのか。
どちらにしても、煩くて眠れやしない。
朝、久々にホットシャワーを浴びる。
3日ぶりに頭を洗い、8日ぶりに身体を洗う。
それだけで、とても幸せな気分になる。
「蛇口を捻れば、いつでもホットシャワーが出る」というのは、日本にいれば当たり前だけれど。
これって、とてもありがたい事なんだよね。
▼前回のお話し▼
【陸路国境越え】スーダンからエチオピアへ|キリスト教徒の国に来た
もくじ
ゴンダールの町と朝食と
4人部屋の窓からは、ホテルの前の景色がよく見えた。
ゴンダール、結構田舎なんだな。
朝食を取ろうと、外に出る。
ロータリーまで出ると、少し都会的。
このロータリーの近くのカフェで、朝食を取る。
マンゴージュースと、オムレツを頼んで65ブル(約214円)。
こんな西洋的な食事が取れるなんて、幸せだ。
朝のホットシャワーに引き続き、幸せをかみしめる。
3食ローカルフードはね、やはり疲れるのだ。
(と言いつつ、いつも1日1~2食だけれど)
インド、ネパール旅行中も、「朝はカフェで卵料理やトーストを食べて、夜にローカル料理を食べる」というのが、一番幸せな食生活だった。
エチオピア、男どもがかなり鬱陶しいけれど、設備が整っているのは嬉しいポイントだ。
ゴンダールの宿「ミケル」の鬱陶しいスタッフ
一旦、宿に戻る。
昨夜は空室がなくて4人部屋に泊まったのだけど、今日は1人部屋に移動しなければならない。
10時と言われていたので、10時にオフィスを訪ねる。
対応してくれたのは、昨日私を執拗に誘って来た男。
一緒にルームクリーニングの様子を見に行くも、まだ部屋は用意できていなかった。
事務所から部屋のフロアへ行く途中、話しかけられる。
男「朝食は、もう食べた?」
私「食べました!」
(よかった。食べてないと言ったら、誘われるところだったよ。)
男「昨夜は、どんな夜だったの?」
私「よく眠れました」
男「そうだろうね、昨夜は僕の誘いを断ったんだからね」
(嫌味か…??)
男「今日は、観光に行こうか!いろいろ連れていってあげるよ!」
私「いや~、結構です…」
男「なんで??じゃあ、今日のプランを教えてよ」
私「プランは、特にないですねー。今日はただただリラックスですね」
男「じゃあ、そのリラックスを手伝ってあげるよ!」
(リラックスを手伝うって、なんだ??マッサージでも、してくれると言うのかい??)
私「いや~、結構です…」(再び)
(男が部屋に入ってくる。)
(私の荷物を、運ぶ目的だと言うのだけど…。)
私「まだ、次の部屋は準備できていないんですよね!?」
男「そうだけど、事務所に荷物を置いて、事務所にいればいいよ。コーヒー出すよ!」
私「いやいや、私は部屋が必要なんです!次の部屋の準備ができてから移動します!」
(この男と一緒に過ごすなんて、絶対イヤだ!!!)
男「そうか、わかったよ。このあとは、どうするの?コーヒー飲もうよ!」
私「このあとは、SIMカードを買いに行きたいんです。」
(部屋で過ごしたいと言ったのに、矛盾してるな私)
男「買うの手伝おうか?場所、わからないでしょ?」
私「知っているので、大丈夫です。一人で出来ますので。」
男「シミエン国立公園のトレッキングは行く?ホテルの系列の会社で申し込めるよ」
私「それは、ちょっと考えてみます。」
(行く予定だけれど、どこで申し込むかは調べてから決めたい)
私「もう出かけなければならないんで。それじゃ。」
扉「バタン…」
ちょっとぞんざいにしてしまったかな~と思いつつ、しつこいので部屋を出て行ってもらう。
彼に下心があるかないかなんて、どうでもいい。
ただの親切心かもしれないなんて、どうでもいい。
私は、初対面でグイグイ来る人間は苦手なのだ。
あの男に呼び止められませんようにと願いながら、事務所の前を迅速に通り抜ける。
ゴンダールでSIMカードを入手|エチオピアの通信会社エチオテレコム
そして、今朝行ったロータリの目の前にある通信会社、エチオテレコム(Ethio Telecom)に行く。
郵便局が入っているビル。
エチオピアの通信は、このエチオテレコムの1社独占という事だ。
人々がたくさん座って待っている。
何待ちだろうか。
とりあえず、カウンターの近くに立ってみる。
カウンターのお姉さんは、別のお客さんの接客中だったにも関わらず、私に声をかけてくれた。
パスポートを預けて、少し待つ。
カウンターの中のカメラで、写真も撮影。
SIMカードの設定まで、手伝ってくれた。
スマートフォンにSIMカードを入れるも、中々電波を受信しない。
「何でだろうね~?」という感じで、あれこれ原因を探してくれる。
面倒くさい素振りも見せず、最終的に電波を受信するまで、付き合ってくれた。
カウンターのスタッフ(女性2名)は、とても親切だった。
この町で、こんな親切な人に出会える事がどんなに幸運なことなのか…それは徐々に思い知る事になるのだけど。
宿に戻る道すがら、通りすがりの男がいきなり私の腕をガシッと掴んで去っていく。
なにっ!?
セクハラのつもりなんだろうけど…なにそのセクハラ方法。
1時間で部屋の準備ができると言っていたので、1時間で戻ったのだけど、移動先の部屋はまだ準備できていなかった。
部屋は準備できていないと言うのに、なぜか私の部屋に付いて来ようとする。
適当にあしらって、何とか一人で部屋に逃げ戻る。
そして、無事に部屋移動も完了。
エチオピアの国民料理|噂のインジェラ初体験
夕方、夕食を取ろうと外に出る。
適当に見つけたレストランで、店員に聞いたオススメのメニューを注文する。
料金は、35ブル(約115円)。
オススメを聞いたら高いメニューを言われるかなと心配したのだけど、一番安いメニューを勧められた。
出てきたのは、かの有名な「インジェラ」だった。
これが、エチオピアの国民食のインジェラかー。
これは、「見た目も味もとても悪い」という事で、旅人の間で有名な食べ物。
本当は、もっと汚い表現で罵られているのだけどね。
「見た目は〇〇、味は〇〇」って。
人様の国の国民食に対して、ちょっとそこまでは言えないな~と思うので、伏せさせてもらうけれど。
この、灰色のクレープ生地みたいなものがインジェラ。
エチオピアでは、何を注文してもインジェラとセットで出てくるのだとか。
インジェラは、独特の酸味がある。
この酸味が、旅人に嫌われている原因なんだとか。
うん、確かに酸味が独特だ。
そこまで罵るほどひどくはないけれど…個性的な味。
つらいのは、このインジェラの中身の具。
インジェラは美味しくないけど、具は美味しい!
と言っている人が結構いるんだけどね。
私がよくわからず注文した料理は、中身も「インジェラ巻き」だった。
インジェラ in インジェラ。
これは、さすがにキツイ。
中身のインジェラは、辛めに味付けがしてあるので、外のインジェラとは違う味なのだけど。
だけど、辛いのが苦手な私には、少しつらい。
中の辛いインジェラを食べて、辛さを紛らわせる為に、外の酸っぱいインジェラを食べる。
せめて、中身が普通のお肉とかだったなら、まだ食べられたんだけど。
だけど、人様の国民食を注文しておいて、半分以上も残すのは失礼だ。
頑張って食べていたら、知らない男が勝手に私のテーブル席に座って来た。
なんか、色々話しかけてくる。
私は適当なリアクションしかしていないのに、少ししつこい。
すごく不快!という事もなかったのだけど、男を利用させてもらおう。
「男がしつこいから、食事の途中だけど店を出るわ!」
という素振りで、会計を済ませて足早に店を出る。
ごめんよ。
エチオピアが嫌いになった日
スーパーマーケットで、夕食の続き代わりにビスケットを買って帰る。
宿までの道のりは、街頭の少ない、少し薄暗い道。
正面から、男が近づいてくる。
話しかけられても無視をしようと、目を合わせない様に歩く。
すると、いきなり抱きついてきて、胸を触られる。
はぁぁぁぁ!???
「なになになに!?なんなんだよ!??」
と、今までの人生で出した事も無いようなドス声を出しながら、男を振り払う。
そうしたら、「なんでだよ~。ただ君と話したかっただけなのに~。」と、へらへらしながら去っていった。
油断していた。
今まで、うざい人にはたくさん会って来たけれど。
インドでも、エジプトでも、彼らは「声」は出すけど「手」は出してこなかったのに。
これが、世界三大うざい国のインド、エジプト、モロッコを差し置いての、世界一うざい国エチオピアの実態か。
まぁ、ギャーギャー騒ぐほどの被害でもないんだけどさ。
小娘じゃないんだし。
だけど、やっぱり不快なものは不快だ。
そういえば、今朝も「腕を掴まれる」という斬新なセクハラに会ったばかりだったな。
もっと、警戒するべきだった。
ゴンダールはまだエチオピアの1都市目で、今日はエチオピアの2日目だけれど…私、エチオピア嫌いだわ。
▼次回のお話し▼
エチオピアという国に敗北した日|アフリカ大陸縦断旅行、断念の危機が訪れる