-Cairo to Bahariyya Oasis-
今日は排気ガスと喧噪の街カイロを離れて、西方の砂漠地域へ行く。
エジプトを南下する場合は、カイロから真っすぐ南を目指すのが定番。
砂漠のツアーも人気だけれど、それもカイロから往復するのが定番。
だけど私は、砂漠のオアシスの町々を巡りながら南下してみようと思う。
(黒:定番コース/水色:砂漠のオアシスコース)
人気の黒砂漠や白砂漠を巡るツアーも、近郊の町バフレイヤ・オアシスで直接申し込む予定。
という事で、バスの出発時刻2時間前の6:30に宿を出る。
昨日バスチケットを買いに行ったムニーブ駅へ、片道5セント(約35円)の切符で向かう。
このメトロも、かなり乗りこなせる様になってきたけれど、今日で終わりだ。
ムニーブ駅(El Mouneeb)
地下鉄レッドライン終点/アッ・サーダート駅(Sadat)から約17分
カイロから、バフレイヤ・オアシスへ|長距離バス
ムニーブ駅から歩く事、約15分。
出発1時間前に、バス乗り場に着いた。
バス乗り場に既に停まっているのは、このバス。
アッパーエジプト(Upper Egypt)というバス会社らしい。
なんか聞いたことある。
それにしても、凄く寒い。
手元の温度計は16度を示しているのだけど、体感的にはは冬の始まりの季節のよう。
バックパックから、ウルトラライトダウンを引っ張りだして羽織る。
それでも尚、寒い。
ヒートテックと、フリースも来ているのに。
出発時刻の8:30より少し前に、乗車が開始された。
窓際の席と聞いていたのに、通路側の席で少し残念。
景色を見ながら移動するのが、陸路旅の醍醐味なのにな。
カイロを出発すると、間もなく何もない荒野の中に出る。
あぁ、のんびり楽しみたいのだけど、通路側の席から見える僅かな景色で我慢。
だけどカイロって、特別だったんだな。
少し離れるだけで、途端に何もなくなるんだ。
でもこちらの景色の方が、私は好きだ。
11:00頃、荒野の中にバスが停車する。
誰か降りるのかな?それとも休憩かな?
キョロキョロしていると、「休憩だから降りていいよ」と乗務員が教えてくれた。
凄い…。
何もない…。
レストランが一軒あるだけの、何もない荒野。
地平線の向こうまで、どこまでも歩いてゆけそうだなと思うのだけど。
そんな事をしたら、バスに置いて行かれている事にすら気づけないだろうな。
バスの様子を気にしながら、バスの近くにあった砂丘に登る。
すると、一面が砂の世界に覆われていた。
なんだこれは…。
もう砂漠ツアーなんて行かなくてもさ、このバス旅だけで十分満足なんですけど。
砂漠に見惚れていたら、バスのクラクションが突然けたましく鳴り響く。
どうやら、もう出発の時間の様だ。
慌ててバスに戻る。
バスは再び、荒野の中をひた走る。
途中で、お爺さんがバスを降りていった。
こんな何もないところで…?
彼は一体、どこへ行くのか。
すると間もなく、またおじさんがバスを降りていった。
通路側の私には見えないだけで、ぽつりぽつりと家があるのかもしれない。
バスは、私の予約している宿を通り過ぎて市街地に向かう予定。
あぁ、ここで途中下車したいなと思っていたら、なんと停車してくれた。
テレパシー!?
降りる様に促され、慌てて荷物をまとめて降りる。
バスがブ~ンと去っていくと、一人の男性が私の傍にいるのに気づく。
「ブッキングドットコムで予約してくれた方ですよね?」
なんと、宿のオーナーが迎えに来てくれたのだ。
私がこのバスに乗る事を、オーナーは知らないはずで。
また私がこの宿に泊まることを、バスの乗務員は知らないはずで。
どういう情報共有があったのかは不明だけれど…何故か情報は共有されていたみたい。
オーナーの車に乗って、すぐそこの宿に向かう。
バフレイヤ・オアシスの宿|デザート・サファリ・ホーム
デザート・サファリ・ホーム(Desert Safari Home)
サファリツアーが評判の宿という事だ。
シングルルームで$13。
中庭で、ウェルカムドリンクのマンゴージュースをもらう。
なんか色々話しかけてくるけど…いつツアーの勧誘をされるのかなと待ってみる。
この町では、ツアーは宿泊先の宿で申し込むのが暗黙の了解。
「何泊するの?」とか「この町の次の予定は?」なんて聞いてくるのに、一向にツアーの話をされないから、痺れを切らして私から尋ねる。
「明日、ツアーに参加する事は可能ですか?」
あっちから誘ってもらった方が、料金交渉とかしやすいんだけどな。
そうしたら、「可能だけど、何人参加するかがまだ不明だから、料金は人数が決まってから知らせるよ」との事。
いくらになるのか、少し不安。
ランチを食べるか聞かれて、あまりお腹は空いていないので少しだけ食べると伝える。
そうしたら、結構な量で出てきた。
美味しかったけど。
あぁ、砂漠の心地よい風が吹くテラスでの食事、なんて気分がいいんだろう。
食後は、少し外をお散歩。
オーナーに、「女性が一人で歩いていたら、色々な男に声をかけられるから気を付けてね」と忠告される。
カイロでもそんな感じだったと言うと、カイロより激しいのだと。
え、都会の方が激しいイメージだけど…。
この町では、女性が一人で出歩くことはないからだって。
なるほど。
田舎は田舎で、そういう事があるのか。
宿の外は、素朴で素敵な世界だった。
何もないんだけど、歩いているだけで朗らかな気持ちになる。
忠告されていたような男たちには出会わず、代わりにたくさんの子どもたちに会う。
わざわざ傍に寄ってきて、握手を求めてくる女の子もいた。
かわいい。
バフレイヤ・オアシスの夕日スポット|イングリッシュマウンテン
宿のオーナーが夕日スポットに連れていってくれると言うので、16:30頃に一緒に宿を出る。
車はすぐに、何もない茶色い世界に出る。
なにここ!素晴らしすぎるんだけど!
絶景ドライブを経て、渓谷の麓に車を停める。
ここからは自分で登っていく。
思いがけずのトレッキングの先は、風が吹き荒れる山の頂上。
ここは、イングリッシュマウンテンと言われている山。
第二次世界大戦時に、イギリス軍がここに基地(?)を構えていたのだとか。
これは、イギリス軍の家の跡。
夕日を見に来たんだけど、普通に眼下の光景が素晴らしすぎる。
何もない世界と、その世界の中にあるバフレイヤ・オアシスの町。
夕日も、もちろん素晴らしくて。
なんかさー、明日砂漠ツアー行かなくてもいいんじゃないかな?
もうこれだけで、大満足なんだけど。
明日のツアーは、これ以上に素晴らしいって事??
陽が沈んだので、またギリギリ道と呼べるか呼べないかくらいの道を通って下に降りる。
スタスタと進むオーナーは、ベドウィンの男。
ベドウィンは、むかし遊牧生活を営んでいた砂漠の民。
なんだかカッコいい響き。
渓谷の麓では、ベドウィンの男たちがプチキャンプをしていた。
私も、お茶とお菓子を頂く。
このお茶は、「ベドウィン・ウィスキー」と呼ばれているもので、ミントが入っている。
え!?ウィスキー!?って思ったんだけど、どうやら宗教的にお酒が飲めない彼らは、このお茶の事をジョークでそう呼んでいるんだとか。
シーシャーも勧められた。
吸い方がわからなくて、すぐにやめたけど。笑
シーシャは、水タバコみたいなもの。
エジプト人は、いたるところのカフェでこれを吸っている。大好物みたいだ。
宿に戻る。
寒空の中、外のテラス席でインターネットを使っていたら、小屋に入るように促される。
そこでは、ベドウィンの家族たちが焚火を囲んでくつろいでいた。
なにこれ!楽しすぎるでしょ!
ゲストハウスなんだけど…なんだかベドウィンの家庭にホームステイをしているような感覚にもなる。
カイロでは、「私、こんな事がしたかったんだっけ?」ってちょっと思っていたりしたんだけど。
なんだか、ようやく旅らしくなってきた。
そうそう、こういうのを求めていたんだわたし。
▼次回、絶景の西方砂漠へ!▼
エジプトの西方砂漠でキャンプ|これ以上の絶景が、この大陸にあるのだろうか