ケープタウン -Cape Town
今日は早起きをして、朝日を見に行くのだ。
そして午後からは、先日まで一緒に旅をしていたロシア人のおじさんアンドレィに会いに、ケープタウンの郊外へ行く。
片道70円の、激安ローカル列車に乗って。
素晴らしい朝で始まって、アフリカ旅史上最も憂鬱な気分で終わった一日。
▼前回のお話し▼
ケープタウンでの取り留めのない日々|グリーンポイントでプチ沈没
ケープタウンの海辺で見る朝日
朝5時半に起床。
こんなに早起きをしたのは、久々だ。
今日は、同じ宿に滞在中のトシさんとアイリちゃんと一緒に、朝日を見に行くのだ。
運転手は、アイリちゃん。
カッコいい…★
宿があるダウンタウンから、車で走ること約30分。
False Bayというビーチに到着。
空は既に、黄金色に輝き始めていた。
6:30頃、ゆっくりと太陽が昇ってくる。
ワタルさんのシルエットが絵になっていたので、こっそり激写。
海から昇る朝日って、何気に珍しい気がする…。
最後に見たのは2年前、インド最南端の町カニャクマリだったかな。
というか朝日自体…「毎日が旅行中」な状況に置かれても、あまり見る機会ってないよな。
夕日の方が、まだ見る機会が多い。
最後に朝日を見たのって、アフリカ旅1ヵ国目のエジプトの西方砂漠でだったっけ。
海から昇る朝日…と言いつつ、よく見たら海の向こうの山から昇っている様な気がするけれど。。
気のせいか。
帰りは渋滞に巻き込まれてしまい、1時間30分もかけてダウンタウンへ戻る。
アイリちゃんは他に行きたいところがあったみたいなのだけど…レンタカーを返す時間が迫ってしまったので断念。
こんなに混むなんてね。
残念だ。
トシさん、アイリちゃんとは、ここでお別れ。
彼等はこの後は観光へ、私とワタルさんは列車で郊外へ行く予定。
ダウンタウンで、ジブリ風の可愛いカフェを発見したので、立ち寄ってから行く事に。
店内の内装も可愛くて、どの席に座ろうか迷ってしまう。
素敵なカフェを発見してしまった。
もっと早く見つけていればよかった。
ケープタウンのローカル列車に乗ろう
私たちは、明日ケープタウンを去ってレソトに向かう。
最後にアンドレィに会いに行こう!という事で、ローカル列車に乗って郊外へ行く。
アンドレィは、ザンビアのリビングストンからここケープタウンまで、約2週間を一緒に旅した、ロシア人のおじさん。
今は、カウチサーフィンのホストの家で過ごしている。
カウチサーフィン
旅先で地元の人の家に泊めてもらいたい旅人と、自分の家に旅人を迎えたい地元民とを繋ぐマッチングサービス。
「異文化交流」が目的のため、金銭のやりとりは禁止。
無料で泊めてもらう代わりに、お土産を渡したり料理を振舞ったりする(…場合もある)。
鉄道駅まではウーバーで向かい、そこで何とか目的のホームを見つけて列車を待つ。
運賃は、なんと片道9ポンド(約67円)。
30分~1時間くらいの距離かな?(忘れたけど)
南アフリカのローカル列車は、治安が悪いという話もある。
ガイドブックには、「昼間でも安全とはいえないので、利用しないように」と書かれている。
そういう先入観もあってか、ホームの雰囲気が悪い気がする。
客層が、あまり裕福ではないであろう黒人たちで占められていて、そして何となく雑多な雰囲気の漂うホーム。
駅の外には西洋風のお洒落な街並みが広がっていて、2割だけど白人も暮らしている。
たぶん、その外と中との雰囲気のギャップで、少し怖く感じるんだと思う。
ヨーロッパから、いきなりアフリカに来てしまった!
そんな感じ。
いやいや、今までもっとド・ローカルな乗り物なんて、たくさん乗って来たよね。
ローカルの黒人でギュウギュウのバスやミニバンに詰め込まれても、「怖い」なんて思ったことは一度もなかったよね。
むしろ楽しかったよね。
「怖い」だなんて…気のせい、気のせい!
いやでも…私の旅人センサーが「ここはあまり安全ではない」と警報を鳴らしている。
旅人の第六感がさ。
そしてそれは、私よりも旅慣れているワタルさんも、同感の様だ。
間もなく、列車が来た。
この列車でいいのかな?
近くにいた女性に確認をしたら、この列車でいいって。
目的の駅に行くには、1度乗り換えが必要なのだけど、それもサポートしてくれると言う。
なんて優しいんだ。
ボックス席に、その女性と一緒に座る。
3人掛けの長いすに、4人で座るからギュウギュウだ。
いや…2人掛けだったかな??
駅に停まる度に乗客が増えてきて、しまいには椅子に足を掛けて窓から身を乗り出して乗る乗客まで現れる事態に。
それほどパンパンな列車。
スリに注意が必要だね。
乗り換えの駅に着いた。
東京の朝の満員電車なんて目じゃない程ギュウギュウの列車は、降りるのも一苦労。
雪崩の様な人の流れに、転倒しないように注意しながら、何とか外に辿り着く。
そこで、乗り換えの列車を待つ。
乗るときにサポートしてくれた女性が、一緒に降りてきてくれていた。
私たちが乗る予定の列車が来るのを、一緒に待ってくれている。
どうやら、彼女は先ほど乗って来た列車に乗り続けていれば目的の駅に着いたらしい。
私たちの為に、わざわざ一旦列車を降りてくれたのだ。
な、なんて優しいんだ…。
ケープタウンで家政婦をしている彼女は、今日は未払いの賃金を払う様に抗議に行ってきた帰りだという。
そんな大変なときに、見ず知らずの外国人を無償でサポートする彼女。
私には、絶対に真似できないよ。。
列車が遅延しているらしく、数十分待っても来る気配がない。
その間に、彼女が乗るべき列車が何度か通る。
乗っていっていいよ!と促すものの、最後まで見届けたいのだと言う。
そこまで心配するほど…やはり外国人には少々危険な乗り物らしい。
「帰りはミニバスで帰りなさい」と、忠告を受ける。
ホームで待ち続けること、約1時間。
全く来る気配がないので、諦めてミニバスで向かう事にした。
彼女が、ミニバス乗り場まで案内してくれた。
私たちが無事にバスに乗り込むのを確認して、ようやく彼女は去っていった。
凄くいい人だったな。。
アンドレィとの再会とお別れ
ミニバスを降りて、駅でアンドレィを待つ。
アンドレィは、カウチサーフィンのホストと一緒に現れた。
一緒にいたときは、私は彼にあんなにもイライラしていたのに。
まさか、わざわざ遠くまで会いに行くほどになるとはね。
近くのピザやさんでピザを食べながら、語り合う。
3人で「和気あいあいと団らん!」って、もしかしたら初めてじゃないかな??
私たちは暗くなる前にケープタウンに戻りたいので、早めに出たい。
なのにアンドレィが、「カウチサーフィンのホストの家まで、送ってほしい」とワタルさんに依頼。
「一人では、帰れないから」って。
いやいや、自分の滞在先への帰り方くらい、自分で把握してなさいよ。
…って、今までだったら、絶対にイライラしていたはず。
なのに今は、全くイライラしないから不思議。
「暗くなる前に帰りたいからムリだよ」と困惑するワタルさんと、「1人で帰るのは不安だ」とごねるアンドレィとのやり取りを、私は微笑ましく見守る。
うん、こんなに穏やかな気持ちで旅ができていたらよかったのに。
もったいない事をしたな。
ケープタウンのローカル列車は危険だった
ここから先は、ショッキングな表現を含みます。
人が亡くなりますので、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
結局カウチサーフィンのホストが最後まで付き添ってくれたので、アンドレィは無事に帰れることとなった。
私たちも、そろそろ帰らなくては。
カウチサーフィンのホストが、駅まで送ってくれる。
先ほどサポートしてくれた女性に「列車は危険だからミニバスで帰った方がいい」と忠告されていたので、「ミニバスで帰りたい」と申し出るも、「大丈夫だよ」と駅に連れていかれる。
本当に、大丈夫かな??
駅の陸橋を登る。
夕刻の駅は、人が増えて少々混雑をしていた。
私はカウチサーフィンのホストを見失わないように、彼の後ろに付いて歩く。
駅のホームへと続く陸橋を少し降りた頃、辺りが異様な空気に包まれる。
その直後、駅のホームから、おぞましい悲鳴が聞こえてくる。
その悲鳴は、最初は数人だったものの、徐々に伝染するかのようにホームいっぱいに広がっていく。
今までの人生で聞いたこともないような、とてもおぞましい悲鳴。
何かとても、恐ろしいことが起きているのだ。
いま、この瞬間に。
私はとっさに、「テロか!?」と思った。
そしてホームへ降りるのは危険と判断して、慌てて来た道を逃げ戻る。
パニックの波紋が、既に陸橋の上にも広がっていた。
群衆の中で、線路を見下ろすワタルさんを見つける。
私も半ばパニックになりながら、ワタルさんに駆け寄る。
ワタルさんが言った。
「たぶん、人が轢かれた」
見てはいけないと思いつつ、陸橋の上から線路を覗いてしまった。
人が…胴体の真ん中でスパッと半分に千切れた人が…落ちていた。
今まで1つであったはずの肉体が…綺麗に2つに分かれている。
2つは、まるで元々2つであったかの様に、互いに少し離れた場所にあった。
遅れて戻って来たカウチサーフィンのホストが言った。
「列車にぶら下がっていた人が、落ちたのだ」と。
その列車には、中に乗り切れなかった人々が、外にも大勢ぶら下がっていたのだ。
窓枠に足を掛けながら、屋根の上に手をかけてしがみ付いていたり。
列車と列車の間の連結部分にも、突起をうまく利用して多くの人がしがみ付いていた。
それは、日本ではもちろんあり得ないけれど、海外ではよく見る光景。
海外の珍光景として、TVやブログで面白おかしく紹介されたりもする。
あぁ、危ないな。
だけど彼等にとってはこれが日常で、慣れているから危なくはないのかな。
なんて思っていた。
だけど、違った。
やっぱり、危ないんだよ。
全然、面白い光景でも、受け入れるべき文化でも何でもない。
命に係わる、危ない行為なんだ。
半分になったあの彼は、まさか今日この瞬間に人生が終わるだなんて、思っていなかっただろう。
いつも通り…いつもの日常の1コマとして、列車に乗った。
それだけで、命を落としてしまったんだ。
あのとき、列車は出発したばかりで、速度はほとんど出ていなかった。
列車が出発した直後だったのだ。
私があの異様な空気を感じたのは。
あの異様な空気の正体…私は全く気付いていなかったのだけど、あれは「口笛」の音だったと、後で知った。
彼の転落にいち早く気づいた人が「口笛」を鳴らして、列車に止まるように知らせていたのだった。
その「口笛」を鳴らす人が徐々に増えて来た様子が、あの異様な空気を作っていた。
そして知らせが間に合わず、ゆっくりと徐々に轢かれゆく彼をリアルタイムで見た人々によって、あのおぞましい悲鳴が生まれ、そして伝染していったのだ。
あのときの異様な空気…人々のおぞましい悲鳴…そして千切れた肉体は、あれから数か月経った今でも、忘れる事ができない。
どの国にもよくいる、「扉のないバスの入り口に立って呼び込みをする人」を見るだけで、嫌悪感を感じる。
そんなところに立ったら、危ないよ…。
中でよろけた人がぶつかってきたら、どうするのさ??
ケープタウンの物乞いと強盗
その事故が起きたのは、私たちが乗るのとは反対車線の、下りの列車だった。
だから恐らく、ケープタウン行きの上りの列車は、乗車可能だったと思う。
だけど、こんな列車…もう乗る気になんてなれない。
例えいくらかかろうとも、タクシーで帰った方がマシだ。
カウチサーフィンのホストが、ミニバスを捕まえてくれた。
ミニバスを2台乗り継いで、1時間以上かけてケープタウンに戻る。
その間わたしたちは、ずっと無言だった。
気分が悪すぎて…無表情のまま、帰路の旅路をゆく。
ケープタウンでミニバスを降りると、宿があるグリーンポイントまでも、ミニバスで行けると教えてもらう。
1人の少年が、グリーンポイント行きのミニバス乗り場まで案内してくれる事となった。
その間、物乞いが近づいてきて、そして少年がすぐにお金をあげる。
物乞いは、無視し続けるとずっと付いてきて、その間に財布やら携帯やらの貴重品の場所を把握し始めるんだって。
そうなる前に、さっさと少額のお金を与えて追い払った方が、安全なんだとか。
そしてその少年は、先日強盗に遭ったばかりだという。
強盗にナイフでやられたという生々しい傷が、少年の首筋にザックリと残っていた。
(…と、ワタルさんが言っていた。私は見ていない。)
ケープタウン、移動はウーバーを利用したりなどの対策はしているけれど…そこまで危険な空気は感じていなかった。
油断してはいけない都市なんだなと、改めて思い知る。
無事に宿に着いて、ようやく少しホッとする。
だけど、まだまだ笑えないわたし。
事情を知らないトシさんとアイリちゃんに、少しそっけない態度を取ってしまったのが、申し訳なかった。
▼次回のお話し▼
【陸路国境越え】南アフリカの小国レソト王国へ!マセル国境を越えて(ケープタウン→マレアレア)