ヌンタラ(Nunthala)2194m
朝トイレに行くと、まるで栄養ドリンクを飲んだ後の様な黄色い尿が出た。
昨日も少し気になっていたけど、今日はより濃くなっている。
今のところ身体に異変は感じないけれど、何かの病気の潜伏期間中だったらどうしよう…。
そんな心配をしつつの朝7:50。
ジュンベシ(2700m)出発
ストゥーパ(仏塔)を横切りジュンベシの町を出る。
今日は昨日と同じく、所要時間6時間程の峠越えがあるのだけど、昨日より標高は低いし登りも急ではない。
昨日を乗り越えたのだから楽勝じゃないか~と思っていたのだけど、、、
確かに道は楽だけど、先日までの疲労感のおかげで足取りは軽くはない。
普段はお喋りなディネスも、黙々と歩いている。
はぁぁ、早めに着いたらストレッチでもしよう。
(と毎日思っているけど一度もしていない…)
だけど急な登りは初めだけで、あとはなだらかな道のり。
景色と吹き抜ける風を楽しむ余裕がある。
休憩中、ぼぉーっと山肌を眺めていると、何故かだんだんと抹茶チョコレートに見えてきた。
そうなると、もう抹茶の事で頭がいっぱい。
歩きながら、抹茶について考える。
抹茶チョコレートに抹茶アイス、抹茶ラテ…。
あぁ、帰国したら絶対に食べよう。抹茶。
ネパールで、白黒の牛を初めて見た!いつも黒いのばかり。
ヒマラヤを歩いていると、しばしばカラフルな旗が並んでいる光景に出会う。
ただのカラフルな旗かと思っていたのだけど、よく見たらシェルパ語と有難そうな絵が描かれていた。
これも、シェルパの神聖なものなんだろうね。
途中の丘で、ミュールたちが熱心に草を食べていた。
しかもたくさんいる!
ミュール
ラマ(ロバと馬のミックス)
彼らがどのような生活をしているのかは、このあと思い知る事になるのだけど。。
丘を登ったあたりで、急に雨が降ってくる。
毎日毎日、どこかの時間で雨。
雨季は終わったはずなのにな。
雨が激しすぎて、近くの小屋に避難。
すると、暗闇の中から子どもの声がする。
よく見ると、ベッドに5人の子どもたち。
同じ毛布に包まって、キャイキャイ楽しそうにしている。
なんだろう…この光景は。
無人の小屋だと思っていた場所は、民家だった。
だけど次々に避難してくる人々を、文句も言わずに受け入れるお姉ちゃん。(推定12歳)
子供たちと避難人の為に、焼きそばの様なものまで作ってあげている。
雨が収まってきたので、小屋を出る。
雨がまた強まってきたので、2度目の小屋避難。
先ほどの子どもたちの小屋よりも、さらに薄暗い小屋。
その小屋の中には、明るいおじいちゃんとおばあちゃん。
何て言っているかはわからないけど、とても大歓迎されているのが伝わってくる。
おじいちゃんに紅茶を勧められるのだけど、丁重にお断り。
とても失礼だけど、無人だったら廃屋にしか見えないこの小屋で使われている食器を、私は使えない。
おじいちゃんおばあちゃんとディネスが談笑をしている。
私は一人、ぼぉーっと焚火の明かりを見つめている。
実はこの時、私はディネスに対して大変苛立っていた。
しかもこの数十分前に、ちょっと強めに反論をしてしまったばかり。
内容は…途中まで書いてみたけれど、ただの愚痴でしかないので消去。
とにかく、この時は心が荒んでいた。
そしてそんな状態で土砂降りの雨の中を黙々と歩いていると、ネガティブな事ばかり考えてしまう。
焚火の明かりを見つめながら、思考を続ける。
現状の私についてから始まり、過去にあった悲しい出来事を逆時系列で遡る。
高校生くらいまで思考がタイムスリップしていた頃、おばあちゃんに紅茶を手渡される。
紅茶は先ほどおじいちゃんにお断りしたのだけど…。
だけど私の為に淹れてくれたであろうその紅茶。
笑顔で差し出すその手を拒む強さを、私は持ち合わせていない。
恐る恐る、一口だけ口を付けてみる。
…!
その紅茶は、おそらく何でもない普通の紅茶なのだけど、何故かとても美味しく感じた。
私の味覚を熟知しているかの様な、絶妙な砂糖加減。
甘さと苦さのバランスが丁度いい。
こんなに美味しい紅茶を飲むのはいつぶりだろうかと考える。
特に思いつかなかったので、もしかしたら人生で一番美味しい紅茶かもしれない。
ゆっくり大切に、最後まで飲み干した。
すると不思議な事に、ディネスに対する苛立ちの靄が晴れていく。
何を小さな事でイライラしていたのだろう。
こんなにも壮大な自然の中で、私は一体何をしているのか。
このトレッキングを通じて、もっと心のトレーニングをせねばいかんね。
ずっとこの小屋でぼぉーっとしていたいと思ったのだけど、雨が弱まってきたので行くことになった。
名残惜しいけど。
もう二度と来ない場所だけど。
ありがとう、おばあちゃん。
外に出ると、ミュールの列に出くわす。
実は、この雨宿り前にも出くわしていて、この後にも数チームに出くわしている。
ミュールは、一つの隊列につき20頭くらいいたんじゃないかな。
それぞれが重たい荷物を背中に乗せている。
彼らの足取りはとても遅く、一歩一歩をためらう様に歩いている。
一番後ろには、人間が1人付いている。
トロトロしているミュールたちに罵声を浴びせ、一番最後尾のミュールを頻繁に棒で殴っている。
だけどその子を殴ったって仕方がないんじゃないかな。
みんなちゃんと、前のミュールにぴったりとくっ付いて歩いているよ。
先頭の子が早く歩かない限り、列は早くは進まないでしょうに。
すると、1頭のミュールが列を離れてスタスタと別の道に入っていく。
間違えちゃったのか、わざと逃げ出したのかはわからないけれど。
(もちろん、早々に連れ戻されていた)
そのミュールの列を見ながら、まるで奴隷だなと思った。
だけど高山の物資は、そうやって届けられているんだね。
ヌンタラ(2194m)到着
そうして、予定より2時間遅い16:00頃、ヌンタラに到着。
今日は清潔で綺麗な宿に泊まりたいな。できればホットシャワーも浴びたい。
…なんて思っていたら、2日前に一緒の宿にいたオランダ人親子に出会った。
オランダ人親子のガイドが選んだ宿に、私たちも入る。
実は昨日の宿でも出会ったのだけど、彼らは違う宿に変更したみたい。
たぶん「シャワーなし」が気に入らなかったんだな。笑
久々に明かりの入る部屋。ここにしよう!
早速、1回200ルピー(200円)もする高級シャワーを浴びる。
久々のホットシャワー。
バケツじゃないやつ!蛇口からでるやつ!
バケツシャワー快適かもしれないなんて思ってたけど、やっぱり(ぬるくなければ)蛇口シャワーの方がいいね。
あぁ、それにしても日本ではホットシャワーなんて当然で、ありがたいと思った事なんてないよ。
しかも日本のシャワーは温かい室内。
ヒマラヤのシャワーは、浴び終わって身体拭くとき凍えるからね。
それに、湯舟という存在は天国だよね。
身体が芯から温まるもの。
日本の文明の快適さに感謝して、帰国したら絶対にお風呂に入って抹茶アイスを食べようと決めたのである。
ジュンベシ(Junbesi)2700m
↓(8時間)
ヌンタラ(Nunthala)2194m