ナーニング(Nurning)2492m
朝、宿のご主人に別れを告げる。
この宿は、ご主人の人柄も決め手の一つだった。
彼はネパール人というよりは(いえ、ネパール人なのだけど)、日本人に近いものを感じた。
言語が英語という点を除いては、まるで祖国のフレンドリーなおじちゃんと話しているかのような安心感。
「シャワーの温度はどうか」「ごはんは口に合うか」「昨夜はよく眠れたか」…色々と話しかけてくれる。
外の蛇口で洗濯をしようとしていたら、タライを出してくれた。
物干しも使わせてくれた。
会計を済ませると、「さようなら」と強くハグをしてくれた。
まるで、永年の友の旅立ちを見送るかのような熱いハグ。
たった一晩の仲なのにね。(←決して怪しい意味ではなく。)
うん、気合入った!
今日は「スタート地点まで徒歩でゆく旅」の最終日!
明日からは、ようやく「飛行機組」と合流するのだ。
ブプサ(2340m)出発
はるか遠くに、雪化粧の山が見える。
こんな風景が肉眼で望める地点まできたのか。
高山の動物、ヤクにも会えるようになってきた。
あの山々をいくつも越えて、ここまでやってきた。
1週間、いろいろな事があったな~。
そして私の行く先は、やはり壮大な雪化粧が望める世界。
景色に見とれていたら、遅れて出発したオランダ人親子マークとローメンが合流。
彼らのガイドのクマルが「オハヨウゴザイマ~ス!」と声をかけてくれる。
実はクマルは少~しだけ日本語が話せるという事が昨日発覚。
その前から、なんだか好意的な視線を感じるな~とは思っていたのだけど、そういう事かと納得。
少しだけ知っている日本語で、コミュニケーションを取ってみたかったんだね!
彼らと一緒にしばらく歩き、ランチを食べる。
ランチタイム中、クマルがルートの相談をしてきた。
(クマルは私のガイドじゃないのに。笑)
当初私は、ガイドブックに従ってチャウリカルカという町まで行く予定だった。
だけど昨晩クマルが「チャウリカルカは遠いからその手前のスルケがベターだよ」と提案。
その後2日間かけてナムチェ(各方面への起点の町)へ行くという計画は変わらないし、
マークとローメンもスルケに泊まるというので私も合わせる事にした。
しかし今日になって「チャウリカルカよりも先のナーニングまで行こう」と言ってきたのだ。
昨日はチャウリカルカすらダメと言っていたのに!笑
それはよいのだけど、私が2日間かけて歩こうと思っていた「ルクラ~ナムチェ間」を1日で行くという。
つまり明日には、もうはやナムチェ!
心の準備がっ…!
ナムチェは大きい街で、カフェやベーカリー、銀行なんかもある。楽しみっ!
しかし、明日ナムチェまで行くとなると、1日で標高を1,000mも上げる事になる。
高山病が心配な私は、この時一度断った。
だけどよくよく考えてみたら、富士登山でもこれくらいの標高差は歩いたし、
ナムチェの標高は3440mなので、そこまで怯えるほどでもない。
(高度順応の為にナムチェには2泊する予定だし)
という事で、「やっぱり私も同じ行程で行くね」と了承。
クマルは喜んでくれた。
というのも、なぜ私のガイドではないクマルがルートの提案をしてきたのかなと考えて。
ここまで何度も共に歩き、何度も宿泊と食事を共にしてきた私たち。
同じパーティーとまではいかないけれど、姉妹パーティーくらいの感じにはなっている。
きっと、行けるところまで一緒に行きたかったのかなと思って。
まさかのチャウリカルカよりも先の町に行くことになったので、また黙々と歩く。
すると、ルクラの町が見えてきた。
あれがルクラか~!とうとうここまで来たんだ。
起点の町ルクラへは遠回りになるし、急な山道を登ったところにあるので寄らずに直進。
途中、何度もミュール隊と遭遇。
後ろに付いて彼らのスローペースに合わせて歩いたり、チャンスを見つけて追い抜いたりする。
ついにディネスが、木の棒でミュールを叩く様になってしまった。
ミュールを追いやって、私を通すためなんだけど。
そんな事はしないで欲しい。。。
15:40頃、当初泊まりたかったチャウリカルカの町に到着。
本来ならここで終わりだったんだけどな。
むしろ手前の町の予定だったんだけどね。笑
ナーニング(2492m)に到着、第一幕終了
16:10、ようやく到着。約8時間30分の道のり。
長かった~。
だけど今日は一度も雨が降らなかったし、そこまで大変ではなかった。
この町は、既にルクラから出発したトレッカーが通るルート上にある。
私たちが、少しだけリードだね。
明日からは、トレッカーの人数がぐんと増えるのかな。
どうなんだろう。
とりあえず、本日で「スタート地点まで歩いて行こうの旅」が終了!
ここからはノーマルルート。
「ルクラ~カラ・パタールコース」の始まり始まり。
(あれ?ゴーキョが先じゃなかったっけ?…の理由はまた後日)
夕方、食事をする為にダイニングに降りる。
「寒い~!」と雑談のつもりで話しかけると、ディネスがキッチンの部屋で薪を焚いてくれた。
クマルがカットフルーツを出してくれて、ディネスが椅子を出してくれた。
至れり尽くせり!
ぼぉーっと、火を見つめる。
あれ、、、こんな事が前にもあったような。
そう、大雨の中逃げ込んだ小屋の中。
おばあちゃんに「人生で一番美味しい紅茶」を淹れてもらったんだっけ。
ヒマラヤトレッキング5日目|心が荒んだ私と人生で一番美味しい紅茶(ジュンベシ→ヌンタラ)
あの時よりも明るく清潔感のある場所だけれど。
またあの紅茶が飲みたくて、青年に淹れてくれる様頼んだ。
ディネスがたくさん食べる分、私は家計をやりくりする健気な貧乏妻の様な気分で、紅茶などの嗜好品を控えていた。
(1日2人で2,000ルピー/2,000円が目標。)
だけど今日は贅沢してもいいよね。
高地の紅茶は下界と比べて高額なんだけどね。
青年が淹れてくれた紅茶を飲んで思った。
「同じ味だ…」と。
おばあちゃん、ごめんなさい。
私はどうやら「シェルパ族の紅茶」が大好物の様です。
だけどあの時「荒んでいた私の心を癒してくれた感動体験」は一生忘れません。
第一幕、おわり。