バギオ→マニラ -Baguio to Manila-
クラスメートだった友人に見送られて、朝10時発のジョイバスに乗り込む。
何故か、涙のお別れ。
私って、こんなにフィリピン留学に思い入れがあったんだって、最後の最後で気づいた。
今から私は、一人で空港に行って、一人で飛行機に乗って、一人でアフリカ旅をスタートさせるんだ。
全く実感なんてなくて、なんならむしろ行きたくないんだけど。(←3度目のトリップブルーかしら…)
スチューデントだった私の、ツーリスト気分は今のところ0で。
1ヵ月で卒業って…やっぱり短いよな。
十分だろうって、最初は思っていたのに。
ジョイバスに乗って、バギオからマニラへ
ジョイバスは、想像以上に快適なバスだった。
2+1シートタイプで、私は隣席のない1人シートだった。
足を延ばすためのシートも出るし、一人一人に個別のモニターも付いているし。
スマートフォンの充電もできるし、なんとWi-Fiまで飛んでいる。
お水やパンも無償でふるまわれた。
バギオに来た時のバスは極寒で、上下に大きくバウンドするバスだった。
だけどこのジョイバスの空調は、パーカーを着ていれば適温で、そして揺れも少ない快適バスだった。
1ヵ月前は…深夜にあんなに大変な思いをして学校に行ったんだったな。
そこから始まる1ヵ月間の事なんて、全く知らないあの頃。
凄く懐かしい。
バスは順調に、6時間後の16時頃にニノイ・アキノ空港(マニラ空港)に到着。
ニノイ・アキノさんは、フィリピン人に大人気だった人物。
大統領になるべく、亡命先の国から帰国した時、それを阻止したかった当時の大統領に暗殺されたのが、この空港。
彼を偲んで、空港名をニノイ・アキノ空港にしたのだとか。
空港の姿を確認した私は、あぁ、ここから新たな旅が始まるんだなと実感する。
マニラは、じんわりと汗ばむ気候だった。
手元の温度計は、26度を示している。
涼しくて、時に肌寒い山間にあるバギオとは、全然違うところに来たみたい。
空港のシャトルバスでターミナル1へ移動
到着した空港はターミナル3で、私が乗る予定のクウェート航空はターミナル1。
シャトルバスが出ているようなので、タクシーの勧誘を振り切ってシャトルバス乗り場を探す。
私のフライト時間は22:20。
まだまだ時間はたっぷりあるからね。
人に聞きながら、一度空港内に入ってまた別の出口から外に出る。
あちこち行ったり来たりしながら、ようやくシャトルバスを発見。
ここに来るまで、30分かかった。
乗り込むと、近くに座っていた欧米人のおじいさんに話しかけられる。
このバスは30分毎に出ているはずなのに、もう40分も乗ったまま待っているのだとか。
私は乗って10分もしないうちに出発したのだけど、早くから乗っていた人は随分待たされていたみたい。
おじいさんは、「一体何分待たせるんだ」とか「こんな事ならタクシーにすればよかった」なんて文句を私に伝えてくる。
最初は、「40分も待ったんですか~結構待ちましたね~」なんて、適当に対応していたのだけど。
初めて会った人の愚痴を聞き続けられるほど心が広くない私は、鞄に顔をうずめて寝たふりをする。
だけど私が顔を上げたタイミングで、「何度も停車しすぎだよね」なんて、彼の不満は止まらない。
勘弁してよ~。
ターミナル間を移動するシャトルバスだから、空港の敷地内を走るのかと思っていたのだけど。
ターミナル3を出発したこのバスは、普通に公道を通ってターミナル1を目指す。
そして、ローカルたちは降りたいタイミングでバスを止めて降りていくから、おじいさんが苛立ちをつのらせているのだ。
バスは30分後に、ターミナル3に到着した。
おじいさんは、散々私に愚痴を吐いていたにも関わらず、私に挨拶もなしに真っ先にバスを降りていった。
急いでいたのね…急いでいる場合は、タクシーがベターだね。
空港内のジョリビで、最後の晩餐
ターミナル1は、ターミナル3とは違って小さいターミナルだった。
小さな売店が一つと、ジョリビが一件。
よし、少し早いけど、このジョリビで最後の晩餐をしよう。
ジョリビは、フィリピン人に大人気のファーストフード店。
私の友人お気に入りのチャンプバーガー(作るのに30分くらいかかるスペシャルなやつ)を頼んだんだけどないと言われ、ベーコンチーズバーガーにした。
ジョリビで1ヵ月を振り返って、また泣いてしまった。
涙腺緩すぎ。
私、こんなに泣き虫だったか。
フィリピン出国で揉める|まさかの搭乗拒否…!?
出国予定時刻の3時間半前に、クウェート航空のカウンターがオープンしていた。
ちょっと早いけど、チェックイン手続きをしよう。
カウンター前には、大行列ができていた。
開いたばかりだからかな?
列が落ち着いてから並ぼうかとも思ったけど、なんとなく早く動いた方がいい気がして、素直に行列に並ぶ。
すると係員が声を掛けてきた。
私のパスポートとEチケットを確認したその係員は、私に別の列に並ぶよう促す。
ビジネスクラス客用の、列の短いカウンターだった。
ラッキーだけど…なんでだろう??
それでも30分待った。
荷物の容量をオーバーした客が、その場でごそごそと荷物整理をするのが、ここでは普通の事の様だ。
彼らの荷物が規定内に収まるのを、待たなければいけないのだ。
そしてその待っている間、また別の係員が声を掛けてきた。
何で私だけこんなに声を掛けれられるんだろう…フィリピン人でもアラブ人でもないから、目立っているのかな。
その係員は、私のパスポートを持って何処かへ行ってしまった。
先ほど通過したパスポートチェックのカウンターで何やら話し合いが行われ、そして問題なくパスポートが帰って来た。
なんだったんだろう。
そして列は、私の番になった。
スタッフ 「ビザを持っていますか?」
わたし 「まだです。アライバルビザを取る予定です。」
スタッフ 「日本へ戻る航空券は持っていますか?」
わたし 「持っていません。そのまま、陸路でスーダンに行きます。」
スタッフ 「…???ス、スダン???」
わたし 「スーダン!」
そして、何故か受理されず、他の係員が来て私を再び別のカウンターに連れていく。
そこでまた同じやり取りをする。
スタッフ 「スーダンの後はどこに行くのですか?」
わたし (地図を見せながら)「エジプト、スーダン、エチオピア、…、そして南アフリカに行きます。バスで行きます。」
スタッフ 「南アフリカから、日本に帰る航空券は?」
わたし 「ありません。南アフリカのあとは、南米に行きます。」
スタッフ 「南米に行く航空券は?」
わたし 「まだです。」
スタッフ 「エジプトのホテルは、予約していますか?」
わたし 「まだです。現地で探します。」
スタッフ 「一人でアフリカに行くのですか?現地で友達と合流しますか?」
わたし 「一人です」
そして、スタッフ3人くらいが集まって、苦笑いをしながら相談を始める。
私が行く予定の国は、全てメモされていた。
私は、クウェート経由でエジプトに行く予定。
渡航先から出国する航空券を持っていなくて問題になるケースは、たまに聞く。
かくいう私も、日本からマレーシア経由でネパールに行った時に、ネパールからの出国航空券を持っていない件について、経由地のマレーシアで少し揉めたし。
(陸路でインドへ行く予定だった)
だけど今回は、クウェートから出国するエジプト行きの航空券は持っていたし、まさか「最終的に日本に戻るための航空券がない」という件が問題になるなんて、思わなかった。
クウェートでエジプト行きに乗るときに、エジプトを出るフライトについて問題になる可能性はあるかもしれないけど。
まだここフィリピンだよ…。
その先の日程なんて、どうでもいいじゃない。
スタッフ 「私たちは、あなたの事をとても心配しています。なぜなら、あなたが女性一人で行くと言うから。大丈夫なのですか?」
心配してくれるのはありがたいけど…それを搭乗拒否の理由にしないで欲しいよ。
そして、カウンターで悶着すること30分。
よくわからない誓約書を書かされる。
ちゃんと読んでないけど(←おい!)、多分「何があっても、航空会社に責任は問いません」みたいな誓約書なんだと思う。
大丈夫だよ、飛行機に乗せてくれさえすれば、あとは自分でなんとかするから。
そして、ようやく搭乗券を発行してもらえた。
ふ~。さすが中東行き…手ごわいぜ。
30分もカウンターを占領してしまった。
後ろで待っている客は、強面でマッチョでイカツイ男性。
すこし迷ったけど、待たせてしまった事を謝罪する。
するとその男性は、強面の表情をニコリと崩して、「気にしないで!ありがとう」と言ってくれた。
いい人すぎる。
たぶん、これは留学の成果なんじゃないかと思う。
1ヵ月前の私だったら、申し訳ないなーと思いつつも、自分から声をかけて謝るなんてしなかったと思うから。
あと、今日は空港で色んな人に道を尋ねたけど、「すみません、お尋ねしてもいいですか?私は〇〇に行きたいのですが…」と一言添えて聞くことができた。
今までは、いきなり「〇〇はどこですか?」とダイレクトに聞いていた。(←失礼!)
留学の成果…少しだけ感じられてよかった。
そして、荷物検査を受ける。
なんと持ち込み手荷物の中身、一つ一つ確認された。
(私だけ!)
小さいポーチの中や、財布の中まで確認された。
厳格すぎる…。
だけど出国審査は滞りなく終わり、出発時刻の1時間少し前に搭乗ゲートに辿り着く。
カウンターがオープンしてすぐに動いて正解だった。
凄いギリギリだ。
さっきまで、人恋しくて、寂しすぎてしんみりしていたんだけどな。
忙しくしている間に、少しだけ寂しさが癒えた。
「やるべき事がある」という事が、少しだけ寂しさを忘れさせてくれる。
残ったフィリピンペソ2750ペソ(約5,885円)は、53アメリカドルに変わった。
私の手元には、2枚のコインだけが残った。
よし、行こう。次の冒険へ。
フィリピン留学記・完