11/10から始まった私の1ヵ月間のフィリピン留学は、きちんと予定通りに終了した。
フィリピン留学の1ヵ月間は、インド留学の1ヵ月間とはまるで違った。
そして想像していたそれとも、まるで違った。
1週目、私は留学生活に早くも飽きを感じていた。
もう、1週間で終わりでいいんじゃないのかな。
だってインド留学の1週間目は、かなり自分と向き合って葛藤する1週間だったのに。
ここでは、なんの葛藤も興奮もなく。
ただただ、穏やかな日々が過ぎていった。
多分、英語力0から始めたインド留学の時よりも、向上心や焦りなどが少なかったんだと思う。
クラスメートも、もちろんテスト結果で決まっているのだから、私と同レベルの人たちばかりで。
先生の英語も聞き取り易くて、そして日本人訛に慣れているから会話がスムーズで。
ルームメイトもいい人で、英語レベルは私より少し低いけれども社交的で。
ルームティーチャーもいい人で。
自分のレベルの低さに対する葛藤もなく、そして人間関係に悩むこともなく。
ただただ、穏やかな日々だった。
2週目は、そんな現状を変えようとジムに通い始めた。
なぜジムだったのか…自分でもよくわからないのだけど。
無心で走っていると、色々な事を考える。
そして何故か、2週目からは色々な葛藤に出会う事になった。
2週目が終わり、ルームメートのエスターが学校を去っていった。
たった2週間の仲だったのに、彼女と別れのハグをしながら号泣をしてしまった。
彼女がいたからこそ、私の留学生活はスムーズにスタートしたのだ。
そして、私のこの「出会っては別れる」の繰り返しの人生そのものに、嫌気がさしてしまった。
いろいろな経験を積むことに意味がある
そう、自分に言い聞かせて生きてきたのだけど。
せっかく出会って、そしてせっかく好きになれそうだったのに。
珍しく人を好きになることがあっても、どうせ別れなければならないのだ。
そんな人生の繰り返しに、嫌気がさしてしまった。
こんなんじゃあ、バックパッカー失格だよね。
3週目に、卒業ミーティングがあった。
あ、私もう卒業なんだ。
そう思ったら、なんだかとても寂しくなった。
クラスメートとも、いい感じになってきたのにな。
せっかく、友だちになれそうだったのに。
もうお別れなんだ。
1時間1時間の授業を、かみしめて受けた。
4週目、木曜日に最後の授業があって、金曜日にテストがあった。
クラスメートたちと、写真を撮る。
先生が、餞別のキーホルダーをくれた。
スピーキングの授業は、私の1番お気に入りの時間。
毎日、1日2時間もお話をしているんだから、仲良くならないはずがない。
土曜日の朝、私が唯一「友だち」と呼べるレベルまで親しくなれたクラスメートが、見送りをしてくれた。
あっさり終わると思っていた留学生活。
もう、あの校舎に戻る事もないのかと思ったら、涙がとめどなくなくあふれてしまった。
クラスメートと毎日会話をして、ジムで走りながら考え事をして、廊下を歩けば誰かしらが挨拶をしてくれて。
そんな平凡だけど、穏やかな日々が終わった。
ヒマラヤの時とも、インド留学の時とも違う悲しみ。
なんだろう…ひとり旅を「寂しい」と思ってしまった。
ひとりは寂しい。
そもそも、旅がメインだったはずで。
その前座としての、フィリピン留学だったはずで。
なのに、急に一人放り出されてしまった気分で、とても旅人に戻れそうもない。
だけど、だからと言って留学を延長してここに残りたいとか、旅は辞めにして日本に帰りたいとか、そういうんじゃない。
私は予定通り、クウェート経由のフライトでエジプトへ向かう。
クラスメートに言われた。
アフリカに行ったら、またそこで新しい出会いがあるよって。
そうだよね。
とりあえず嫌々でも飛行機に乗ってしまえば、またそこから新たな冒険が始まるんだ。
それまで、少しの時間だけの辛抱。