サルエリ(Salleri)2390m
今日はいよいよ最終日。
誰に聞いても、最後の町サルエリまでは4~5時間だと言う。
難しい道のりではないはずだけど、ジープの予約もしたいので早めに着いておきたい。
6時に朝食を頼んでいた。
6時から作り始めてくれたので、待っている間に外に出る。
朝もやの中に、ヒマラヤの最後の山並みが浮かび上がる。
遠くに、雪山の山頂が顔を見せている。
数日前までは、あの全貌が360°丸見えの世界にいたんだよね。
もうここでは、山頂しか見えない。
タクシンドゥ出発|最後の町サルエリへ
7:00にタクシンドゥの宿を出る。
まずは登りになるのだけど、少し登って山頂に出たら、あとはサルエリまで下りのはず。
45分ほど登ると、立派な門がお出迎え。
あれを越えたら山頂なのかな。
山頂だった。
今日は順調な気がする。
ここからは、下り一辺倒だ。
山頂からは様々な方面へ分岐しているようで、サルエリまでの道は直進。
サルエリとは別の方角から、トレッカーが登ってくる。
挨拶を交わすと、「ストロングレディー!」と言われる。
レディー!?
初めて言われた…。これは浮かれちゃう。
「ガール」じゃなくて、「レディー」だって。
これは個人の言葉のチョイスの問題もあるとは思うけど。
最初の頃は、「大丈夫?」「頑張って」と、心配されたり気遣われたりしていた。
特に、あのチョラパス越えの日までは、ずっとそんな感じだった。
チョラパス越えを乗り越えたあとは、「ストロングガール」「タフガール」と言われる様になった。
だけど、「女の子」は嫌だなと思うようになった。
強い女性になりたいと。
そして最終日、ストロングレディーと言ってくれる人に出会えた。
いや、本当にただの言葉のチョイスの問題だと思うけど。
それでも、徐々に成長している様で嬉しい。
ジリから歩き始めて、右往左往していた23日前の自分を思い出す。
明らかに、あの頃と比べると強くなっているし、逞しくなっていると思う。
登り始めた時の私と、今の私は違う。
本当によかった。
「あぁ楽しかった~!」「景色が綺麗だった~!」だけで終わるトレッキングじゃなくて。
今後の自分の糧となる様な、大切な財産ができた。
浮かれながら下っていると、山の中にポツンと佇む仏塔を見つける。
なんだか他の仏塔とは雰囲気が違うというか…サマになっている。
昨日の女僧侶の誘導を思い出し、大きい緩やかな道に対して直角に鋭く下る道を選び続ける。
そのうち穏やかな道のみになったので、マイペースにのんびりと下る。
今日は、何事もなく平和に終わりそう。
下る下る。
のんびり下る。
のんびりと…。
……。
……。
……。
飽きた。
暇だ。
難しい道は大変だし、それを求めているわけではないのだけど。
だけどこんなに穏やかな道をひたすら一人で下り続けるのは、暇すぎる。
暇だ暇だ暇だー!
足の裏も痛いし。
地面の石の刺激などが直接響いてくるようで…痛い。
山歩き、「暇だ」と表現するのも可笑しな話だけどね。
まるで最終回だけが異様にツマラナイ人気ドラマを見ているかのような。
昨日の様にマインドコントロール作戦でいこうと思ったのだけど、全く良いアイディアが思いつかない。
唯一訪れた刺激と言えば、「これどうやって渡るの」と思う川渡りくらい。
左の岩場を行こうとしたら、ヌルヌル過ぎて滑るから渡れない。
結局は岩と小石をつたって、それでも濡れながら渡った。
せめて途中に町でもあればなー。
暇すぎて、唯一の娯楽は途中で食べるクッキー休憩くらいだ。
だけど、こんなヒマラヤの田舎の風景も今日で最後なんだなと、たまに心揺さぶられたりもする。
11時を過ぎた頃、トレッカーのカップルが登ってくるのが見えた。
サルエリから登ってきたのかな。
彼らに、サルエリまでどれくらいか聞いてみよう。
…と思ったら、逆にリングムまでどれくらいか聞かれる。
彼らも私と同じ気持ちだったんだね…笑
次の町「パープル」までは1時間くらいで、あと5分で飛行場が見えてくると教えてくれた。
その通り、間もなく飛行場が見えてきた。
飛行場があるくらいだから、大きな町なんだろうか。
1時間も刺激がないなんて耐えられないので、クッキー休憩を取る。
最後の1枚を食べていると、「ハイ!チセ!」と名前を呼ばれる。
こんな場所で名前を呼ばれる心当たりといえば…全く思い当たらない。
え~誰だろう??
と思って振り返ると、なんとロン毛のチェコ人だった。
ヒマラヤトレッキング21日目|無心で歩いて、最後は闘争心(ナムチェ→スルケ)
彼らは昨日サルエリに着いているはずだけど…。
しかも1人増えて4人になってるし。笑
ここからは、彼らと共に行動する事にした。
厳しい山の登り道ならともかく、こんな緩やかな道路道なら付いていける。
よかった、退屈な時間に終止符が打たれた。
お喋りしながら歩く語学力はないけれど、誰かが一緒にいるだけで楽しい気持ちになる。
それに、あれから彼らも3日かけてここに来たのかと思うと、嬉しくもなる。
2日で行くって言ってたのにね、結果は私と同じだね!
しかし道が緩やかとはいえ、彼らは私よりはハイペースなので、少しは必死になる。
「早すぎだよ!」と文句を言ってみる。
「今日はとてもゆっくり歩いているよ」と言い返される。
くそ~。
そんな感じであっさりサルエリに着いた。
サルエリでの宿探しと、カトマンズ行きのジープの予約
まずは宿を探すのかと思ったら、さっそくカトマンズ行きのジープの予約をする様だ。
最初に訪ねたチケットブースで、1400ルピー(1400円)と言われる。
オランダ人(スルケまでの道のりを途中から一緒に歩いた人)が、交渉をする。
(そういえば、彼はあれからロン毛のチェコ人の仲間になったんだね)
「カトマンズからジリ行きのバスはもっと安かった。」
「5人もいるのだからディスカウントして欲しい。」
交渉が決裂したので、別のチケットブースを探す。
凄いね、私だったら「そんなものか」と思って予約しちゃう。
関心したって、今の私には真似するスキルはないのだけど。
2件目のチケットブースでも1400ルピーと言われたので、これが最安値の様だ。
またオランダ人が交渉をするのだけど、値下がることはなかった。(彼は交渉担当の様だ)
ここで5人分の予約。
明日の朝、4:30の集合。早すぎる~。
チケットはオランダ人が代表して1枚持っているので、朝彼等に合流し損ねたら私はジープに乗れない。
次は宿を探す。
男性陣は2人部屋でよいみたいなので、合計3部屋必要。
今度は、ロン毛のチェコ人の友人が交渉役。
宿を何件も訪ねて、値段交渉もしてくれる。
部屋も代表して見に行ってくれる。
凄いね(2回目)、私だったら相当嫌な点がなければそのまま泊まってしまう。
最初は350ルピー(350円)くらいだった部屋が、200ルピー(200円)になった。
一人でジリに向かって、ジリからも一人でスタートした私。
最終日は外国人4人と一緒にゴールして、しかもカトマンズまで一緒に帰る。
こんな結果は、全く想像していなかったな。
トレッキングは今日で最後だけど、カトマンズに戻るまでが1つのストーリー。
色々思考をまとめるのは、カトマンズに戻ってからにしよう。
今日で最後だー!
終わったー!
頑張ったー!
…とか色々感じる事があるのかと思ったのだけどね。
今のところは、何故か何も感じない。
いつもと同じ日常。
いつもと同じ、ロッジでの私。
なんだか、明日もまた歩き出しそうだ。
本当に終わったのかな。
タクシンドゥ(Taksindu)2960m
↓(6時間)
サルエリ(Salleri)2390m