ー世界はきっと、美しいー
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ヒマラヤトレッキング21日目|無心で歩いて、最後は闘争心(ナムチェ→スルケ)

【ヒマラヤ紀行】2017/10/24

ナムチェ(Namche)3440m
スルケ(Surke)2290m

久々に快眠ができた。
夜中に一度も起きなかったなんて、何日ぶりだろう。

ナムチェの宿は快適。

トイレは水栓で、便座に座っても汚いと思わない。
洗面台があって、蛇口を捻ればいつでも水が出る。

トイレも洗面台も、もちろん屋内。

部屋から出る度に、ヘッドライトを探す必要がない。
部屋は電気を付ければ明るくて、日が暮れても読書ができる。

・・・。

結局私は、文明社会に生きる存在。
どんなに山の生活に馴染んだつもりでも。

ヒマラヤで3週間過ごしたって、山ガールにはなれないみたい。

もう何泊か延泊して、のんびり読書でもしながら過ごしたいな。

宿でたまたま手に取った、野口健という登山家の方の本が面白い。
この環境で読むからこそ、より心に響きやすいと思うのに、半分しか読めなかった。

だけど延泊なんかしている場合ではない。
私は下界に生きる人間。下界に戻らなくては。

チェックアウト時、あまりの物価の安さに驚く。

PCのフル充電が250ルピー(250円)。
(ロブチェでは1時間1000ルピーだったのに!)

水は100(100円)ルピー。
(数日前までは400ルピーだったのに!)

紅茶は50(50円)ルピー。
(今までは…以下同文)

だけど下ってきた私とは相反して、登ってきた韓国人女性は逆に高いと感じた様で抗議をしている。

「今までの町では、チキンはもっと安かった」と。

「ここまで物資を運ぶのは大変だから、値段も変わるんですよ」と説明を受けても納得がいかない様子。

私は、殴られながらも一生懸命に物資を運ぶミュールたちを見ちゃってるからな~。仕方ないと思えるけど。

彼女たちは、この先ダルバートが700ルピー(700円)もする世界に行くわけだけど…大丈夫なのかな。

今日はゴールは決めずに、行けるところまで行く作戦にしようと思う。

前回ナムチェに来た時は「ナーニング」という町からスタートしたから、最低目標はナーニング。

霧の中を、ひたすら下る。

天候の事に口出しはできないけれど、いま展望スポットに行っている人はとても気の毒。

時間があれば晴れるまで待つこともできるけど、そんな人ばかりでもないだろうし。

ジリ~ルクラ間を歩いている時は、ほぼ毎日雨が降った。
ルクラ以降は晴天の日が続き、ゴーキョを去ってからは霧の日が続く。

晴れていて欲しいタイミングでは、常に晴れていた。
とても幸運だったなと、心から思う。

これから暑くなるタイミングで霧に見舞われたのも、幸運な事かもしれない。

下りが終ると、いくつかの町を通過する。

毎日鼻をかみ過ぎたせいか、鼻と喉の風邪を引いたような気分。

少しダルくて、たまに立ち眩みのようなフワフワとした感覚になる。

だから、とにかく無心で歩く。

無心で歩いているからか、今日はあまり辛さを感じない。
とにかく、目の前に現れる道を歩くのみ。

少し風邪を引いているくらいが、余計な辛さを感じずに済んでよいのかもしれない。

途中で牛(ヤク)に度々遭遇するのだけど、久々にミュール隊に出会った。
懐かしい。この標高だとミュール隊が活躍できるんだね。

それにしても、前回泊まったナーニングの町がそろそろのはずなのに全く辿り着かない。
宿を出てから、かれこれ8時間以上は歩き続けているというのに。

今日は最低目標のナーニングにすら辿り着けないのか。

…と思っていたら、見覚えのあるマニ車。

やっと着いた!ナーニング!

その時、ロッジで食事をしている人が手を振るのが見えた。
彼は、15日前に「ブプサ」という町の宿で一度一緒になった人だ。

おいでおいでと手招きをされたので、入ってみる。

男性が4人、食事をしていた。
15:00過ぎ。ランチにしては遅いし、ディナーにしては早い。

一度しか会っていないはずなのだけど、とても親しげ。
(他の場所でも会ったっけな…??)

私の名前を呼んだような気がするのだけど…気のせいかな。
(名乗った記憶ないんだけど)

私は彼の名前を知らないので、ロン毛の人と記す事にする。(←失礼!)

ロン毛の人は、これから「スルケ」または「パイヤ」に行くという。
だけど、地図で見たらとても遠い。

「だってここは、ナーニングだよね?」
「違うよ、ここはチェップルングだよ」

えー!!!

私はいつの間にか、ナーニングの町を通り過ぎていたようだ。
本当に、いつの間に…。無心で歩くにも程がある。

ロン毛の人は、「パイヤまでは4時間、スルケまでは2時間」とロッジの人に言われスルケに決めたようだ。

私は、次の町「チャウリカルカ」にしようかな。

…と思ったのだけど、まさかのロン毛の人に焚きつけられる。

お前は強い女だから大丈夫だ!

褒められているわけでも、励まされているわけでもない。

これは挑発だ。

実をいうと、「今日は行けるところまで」といいつつも一応希望はあった。
最低目標はナーニング、現実的にはチャウリカルカ、理想はスルケ。

スルケ、本当は行きたかったんだよ。
明日の為にも。

だけど、こんな時間だし。
行けてもチャウリカルカまでだ。

しかし、謎の挑発行為を受けた私。

その場は「行けたらいくよ」と言いながら、内心「行ってやろうじゃないか」という気持ちになる。

ロン毛の人と、その友人と、2人が先に店を出る。
残る2人と、熱い熱いハグを交わして。

それは単なる挨拶のハグなんかじゃなくて、もっともっと熱いもの。

先の2人は私と同じくサルエリまで行ってジープに乗る。
後の2人はルクラまで行って飛行機で帰る。

4人は2手に分かれて、ここでお別れの様だ。

ここからは私の想像だけれど、
4人はこれまでの道すがら、何度も顔を合わせて、時には共に歩いた仲間なんじゃないかな。

たった数日間だけれど、とても濃い数日間だったはず。

育った環境も、国籍もまるで違う4人が、たまたまヒマラヤの大地で出会い僅かな時を共に過ごす。

それが、今日この町でお別れ。

「男の友情」を目の前で見せつけられると、私まで感慨深い気持ちになってしまう。

私もオランダ人親子とクマルに挨拶くらいしてから出てくるべきだったかな。

黙って去るなんて冷たい女だなと思うのだけど、どちらにしても男の友情には敵わないよね。

店を出るとすぐに、ルクラ行きジリ・サルエリ行きの分岐点に出る。

あぁ、そうか。ここは分岐の町だったんだ。
だから、こんな変な時間に最後の晩餐をしていたんだね。

分岐から30分ほどでチャウリカルカの町に着く。
時刻は16:00近くだから、本来なら今日はここで終了。

だけど謎の闘争心に駆られている私は、先へ進む。

そういえば、さっきまで「風邪ひいた」とか言ってなかったっけ。
仮病だったのかな。
自分で自分に仮病使うって、どういう状況だ一体。

そして間もなく、石段から足を踏み外して豪快に転んでしまう。

身体は衣類に守られていたから平気だけど、むき出しの掌だけ擦り剝いてしまう。
その掌を眺めながら、「あぁ、破傷風の予防接種受けておいてよかったな」なんて思う。

いや、、、違う違う違う。

私は今、よくない事をしている。
一番大切なのは危機管理で、決して意地やプライドで山を歩いてはいけない。

闘争心3割、冷静さ7割くらいの気持ちに切り替えて先に進む。

強い強いって…色んな人に言って頂くけどさ。
嬉しいんだけど、「強さ」の意味がまだ私にはわからないよ。

21日前より「逞しく」はなった気がするけれど。

チャウリカルカを過ぎてすぐに出会った人に聞いてみると、「あと1時間」だという。

そして坂を降り切った先の橋の前で聞いてみたら「あと20分」。
橋を渡ってしばらくしてから聞いてみたら「あと20分」。

変わってな~い!!!

だけど、あと20分ってモチベーション上がる。
20分って、すぐだよね。

途中の民家で聞いてみたら、「あと30分」と言われた。

増えてる~!!!

この21日間、多くの人に時間を尋ねてきたけれど。
増えたのは初体験だ。

20分と30分じゃあ、モチベーションが全然違うからね。
たかが10分、されど10分。

後ろから追いついてきたオランダ人に話しかけられる。
彼もサルエリを目指していて、今日はスルケに泊まるという。

しかも彼もそうとう疲れていて、私の歩調に合わせてくれる。

この状況では、とても心強い。

そして、ようやくスルケらしき場所に通りかかる。

とあるロッジの2階から、名前を呼ばれる。
ロン毛の人が、窓から手を振っている。

あぁ、やはり名前知られてる。
私は、今更聞けないよ。。。

一緒に来たオランダ人と共に、ここに入ることにした。

時刻は17:20。
10時間半もの間、歩き続けていたようだ。

昨日「所要時間最長記録」とか言っておいて、あっさり抜いてしまった。

だけど、前半は虚ろ気に無心で歩いて、最後は意地で歩いていたから、辛かった思い出はあまりない。

昨日の方が辛かったし、チョラパス越えはもっと辛かった。

ロン毛の人のおかげで、今日も最後の最後で思い出が作れた。

この事がなければ、
「今日はひたすら無心で歩いて、いつの間にかチャウリカルカに着いていました」
という初の一行間日記になってしまうところだった。

この宿には、私を入れて4人しか泊まっていないようだ。

  • ロン毛の人
  • その友人
  • オランダ人

他の3人はサルエリまであと2日で行くという。
私は、3日かけて行く予定。

ロン毛の人が、「今日ナムチェからここまで来れたんだから大丈夫だよ」と、明日以降の私の1日あたりの行程が短すぎる件を非難をする。

だけど、もうその手には乗らないよ。

ルクラ以降は、多少のアップダウンはあれど「登り道」
ジリからルクラまでは、いくつもの峠を越えて「向かう道」

つまり「帰りの方が下りが多くて楽だ」と思えるのは今日で最後。
明日からは、行きと同じく峠越えの日々。

予定通り、3日かけてゆっくり行こう。

それでもギリギリかなと思うくらいなのだから。

本日の行程

ナムチェ(Namche)3440m
↓(10時間半)
スルケ(Surke)2290m

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