さて、6回目となったヒマラヤトレッキングのまとめも、今回で最後です。
最後は、ヒマラヤトレッキング一番の敵「高山病」についてです。
もくじ
高山病とは
高山病は、標高が高い地点での酸素不足により起こる病気です。
一度発症すると、下山する以外に治す方法はありません。
軽度の場合は、標高を上げずに様子をみて、回復したら登るという事もできます。
また、少し標高を下げて様子をみて、身体が順応したらまた登るという事もできます。
どちらにしても、辛いまま登り続けてはいけません。
場合によっては死に至る、または脳に重い後遺症が残ります。
高山病は、「体質」が関係します。「体力」は関係ありません。
むしろ体力に自信のある人ほど、自分の体力を過信して高山病対策を蔑ろにする為、高山病になりやすいです。
また、気圧の低い日ほど症状が出やすいです。
天気の悪い日よりも、晴れの日の方がいいです。
生活習慣も影響します。
お酒やたばこをたしなむ人は、高山病になりやすいです。
睡眠不足も影響します。
前日は、十分な睡眠を心がけます。
私の高山病歴…
私は過去に2度、「富士山」で高山病を発症しております。
1度目の高山病
1度目は、標高2,925mの須走ルート7合目で発症しました。
そこまでは軽い足取りでずんずん登っていたのに、この7合目に差し掛かったあたりから、急に足が重たくなったのです。
そして徐々に意識が朦朧としてきて、同行者に後ろから背中を押してもらいながら、なんとかその日のゴールの本7合目(標高3,145m)に到着しました。
その頃には既に限界が来ていて、食事も自力では取る事ができずに、同行者に無理やり口に突っ込まれたカレー2~3口分だけでした。
疲れているから眠りたいのに、眠ると呼吸が浅くなるから、横になるだけでも辛いのです。
布団から起き上がるだけの動作で、頭が割れそうに痛みます。
寝返りを打つだけで、頭が裂けそうになります。
吐き気が常にあるのに、何も食べていないから吐けません。
結局、ほぼ一晩中身体を起こしたままぼーっとしておりました。
翌日は、これ以上標高を上げる事を断念しました。
当時は今より若く活発な少女だったので、どちらかというと「後先考えずに気合で頑張る☆」といった向こう見ずなタイプでしたが、それでも葛藤の末諦めました。
本気で命の危険を感じたのです。
下界に下りた頃には、そんな辛さもケロッと忘れて元気になっていましたが。
2度目の高山病
2度目は、翌年のリベンジ富士山でした。
前年の反省点をふまえ、準備と研究を重ねて、再び須走ルートに挑みました。
結果、前年に苦しんだ本7合目(標高3,145m)には楽々到着。
その後も徐々に足取りは重くなりつつ、なんとか登頂に成功しました。
頂上は、3,720m地点です。
しかし、そこで油断した為に体調が悪化。
本当は最高地点、3776m地点の剣ヶ峰というところを目指したかったのですが、断念。
すぐに下山を始めましたが、8号5尺の山小屋(3,450m)まであと少しというところで、耐え切れずに嘔吐してしまいました。
というわけで、富士山で2回中2回とも高山病にかかったのに、最高到達地点5,550mのヒマラヤトレッキングに挑むなんて、無理を承知の挑戦だったのです。
私の高山病対策
過去の経験から、「高山病」を極端に恐れながらのヒマラヤトレッキングでした。
私は、高山病になりやすい「体質」なんだと思います。
もしもトレッキングが不成功に終わるとしたら、、、それは「高山病」が原因だろうなと思いながらスタートしました。
結果的に、富士山3,000m前後で高山病に苦しんだ私の身体は、5,550mのヒマラヤの大地には受け入れられたのです。
「高山病を恐れる慎重さ」が、一番の高山病対策でした。
…が、一応もう少し詳しく書いてみます。
スタート地点まで、飛行機ではなくバスで行く
飛行機で行く場合、スタート地点が既に標高2,840mのルクラという町です。
私が富士山で高山病を発症した地点と、100m程しか変わりません。
しかも、この町から先は、どんどんと標高を上げていくばかりなのです。
一方で、バスで行く場合のスタート地点は、標高1,995mのジリという町です。
富士登山のスタート地点である5合目と同じくらいです。
しかも、ここから登る一方ではなく、いくつもの峠越えの為に登ったり下ったりを1週間ほど繰り返すのです。
この間に、高度順応ができていたのではないかと思います。
そう、大切なのは「高度順応」なのです。
他人のペースに巻き込まれず、自分のペースで歩く
途中、現地の人に案内をしてもらう場面があったり、他のトレッカーに「一緒に歩こう!」と誘ってもらえる場合がありました。
だけど、自分とペースが合わないなと思ったら、無理をせずに先に行ってもらいました。
心の中では「案内してもらっているのだから、ちゃんと付いていかなくちゃ!」と義理人情が芽生えますよ、もちろん。
だけど私はぐっと堪えて、自分のペースを保ちました。
付いて行こうとして呼吸が乱れた時、我に返ったのです。
「高山では、息が上がる程のペースで歩いては行けない。申し訳ないけれど、私は私のペースで歩こう。でなければ、また高山病になってしまう」と。
高度順応の為の滞在日を守る、1日に沢山標高を上げない
普段は1泊だけしてその町を去りますが、高度順応の為に2連泊する事があります。
まず初めに、ナムチェ(標高3,440m)。
そして標高4,000mを越えたどこかの地点で2連泊。
私はディンボチェ(標高4,410m)という町にしました。
これは大切で、急いでいるからとか、体力的に問題ないからと自分を過信したりとかで破ってはいけません。
「まだまだ余裕~♪」と思っても、必ず2か所で2泊ずつ滞在します。
また、標高の低い地点では朝から夕方まで歩いていた私も、ナムチェ以降は1日3~4時間ほどしか歩いていません。
昼過ぎには次の町に付いていました。
時間的には、これまた余裕なのですが、1日にたくさん標高を上げるのも危険なのです。
ゆっくりゆっくりと、徐々に高度を上げていき、高度順応していきます。
とにかく呼吸に気を配る
高山になればなるほど、また体力的な辛さを感じれば感じるほど、呼吸を意識して歩きました。
たっぷり吸って、ゆっくり吐く。その繰り返し。
どうしても苦しいときのダイアモックス!
ダイアモックスとは、高山病予防の薬です。
予防注射などを扱っている病院(トラベルクリニック)などで処方してもらえます。
あくまでも「予防」なので、高山病が発症してしまってからでは遅いです。
「軽度」であれば気休めくらいにはなるかもですが。
本来であれば、「高所に到達する2日前に飲み始める」みたいなルールがあったかと思います。
ただヒマラヤトレッキングの場合は、富士山などの独立峰と違って毎日のゴールが高所なわけで….。
いつのタイミングで飲めばよいのかわからず、「何だか頭痛がするな~」と不安な夜に飲みました。
あとは、最も高い地点「カラ・パタール(標高5,550m)」を目指す2日前から2日間飲みました。
高山病の症状が全く出なかったのが、この薬のおかげなのかどうかはわかりません。
副作用として、指先がしびれたり、頻尿になったりします。
おまけ
私は意識しなかったけど、一般的には有効と言われている対策です。
水分補給
水分を取って、尿として出す。
これを頻繁に行う事によって、身体の血液中の酸素が循環するため、高山病を予防できるのだとか。
私は、のどが乾いた時や気分転換、休憩の際のついでに飲むといった程度で、特に意識してたくさん水分を取ったという事はありませんでした。
1日1~2リットルくらいかな~。
お酒は飲まない
ナムチェにあったバーに心惹かれた事もありました。
ヒマラヤ山脈限定の地酒を一緒に飲もうよと、夜にダイニングで誘われた事もありました。
だけど、我慢です。お酒は高山病のリスクを高めます。
我慢した理由は、高山病対策ではなく、女一人旅の防犯意識からだったのですが。
タバコは吸わない
私は喫煙者ではないので、これは簡単にクリアです。
喫煙者には厳しいのかな…だけど、喫煙は高山病のリスクを高めます。
睡眠をたくさん取る
睡眠不足は、高山病のリスクを高めます。
だけど、毎日早起きでしたが、毎日早寝でもあったので問題ありませんでした。
だって夜は真っ暗で、部屋もささやかな豆電球のみ。
寒いしする事もないので、21時には就寝です。
だからあえて意識せずとも、これは全員クリアです。
おわり
また何か思いつけば記事にするかもしれませんが、とりあえず以上です。
ヒマラヤトレッキングに挑みたい誰かの役に、少しでも立てていれば嬉しいです。