大雪山(たいせつざん)。
これは1つの山の名称ではなく、北海道の中央部に位置する山塊の名称。
北アルプスとか、丹沢山地とか、六甲山地とか…そんなイメージ。(たぶん)
私は北海道の3つの小学校(札幌・帯広・旭川)に通った経験があるのだけれど、3校とも校歌に「大雪山」の表現が入っている。
旭川なんて、「大雪山に、守られながら学ぶ幸い」ですって。
それくらい、山梨・静岡県民にとっての富士山くらい(?)、滋賀県民にとっての琵琶湖くらい(?)、東京都民にとっての東京タワーくらい(?)、北海道民にとってのシンボル的な存在なのだ。
深田久弥氏の「日本百名山」にも選定されていて、そこには「大雪山」と記載されているけれど、それは北海道最高峰の「旭岳(あさひだけ)」を指す。
厳密に言うと、彼は「旭岳を中心とする火山群に極限する。」と表現しているので、「旭岳の近くの愛別岳に登ったぞ!日本百名山のひとつを制覇だぜ!」と言っても正しい。(屁理屈っぽいけど。。)
旭岳は、深田久弥氏の「日本百名山」の他に、「北海道百名山」「北海道の百名山」(←名前似てるけど別物)にも選定されている。
「大雪山=旭岳」と思っている人もいるので、単体の山を指す場合と区別する為に、このエリアの総称として「大雪山系」と表現する場合もある。
本当は、「大雪山 ∋ 旭岳」って感じなんだけど。
北海道最高峰の旭岳(標高2291m)を含め、2000m級の山々が連なる事から、大雪山は「北海道の屋根」とも言われている。
2000m級とは言っても、緯度の高い北海道の2000m級の山は、本州で言うところの3000m級の山と同等の気候になる。
高山病こそないものの、7月でも低体温証で死者がでる事もあるので侮れない。
有名な「トムラウシ山遭難事故」も、この大雪山系の中で起きている。
ツアーガイドを含む18人中、8人が死亡するという、夏山としては近年稀に見る大事故だ。
面積は約23万ha、神奈川県の面積とほぼ同じ。
そんな大雪山系は、「ひとつの山に登って下る」だけではなく、もしくは「いくつかの縦走路がある」というのでもなく、その道は四方八方、縦横無尽に走っている。
自分の体力や技術、気分や天候に合わせて、好きな様にカスタマイズできるのだ。
北海道最高峰!旭岳に登る計画を立てる
さて、最近は札幌近郊の低山にしか登っていないにも関わらず、いきなり北海道最高峰の旭岳に登る事を決める。
旭岳は、5合目までロープウェイで登れる為、2時間程度で登頂できる初心者向けの山として紹介される事もある。
簡単なのは、夏山で視界も良好な晴れの日のお話です。
ひとたび視界不良に陥れば、簡単に道を失ってしまう開けた地形の為、多数の遭難者や死者を出している、アマノジャクみたいな山です。
「初心者でも簡単♪」を鵜呑みにせず、しっかりと備えて登りましょう。
北海道最高峰の地を踏むのに、2時間程度で簡単に到達してしまったら呆気ないよな。
麓の「旭岳温泉」から登り始めようか。
そうすると、約2時間も追加される事になるけれど。
そして、大雪山の魅力は、その広大さにある。
深田久弥氏の『日本百名山』にも、こんな表現が。
内地へ持ってきたら、それ一つだけでも自慢になりそうな高原が、あちこちに無造作に投げ出されている。この贅沢さ、この野方図さが、大雪山の魅力である。
日本百名山 37ページより
単純に往復するだけじゃあ、大雪山の魅力を十分に感じられないよな。
その雄大さを存分に満喫できるコースがいい。
という事で、お隣の黒岳(くろだけ)まで縦走してしまうコースも考えたけれど、裾合平(すそあいだいら)をぐるりと回るコースに決める。
ぐるりと回るコース「裾合平一周コース」。
途中にある「中岳温泉」が魅力的。
標高1800mにある、ここまで自分の足で歩いた者だけに入浴が許される、まさに秘湯。
設備がある訳ではない、完全なる野湯なので、現実的には「足湯」になると思うけど。。
地図の北東に進めば「黒岳への縦走」もできるし、南東へ伸びている道は、遥か遠く、十勝岳へと続いている。
トムラウシへの縦断を目指す者が通る道であり、3~4日程かかるの長い道のり。
十勝岳まで行くなら、4~5日くらいはかかるのかな?(←曖昧)
そんな、無限の可能性を秘めた大雪山系。
今回は、謙虚にその一部を楽しませてもらいましょう。
決行は、6月25日。
6月の北海道、まだまだ雪が心配ね。
遭難しない様に気を付けなければ。。
詳しいルートを確認したい、実際に計画を立てる為に難易度を知りたい、という場合は、下記サイトよりグレードマップをチェック!
大雪山の遭難事故
大雪山の厳しさを感じられる有名な遭難事故について。
(詳しく解説・考察している人はたくさんいるので、ここでは概要のみ)
遭難事故は、毎年多々起きているけれど、その中でも多数の死者を出した衝撃的な事件。
1つは、記事中にも書いた「トムラウシ山遭難事故」。
こちらはアミューズトラベル株式会社が主催するツアー登山で、登山客15人、ガイド3人の計18人のパーティー。
今回私が登る旭岳から、トムラウシ山を目指す2泊3日のツアー。
3日目にあたる2007年7月16日、パーティーは悪天候に見舞われ、一人、また一人と低体温症で倒れていき、最終的にはガイド1名を含む10名の方が亡くなった。
生還した人も、パーティーがバラバラになる中で、自分の判断で必死に自力下山したり、ビバーク(緊急野営)したり、それぞれが命を守る行動を取った結果の生還。
夏でも低体温症で死ぬこともある、低体温症というのは誰もが簡単に陥るものだという教訓。
そして、この事故は「たまたま稀に見る悪天候に見舞われた不運な事故」ではない。
この時期に、こういった天候になる事は珍しい事ではなく、ここまでの大量遭難は他にないものの、小規模の同じような遭難は何度も起きている土地。
この時期、死者が出るほどの悪天候、大雨や強風に遭う可能性は十分にあるという事を念頭に置いた登山計画が必要だという事。
この事故の詳細は、『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』という本で詳しく解説されている。
生存者の証言を元に、当時の様子を再現している章と、各専門家による検証や、これを教訓に事故を防ぐための情報が書かれている。
とても為になる本。
もう一つは、「旭岳遭難」。
北海道学芸大学函館分校(現・北海道教育大学 函館校)の山岳部11名の内10名が死亡するという、衝撃的な事故。
私がまさに行こうとしている土地で起こった事故。
冬山の話ではあるものの、ひとたび視界が悪くなれば道がまるで分らなくなる土地なのだという教訓は、夏山でも十分に生かす事ができる。
この事故のたった一人の生還者が書いた本がある。
私はまだ未読だけれど、いつか読もうと思う。
『凍れる命』を文庫化したものが『いのちの代償』で、内容は同じと解釈しているのだけれど。
(違ったらごめんなさい。)
私の記憶に残っている、大きな遭難事故はこの2つ。
他にもあると思うので、もっと勉強していこう。
旅行ブログで数学の部分集合マークを初めて見た気がしてちょっとテンション上がってしまいました。
(∍を使ってないということは、旭岳も集合として見るのが正しいということだと思うので、目から鱗でした)
ちせ様の旅行は、準備の段階にも相当に力を入れられてることが伺えるのも大きな魅力の一つだと思うので、準備編があとどのぐらいあるのかわかりませんが、また楽しみにさせてもらってます!
NKさま
私も社会人になって初めて使いました。笑
(実は数学は苦手です。。)
仰るとおり、∍を使うのが適切でした。
旭岳他、複数の単独の山という要素の集合体が大雪山という説明ですものね。
哲学的な話をし出せば、旭岳も集合として見るという解釈もできそうですが…。
この場合、文脈的には不適切かと思います。
記事は修正いたします。いつもいつも、勉強になります。
山も旅行も、行先を決めたりルートを考えるのが大きな楽しみの一つです!
次回は出発編(?)です。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
個人的には、そのままの表現もあり得たのかなと思ってます。
「山に入る」等の表現もありますが、その場合は山を土地の集合である領域として捉えてると思うので、この文脈でもそういう解釈も可能なんだなと感心してました。
自分は若いころは数学は得意だと思っていたのですが、大学に入ってそれは幻覚だったと気が付いたので。笑
NKさま
感心して頂けて恐縮でございます。
しかし、そこまでの意味を込めて記述した訳ではなかったので、逆にお恥ずかしい限りでございます。。苦笑
数学が得意なのは羨ましいです!
大学でその様に感じられたという事は、理系に進まれたという事でしょうか。
でも書物がお好きと仰られていたので、文理両道ですね。
世界放浪からだんだん山ガールになりつつありますか?
土日さま
山ガールを目指したいところですが、それを自称できるほどの山歩きをしていないのが現状です。
本当は、テントを担いで1週間くらいの「大雪山大縦走」なんかやってみたいんですけど、そこまでの技術を身に付けるのに何年かかる事やら。笑