北海道最高峰の旭岳(あさひだけ)。
最近は、札幌近郊の低山にしか登っていないにも関わらず、大雪山(たいせつざん)の地に足を踏み入れる事にした。
大雪山は、北海道の中央部に位置する、神奈川県とほぼ同じ面積を誇る山塊の名称。
旭岳は標高2291m、本州の山でいうところの3000m級の山と同程度の気候。
6月も下旬だというのに、まだまだ雪の心配が残る登山となる。
北海道最高峰、深田久弥氏選定の「日本百名山」、山と渓谷社選定の「北海道百名山」、北海道新聞社選定の「北海道の百名山」、などなど、色々なタイトルを持つ人気の山。
初の大雪山での登山に向けて遭難記録を読み漁った甲斐もあり、この土地の厳しさを学ぶのと引き換えに、見事にまたトリップブルーを患う事となる。
行きたくないよー。
家でぬくぬく、のんびりと過ごしたい。。
どうやら、トリップブルーは体質であり、克服できない病の様だ。
いや、山歩きだからトレッキングブルーかな??
▼前回のおはなし▼
北海道の屋根「大雪山」への登山計画|北海道最高峰・旭岳に登るルートを考える
札幌から、旭岳の玄関口「旭岳温泉」を目指す
旭岳の玄関口は、旭岳温泉。
上川郡の東川町にある。(←といっても、道外の方にはピンと来ないかしら?)
最寄りの都市は旭川になる立地なので、道外から真っすぐ旭岳を目指すなら、旭川空港が便利。
私は札幌から、のんびりとバスで向かう。
JRの方が早いけど、今回はバックパックを背負っているので節約旅。
- バス(高速あさひかわ号):約2時間/2,300円
- JR(特急):1時間25分/5,220円
旭川駅に着いたら、トイレと軽い買い物を済ませる。
旭岳温泉にはスーパーやコンビニはないので、必要なものは旭川駅で入手!
飲み物やカップラーメン程度なら、宿の売店で買える。
そして、旭岳温泉行きのバス乗車券を購入。
バスは片道4便ずつしかないので、旭川電気軌道のHPで要チェック!
https://www.asahikawa-denkikidou.jp/asahidaek_line/
私はここで、帰りの分の乗車券も購入して「私ってば、準備いいじゃん♪」なんて思っていたけれど、なんと大損をしてしまう。
なんと、帰りの日が「あさひかわバス無料DEY」という、旭川市内で乗車・降車をする場合にバス代が無料になるキャンペーン日だったのだ。
早めに備えて損をするとは…。
旭川から出るバスに乗って、しっかり恩恵を受けさせて頂きましたけどもね。
それにしても、札幌駅のバスターミナルでも旭川駅のバスターミナルでも、1ヵ所だけ行列が出来ている乗り場があった。
それがどちらも「富良野行き」。
たぶん道外の観光客だろうなー。
北海道旅行の一番人気は、富良野なのか。
旭岳温泉の快適な安宿|旭岳温泉ホステル ケイズハウス北海道
旭川駅から、バスに乗る事およそ1時間30分。
「旭岳温泉入り口」で下車してすぐの場所にある、ゲストハウス。
旭岳温泉ホステル ケイズハウス北海道。
私が調べた中では、最も安価に泊まれる宿。
旭岳温泉入り口、旭岳キャンプ場、ホテルベアモンテ前、旭岳…とバス停が並んでいるので、宿の最寄りのバス停を要チェック!
旭岳温泉の入り口に位置するケイズハウス北海道の場合、終点の「旭岳」まで行ってしまうと、徒歩20分も戻る羽目になる。
久々のドミトリー。
9ベッドの男女混合ドミトリーで3,500円、女性専用ドミトリーで4,000円。
天然温泉付きで、チェックアウト日は登山後に無料で入浴させてくれるのが嬉しい!
500円の差だし、女性専用ドミトリーでも良かったんだけど、まぁ寝るだけだしと思い男女混合ドミトリーを選択。
(結論としては、次回は女性専用ドミトリーを選ぶかなーといった感じだけど、それはまた後程。)
案内された部屋は、ログハウス風の温かみのあるお部屋。
部屋に入ってベッドを選んでいたら、後から男性が入って来た。
その男性は、私を見て狼狽。
「ここって、、あれ?女性部屋ですか??」
私は、「ここはMIXドミですよ」と教えてあげる。
「よかった。部屋間違えたかと思いました。焦」
あれー。
日本のドミトリーは、女性は女性専用ドミトリーに泊るのが暗黙の了解なのかな??
あんまり泊まった事ないから分からないや。。
ロビーに下りると、宿の主人が「部屋、大丈夫そうですか?」と尋ねて来た。
「今日は女性が1人だから、どうかなーと」
「私は大丈夫ですけど、後から入って来た男性に驚かれてしまいました。女性はあまりMIXドミには泊まらないですか?」
「それは、その男性が驚いただけです。今日はたまたま女性1人ですが、普段は女性の方も泊まられますよ」
それを聞いて安心。
私は、女性なのに男女混合ドミトリーに泊る奇異な客ではない様だ。
共有スペースも素敵な空間で、登山客にとても喜ばれそう。
ここは靴を脱いでくつろぐスペースで、もちろん普通のテーブル席もある。
ハンモックもある。
素泊まりだけれど、お茶や紅茶は飲み放題。
朝は自動でコーヒーも入る。
冷蔵庫には食パンとジャムが入っていて、朝食に食べていいらしい。
実質、朝食付きの宿じゃないか!
キッチンはとても広く、一通りの食器や調理器具、調味料も揃っているので、自炊派にも申し分のない環境。
食料を持参しなくても、カップラーメンや冷凍食品などの軽食なら売店で購入可能。
お菓子や飲み物もある。
プラス、天然温泉に入り放題、チェックアウト後も当日中なら利用可能だなんて。
これが3,500円。
なんてコストパフォーマンスが高い宿なのだ。
何日か連泊して、のんびり読書でもしながら過ごすのでも気分が良さそうだ。
(本棚には登山客が好きそうな本が並んでいる)
旭岳温泉郷と、旭岳ビジターセンター
さて、宿でくつろぐのは後回しにして、旭岳の登山口に行こう。
明日の朝のシミュレーションと、旭岳ビジターセンターでの情報収集。
片道、約15分程度のお散歩。
外に出ると、明日の登山は大丈夫だろうかと心配になる天気。
あの雲の中に、旭岳が隠れているのだろうか。
街灯がポツポツと建っていて、きっと夜になったらキレイ。
旭岳温泉は、小さな温泉街。
土産物屋が軒を連ねる…といった普通の温泉街ではなく、登山客の基地としての役割が大きいんだろうな。
レストランも売店もなく、あるのは宿ばかり。
立派なホテルもある。
渋い感じの、隠れ家風の宿(山荘)もある。
先に、古いビジターセンターの前を通りかかる。
今は使われていない廃墟。
こっちが、現在の「旭岳ビジターセンター」。
中に入ると、訪問客は私ひとりだった。
現在の登山道の様子がマッピングされている。
やはり残雪があるのかー。
熊さんの足跡マークが怖い。。
これは旭岳のマップだけれど、大雪山の広域マップもある。
それを見ると、通行禁止ヵ所なんかがあるのも伺える。
明日は、ここビジターセンターの近くにある登山道から入って旭岳に登頂し、そこからぐるっと裾合平を回ってロープウェイの終点駅(姿見駅)まで戻る予定。
そして、遥か奥の方には十勝岳。
テントを担いで、約1週間の大雪山大縦走。
私には無理かなー。無理だろうなー。
1日の終わりには町があって宿泊ができる「24日間のヒマラヤトレッキング」より、ポーターが荷物を運んでくれてコックが料理を作ってくれる「5泊6日のキリマンジャロ登山」より、衣食住の全てを自分で行う大雪山の縦走の方が、圧倒的に難易度が高い様に思う。
大雪山には、こんなに可愛らしい動物たちがいるらしい。
会いたいな~♡
会えるといな~♡
こっちは会いたくないな~♡
旭岳ビジターセンターにはVRで登山体験できるものがあり、装置を頭に付けると360度を見渡しながら登山道を疑似体験できる。
これでイメージトレーニング。
早く行きたいな!
山男が集うドミトリーの夜
宿に戻り、天然温泉に癒されたあとは、昼に旭川駅で購入した駅弁を食べる。
そして、癒しの共有スペースで、今日の日の為に用意した本を読む。
『山女日記』著・湊かなえ
湊かなえさん好きなのよねー。
『山女日記』は、それぞれ事情をかかえた女性たちが山に登るオムニバス物語。
山の麓の山荘で、登山の前日に読むにはもってこいじゃないか。
何人かの女性の人生を覗き終わった頃、まだまだ先を読み進めたい葛藤を抑えて、私は部屋に戻る事にした。
時刻は8時。
ここは山の宿。
山の朝は早いから、夜も早いに違いない。
遅くに部屋に戻ってゴソゴソと就寝準備を始めたら、きっと迷惑だろう。
むしろ、もう皆さん寝静まっているかもしれない。
かく言う私も、明日は3時に起床予定なのだ。
…という私の予想は、大いに外れた。
部屋に戻ると、3名の男性が盛り上がっていた。
歯を磨いてさっさと寝よう…と思いコソコソと荷物を漁っていると、「話に入りませんか」とお誘いを受ける。
正直、明日の為にもう寝たいなーと思いつつ、ドミトリーを選んだ手前、無下にも出来ず。
ここでコミュ障の私は自己紹介に失敗し、以後「小者」と見なされ口を挟む権利なく聞き役に回る事になる。
「今までどんな山に登りましたか?」
ヒマラヤとかキリマンジャロとかですかねー。
…なんて、相手が日本の山を中心に登っている方なら言い難い。
日本の山なら、富士山とか、あとは関東の日帰り登山(高尾山や丹沢山地あたり)を年に何回か。
…とかもね、、相手が道民なら、関東の話をするのも如何なものか。
「北海道の山は、最近登り始めたばかりで、大雪山も今回の旭岳が初めてです。普段は札幌近郊の低山に登っています」
相手のバックグラウンドが分からない場合、私は海外の話や東京の話はしたくないのだ。
人によっては、自慢と受け取って不快感を表すから。
(そういえば、去年の紅葉時期に「赤岳(大雪山)」に登ったのを忘れていた。。)
「へぇ~、何で登山を始めたんですか?」
年に2~3回程度の登山を始めたのは10年程前で、以来登っているのは富士山やらヒマラヤやらキリマンジャロやら…旅行も兼ねたミーハー登山か、関東の低山ばかり。
ここで自慢げに披露できる経歴でもないし、始めた理由も特にない。
「元々は旅行が趣味で…行けなくなったので山に目を向ける様になりました」
嘘じゃない。
コロナが原因で登山の頻度が増えたのも事実だし、設備の整わない北海道に来たことで、技術力の向上に目を向ける様になったのも事実。
…けれど真意でもない。
あれだな。
「バックパッカー!?凄いね、英語喋れるの!?」
って聞かれて、「いや、全然ですよ」と答えたら、「英語全く喋れないのに旅ができるって凄いね」ってなった時みたいな。
いや、「全然喋れない」と言ったのは、いま恐らくイメージされたであろう「不自由なくペラペラと話せるレベル」ではないよという意味で、全くの「ゼロ」という事でもないのよ、と。
最低限、旅を問題なく進められる程度のコミュニケーションは取れてますよ、と。
そんなモドカシサ。
以後、私は小者と見なされ、いや実際に超小者なのだけれど、とにかく「会話には入れてもらえないけれどその場にいて相槌を打たなければならない」という苦痛な時間を過ごす事になる。
完全に自業自得なのだ。
彼等は全員関東の人間で、その内の1人は「南アルプス全山縦走した」という(それが凄いのか凄くないのか分からないけれど、多分凄い)ベテランの方々だった。
頃合いを見て、私は輪を抜けて寝支度を整え、明日早いのだと告げてベッドに潜る。
彼等は、ずっと話続けていた。
皆さん、朝は早くないの!?
ドミトリーの場合、「コミュニケーションは共有スペースで取る」というイメージがあったんだけどな。
日中はともかく、特に夜は。
ベッドは寝る為に戻る場所で、普段は共有スペースにいる人ばかりだったんだけどなー。
私の泊まった数少ない宿の話だけど。
世界は広く、私の知見はまだまだ狭いらしい。
そして、次回は女性専用ドミトリーに泊ろうと、密かに誓ったのである。
昔はドミトリイ形式の宿はなかったような。
若いときにこういうのがあったらなあ、と羨ましく思います。
それにしても、寝床の部屋で夜くっちゃべっている、というのは、日本人のマナーが出遅れている、ということですかね。
土日さま
そうなんですかー!
宿泊のスタイルも、だんだん多様化するんですね。
私も、バックパッカーをやらなければ一生知ることのない宿泊形態でした。
部屋で話すのは、やはりマナー違反なんでしょうかね。。
消灯時間が決まっていない場合、個人個人の感覚に任せる事になってしまうので難しいなと感じました。
私の感覚では、登山客の宿で23時近くは深夜に相当しますが。
ドミトリーで夜に長時間話してる場面は自分はあまり記憶にないですね。(日中とか、夜でも2,3分程度であればありますけど。)ただそもそも自分は日本国内でのドミトリー経験は自体がほとんどないので、日本の相場がわかってないですけど。
NKさま
やはり珍しいですよね!
海外と日本では違うのかもしれないし、旅行者と登山者でも違うのかもしれないし、今回たまたまかもしれません。
日本でも色々泊ってみて、暗黙の空気を感じていければと思います。
ちなみに自分が泊まった海外のドミは、部屋数が多いところが中心からかもですけど、性別指定がない代わりに、値段が8人<6人<4人みたいに小部屋のほうが少し高い設定で、フロントのほうで同性同士になるように割り当ててるケースが多かった気がします。
NKさま
そいういう配慮をしてくれる場合もあるんですね。
私は母数が少ないのであまり経験はないですが…。
考えてみれば、ドミトリーはアフリカ大陸でしか経験がないので、私のイメージにはかなりの偏りがあります。
今、ふと気づきました。苦笑