富士山
古くから信仰の山として修行の場とされていた。
最古の歌集や、浮世絵などでも描かれる芸術の源泉。
そんな「景観」「信仰」「芸術」に特別な価値を持つ富士山が世界にも評価され、2013年6月、世界遺産に登録された。
だから、山でありながら「自然遺産」ではなく「文化遺産」。
標高でも日本一を誇る富士山。
「日本一の山に登りたい!」と思う人は少なくないと思う。
そんな外見美しい富士の山、中身は過酷な山だった。
一年前の夏、初めて富士山に挑戦した。
年明けの1月から山小屋を予約し、以来情報収集を怠らず、トレーニングもしていた。
だけど、そんな私を富士山は受け入れてくれなかった。
結果は惨敗。
原因は「高山病」。
高山病…別名高度障害といい、標高の高いところで発症する症状。
一度発症すると治療法はない。
標高を下げれば、今までの苦しさが嘘だったかの様にケロッと回復する。
だけどそのままの標高に留まったり、無理に標高を上げたりすると、最悪の場合は死に至る。
高山病は、「100%防ぐ方法」はないけど、発症する可能性を低くする対策はできる。
高山病を発症しやすい要因
まずは、高山病を発症しやすい要因から考察。
*タバコ
→私は非喫煙者だから心配ない。
*前日や当日の飲酒
→これも問題ない。
*寝不足
→これは反省
*一気に高度を上げる
→対策はしたけど足りなかったみたい
*酸素不足
→呼吸法が甘かった。そしてトラブルにより呼吸が乱れた。
詳細は後述(惨敗記にて)
*気圧
→梅雨明け前で、低気圧だった。
*高山病を心配しすぎること
→当てはまりすぎ。
*体調
→良好
*体質
→こればっかりは防ぎようがない。
高山病については事前に情報収集をして対策したのに。
何故だろう。
高山病の反省と対策
この年の反省を活かして、「今年は絶対にリベンジを果たす!」と意気込んで再挑戦。
反省1:寝不足
寝不足はダメだと知っていたのに。
去年の日程は7月の海の日の三連休。
渋滞を避ける為に、早起きをして出発することになったから寝不足。
今年は三連休は避けよう。
反省2:低気圧
低気圧だと、通常より高山病を発症しやすい。
片頭痛持ちの人が、雨の日に頭が痛くなるのと同じようなもの。
梅雨明け宣言前だったから、完全に低気圧。
うん、やっぱり今年は海の日の三連休は避けよう。
反省3:焦ってしまった
同行者の一人が体力に自信がなく、10分毎に小休憩をとるのでコースタイムを大幅にオーバーしてしまった。
焦った私は、呼吸が荒くなってしまっていたと思う。
反省4:まさかの遭難
詳細は後述(惨敗記にて)。
この反省をふまえ、今年は日程を8月上旬に改めた。
そして、去年以上にゆっくり深呼吸をしながら登る。
酸素をたっぷり体に行きわたらせるイメージで。
富士山惨敗記(挑戦直後の日記より)
7合目(標高2950m)辺りから急に体が重くなって、一歩一歩を前に出すのが億劫で、意識が朦朧としてきた。
お尻を引っぱたかれる状態で、なんとか登っていた。
そしたら、先に行っていた同行者が標識を見過ごして、間違って登山道を外れた。
慌てて追いかけてみんな仲良く遭難。
夕方から夜になるのって、こんなに早いんだって思った。
真っ暗で、道も見えなくて、行きたい方向には雪が積もってるし。
(暗いのになぜか雪だけは、はっきり見える)
明るいうちに着く予定だったから、ヘッドライトは無し(無謀)。
道も砂が多くてふかふかで、(下山は楽だけど)登りはキツイ。
気温も低いし、雪山で遭難した気分。
遠くに見える山小屋の光だけを道しるべに、みんなで頑張った。
あの光が消えたら終わりだねって、焦って登った。
日もすっかり暮れた午後8時頃、ようやく到着。
本7合目(標高3200m)のゴール。
意識がもうろうとしている中、3口ほど無理やりカレーを突っ込まれた。
自力では食事も取れなかった。
夜、一つの布団に2人で寝る。皆で雑魚寝。
ちょっと動いただけでも心臓がバクバクするから動けない。
(寝返りを打つだけでも、いちいち苦しい)
吐き気に耐えられずに外に出たけど、吐けない。
吐きたいのに、胃に何もないから吐けない。
寝たら呼吸が浅くなって苦しいから、共有スペースでじっとしてた。
じっと考えて、これは高山病だと気付いた。
深く呼吸して、貴重な酸素を取り入れたら、少し良くなった。
明け方、皆を起こしてご来光待ち。
生憎の曇りで見れなかった。(残念)
朝ごはんを食べて、かなり葛藤した結果、下山を選択。
高山病は、一度発症したら高度を下げるしか治す方法はない。
もう頂上が見えているのに、行けなかった。
行きたいのに、体は元気なのに、酸素が足りなくて体が動かなくて行けなかった。
下界に戻ったら、すっかり元気になった。
そう、体力は問題なかった。
ただただ酸素が足りなかった。